目次

  1. 会社は社員のためにある?
  2. 社員と経営理念をつくるべきか?
  3. 経営理念は複数あってもいい?
  4. 経営理念は変えてはならない?

 経営理念は、社会のために自分たちがどのような貢献をするか対外的に示し、経営者が何をやりたいかを明確にしたものです。それゆえ、経営理念には外部の人から「この会社と関わりたい」と思ってもらえる社会性が必要と言えるでしょう。

 「社員のために会社を運営する」といった趣旨の経営理念を掲げている会社がよくあります。しかし、会社は社員ではなく社会のために存在するはずです。仮に、社会への貢献と社員の利益がトレードオフになる経営判断が必要になったとき、社員の利益を優先したらどうなるでしょうか。市場から相手にされなくなり、会社の存続そのものが難しくなっていきます。

 どんなに高品質でも、黒電話を欲しがる現代人はほとんどいませんよね。内向きの経営理念の会社だと、社会のニーズを考えようとせず、外部環境の変化に対応するのが遅くなります。「自分たちの能力や設備でできる範囲内で、こだわりを持って仕事をする」という考えに陥ってしまいがちになるのです。外向きの経営理念を定める会社であれば、時代や環境によって変わっていく社会のニーズにいち早く気づき、変化していけるわけです。

和田垣幸生さんの寄稿をもとに編集部作成

 ならば、社員の声を聞き入れて、あるいは社員と一緒に経営理念をつくろうと考える経営者がいるかもしれません。しかし、経営理念とは基本的にトップである社長が、その組織をどこに持っていきたいかという観点からつくるものです。

 「この会社はこれを成し遂げていく」、「こういう世の中にしていくために貢献していく」という強い思いが経営者にないからこそ社員と一緒に考えようという考えになるのであり、その発想が出た時点でアウトです。

 人は自分で決めたものは自分で変更できると思ってしまう生き物です。経営理念の策定に携わった社員も、「自分が決めたんだ」という意識を抱くようになることでしょう。そういう状態だと、例えば、次のような問題が起きてしまいます。

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