目次

  1. 「黒染め」は縁の下の力持ち
  2. 後継ぎではなく従業員として
  3. ステンレス黒染めへの挑戦
  4. 黒染めのテーブルウェアがヒット
  5. キャンプ用品にも進出
  6. 「サンクスカード」で関係づくり
  7. 自由にできた経営のかじ取り

 テーエムは、機械部品や工具などに「黒染め」と呼ばれる金属加工を施す作業を主力にしています。黒染めとは鉄をアルカリ溶液に浸して表面に酸化被膜をつくり、黒色を深く浸透させる技術です。ペンキなどの塗装と異なり、傷がついても黒色ははがれ落ちず、色を付けても品物の寸法は変わりません。

黒染めと塗装の違いを説明したイメージ図(テーエム提供)

 さらに「パーカライジング」と呼ばれる金属の処理も行っています。こちらも鉄を溶液に浸しますが、灰黒色になり塗装の密着性を高める特徴があります。

 工場で使用される機械部品やレンチ(ボルトやナットを回す工具)などには必須で、縁の下の力持ちの技術になっています。

 現在、テーエムの従業員数は7人。約200社との取引があり、年商は5500万円です。

パーカライジングをする前後の比較(テーエム提供)

 金属加工の産地である三条市は家族経営の町工場が点在し、分業制が主流です。テーエムも下請けの表面処理会社として60年以上続けてきました。

 渡辺さんは家業に特別感を抱かず、継ぐ意思は全くなかったといいます。高校を出て音楽の専門学校に通い、上京してピザ屋やクリーニング店の配達アルバイトを経験したものの、夢中になれるものが見つかりません。「この先どうする?」という父親からの言葉で、地元三条へ戻りました。

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