目次

  1. M&Aは増加傾向 2022年は過去最多
  2. M&Aの満足度、「人柄・価値観」が影響
  3. PMIとは
  4. M&Aの目的が明確だと満足度向上

 2023年版中小企業白書によると、M&Aの件数は増加傾向にあり、公表されている数字だけですが、2022年は過去最多の4304件に上りました。

M&A件数の推移

 それでは、M&Aの満足度はどんな要素に影響を受けるのでしょうか。

満足度別に見たM&A相手先企業への確認事項

 中小企業白書によると、M&Aの満足度が「期待以上となった」企業は、「相手先経営者や従業員の人柄・価値観」をより重視する傾向にありました。

M&Aを実施する際の障壁

 逆に、買い手としてM&Aに関心がある企業を対象に「M&Aの障壁」について尋ねたところ、「相手先従業員等からの理解が得られるか不安がある」と回答した割合が最も高く、50%を超えていました。

 さきほどの結果をあわせて考えると、M&A成立から「相手先経営者や従業員の人柄・価値観」を確認しておくことが、不安の解消につながる可能性が考えられます。

 また「判断材料としての情報が不足している」、「期待する効果が得られるかよくわからない」、「相手先(売り手)企業が見つからない」と回答した割合がそれぞれ30%を超えていました。

 PMIとは、Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略称で、M&Aによって引き継いだ事業の継続・成長に向けた統合やすり合わせなどの取り組みのことを指します。

PMI検討開始時期別に見たM&Aの満足度

 調査では、PMIを「基本合意締結前」に検討した企業は、「基本合意締結後~クロージング完了後」に検討した企業や「検討していない」企業と比較して、M&Aの満足度が「期待以上となった」割合が高い傾向にありました。

 中小企業白書は「今回の調査だけで一概にはいえないものの、M&Aで期待した成果を得る上で、早期の段階からM&A成立後を見据えて、PMIの準備を行うことが重要だと示唆される」と説明しています。

M&AにおけるPMIの位置づけと実施手順
M&AにおけるPMIの位置づけと実施手順(デザイン:吉田咲雪)
M&Aの目的・戦略の明確化状況別に見たM&Aの満足度

 買い手としてM&Aを実施した企業について、M&Aの目的・戦略の明確化状況別に、満足度を比較しました。すると、M&Aの目的・戦略を「自社と相手先の双方で明確にしていた」企業は、M&Aの満足度が「期待以上」となっている割合が最も高くなりました。

 「自社と相手先の双方とも明確にしていなかった」企業と比較すると、30ポイント近く差が出ています。

PMIを実施する際の課題

 買い手としてM&Aを実施した企業を対象に、PMIを実施する際の課題についても尋ねました。

 経営統合時の課題として、「自社従業員と相手先従業員の一体感の醸成」が50.3%と最も高く、次いで「相手先従業員のモチベーション向上」が47.2%となっている。経営統合の際、相手先企業の従業員に関する課題を抱える中小企業が多いようです。

 中小企業白書は「M&Aで期待以上の満足度を実感している企業ほど、相手先企業への確認事項として 相手先経営者や従業員の人柄・価値観を重視していることを踏まえると、M&A成立前の段階から相手先従業員の人柄や価値観を確認しておき、対策を講じておくことが必要ではないか」と指摘しています。