目次

  1. 祖母が亡くなり家業へ
  2. 課題を解決するデジタル施策
  3. 震災で売り上げが10分の1に
  4. 前掛けで生まれたつながり
  5. 作業環境の改善とブランディング
  6. サイクリングキャップが評判に
  7. 世代を超えて使われるものを

 1887年創業の永勘染工場は、はんてんや前掛け、のれん、神社ののぼりなどをオーダーメイドで生産しています。はけに染料をつけて生地に引いて染め込む「引染」という技法を用いているのが特徴です。全国の神社や地域の祭りに関わる団体、飲食店、旅館などから年間約3千件の注文を受けています。

永勘染工場の「引染」の技法(永勘染工場提供)

 永野さんが子どものころは自宅に工場があり、染め物や家業は生活の一部でした。「職人たちの作業をいつも見ていました。祖父母からは遠回しにいつか継ぐんだぞと言われていましたね」

 ただ、先代の父からは継ぐように言われたことはなく、大学卒業後は別の企業への就職を決めていました。

永勘染工場の製作現場

 ところが祖母が亡くなり状況が一変します。「当時は父母と祖父母の4人で回していたので、人手が足りなくなってしまいました。いずれ家業に戻るのかなということは頭の中にありましたが、戻るなら早い方がいい。何とかしなければという思いでした」

 2002年、永野さんは就職先の内定を断って23歳で家業に入ります。引退していた職人を呼び戻し5人体制で仕事を進めました。

永勘染工場で作った法被(永勘染工場提供)

 入社後、永野さんは染料の調色や染め物の水洗いなど、職人技を覚えながら、取引先に覚えてもらえるよう父の配達や営業にも同行しました。

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