AIカメラとは?主な種類とビジネスでの活用方法について解説
ChatGPTなどの登場でAIへの注目が集まっていますが、AIはビジネスで使える場面が少なく、生産性の向上に寄与しないと考える人も多いでしょう。一方で、すでに多くの場面で活用されているAIがあります。それがAIカメラです。この記事で具体的な活用方法と注意点を解説します。
ChatGPTなどの登場でAIへの注目が集まっていますが、AIはビジネスで使える場面が少なく、生産性の向上に寄与しないと考える人も多いでしょう。一方で、すでに多くの場面で活用されているAIがあります。それがAIカメラです。この記事で具体的な活用方法と注意点を解説します。
目次
AIカメラとは、人間の顔認識などのAI機能を備えたカメラのことです。なかには、人の動きに応じて追尾する機能を備えたものもあります。防犯のみならず、業務効率化や品質改善などとあらゆる業界が幅広い目的で用いているのが特徴です。
価格帯は1台18,900円程度のものから、屋外監視用の5万円程度のものまで種類によって幅広く設定されています。
AIカメラの種類には「AIエッジカメラ」「LAN型」「クラウド型」の3種類があり、それぞれ特徴が異なります。各種類について詳しく紹介しましょう。
AIエッジカメラとは、AI機能をハードそのものに実装したカメラです。例えば通話機能を備えたAIエッジカメラがあると、会社の受付担当を置かなくても、訪問客の顔を認識して壁越しに総務部と会話・接客・誘導などが可能になります。
また、無人のカウンセリングルームに入ったクライアントに対しても、オンラインでコンタクトが取れます。
LAN型AIカメラは、AIカメラと画像解析の仕組みなどを持つサーバーがWi-Fiで接続されている形式です。画像解析用のサーバーは、一般的には社内に設置されています。
この応用例として、野菜のサイズを見分ける判定システムがあります。野菜の写真をAIカメラでとらえてサーバーに送り、その大きさを画像から判定します。この判定システムは、例えば1日に数100kgもの野菜を検品し、大・中・小サイズに分類しなければならない農家の人が利用しています。
AIカメラで撮影した画像を、Wi-Fiなどでクラウドサービスに送信します。クラウドサービスにも多様な種類があり、Tensole Flow(Google)やAWS(Amazon)などがあります。
クラウド型AIカメラの特徴として、python(パイソン)というプログラム言語を使っている点が挙げられます。さまざまな指定を設定できるため、クラウドサービスを利用して高度な画像解析が可能です。
従来のカメラは単に静止画もしくは動画を撮影するだけであり、画像解析機能は持ちませんでした。対してAIカメラは、動画のなかから静止画を切り出したり、AIカメラを介して顔認証や音声会話をしたりできる製品もあります。
AIカメラ | 通常カメラ | |
---|---|---|
データの前処理、加工 | 不要 | モノクロ化、画素数軽減 |
顔などの即時自動認識 | 可能 | 不可(ピント機能はあり) |
音声の相互通信 | 可能 | 不可 |
可視化機能 | 動線分析など可能 | なし |
また、従来のカメラで撮影したデータを画像解析する場合には、色彩をモノクロにしたあとに画素数を落としてAIに分析させる必要がありました。AIカメラのなかには、このような面倒な処置を省略できるものもあります。
AIカメラは日常生活のさまざまな場面で活用されており、たとえば顔認証やバーコードの検知に使用されています。どのように活用できるか、それぞれ解説しましょう。
AIカメラの顔検知・顔認証の仕組みを説明します。AIにおいて顔検知は、すでに人の顔として定義しておいた学習済みデータをもとに、入店客の顔を人の顔として認知する機能です。これに対して顔認証は、人の顔を見つけるだけでなく、特定の本人の顔であることを確認できます。
顔検知の主な例が、コロナ禍のときにセミナー会場の入り口に設置されていた体温感知装置の画像です。この装置は人の顔を見つけると、認証した顔ごとに□マークを付けて、顔を認証して画像上に表示します。
顔認証の例としては「店舗などの万引き犯の入店告知」で後述しているような万引き犯を見つけるカメラなどが挙げられます。
皆さんもすでにお使いかと思いますが、バーコードをスマホで読み取るアプリにもAIが実装されています。例えば、QRコードを読み取るときに、コードが斜めになって読み取りに時間がかかった経験のある人もいるでしょう。AIカメラでは、正面からのQRコードだけでなく斜めになったQRコードでも正しく読み取ってくれます。
AIカメラはビジネスでもさまざまな場面で活用されています。ここでは、筆者が経験した事例とともに具体的な活用方法を紹介します。
AIカメラが活用されるケースとして、製造現場の不良検出が挙げられます。例えば、製品の割れ・欠け・変色・焼け・ヒビ・穴・表面異常などを正確に感知します。
製造する製品や品質基準は、製造現場によって異なります。そのため、AIカメラに読み取らせる前に、不良品のパターンごとの機械学習が必要です。各不良品のサンプル写真をホルダーごとに入れてpython(プログラミング言語の一種)で読み取り、不良種別ごとにラベル付けして機械学習データを作っておく必要があります。
「顔認証や顔検知に使用する」の見出しでも説明したとおり、AIは人間の顔の特徴を目の周辺で見分けます。左目の大きさ・右目の大きさ・目の間隔の広さが見分ける際の基準です。この部分は、目出し帽をかぶっても隠せません。
活用の例として、万引き犯と思われる人の顔の特徴を機械学習させておき、入店したタイミングで店長のスマホにブザーが鳴る仕組みを作れば、万引き犯の行動を監視・けん制できます。顔認証の結果は下写真のとおり、年齢が多少異なっても認証可能です。筆者が開発した顔認証のプログラムでは、31歳差でも見分けられました。
AIカメラは、マーケティングの分析にも応用可能です。例えば、入店したお客さまが、店頭前に置いていたサイン看板を見て入店したとします。この際に、AIカメラを使って記録および分析できる例が以下のとおりです。
これらを分析することで、年齢や性別といった基本情報に加え、入店後の行動も詳しく調べられます。どのようなデザインのサイン看板が集客に効果的なのかも把握できるでしょう。設定したペルソナ(想定顧客)との整合性もチェックできるため、マーケティングに活用できます。
著者は仕事で山梨県に行くことが多く、ワイナリーの経営相談を受けるケースがあります。ワイナリー併設のぶどう畑では、いつもバラが植えられています。その理由はぶどうに対する害虫とバラの害虫の種類が同じであり、対策がしやすいためです。
害虫はまずバラに害をもたらし、そのままぶどうに広がります。ぶどう畑は一般的に面積が大きく、すべてを監視するのは簡単ではありません。加えてぶどう畑は傾斜地につくることから監視が難しくなる特徴もあります。
そこでまず、比較的AIカメラを活用しやすいバラ園を監視・機械学習します。ぶどう畑に害虫が広がる前にバラ園に集まった害虫の対策をすることで、結果的にぶどうへの被害を事前に食い止められます。
AIカメラは、スポーツ分野にも積極的に活用されているツールです。上述したように、AIは個人の顔を認識できます。仮にサッカーのように選手が11人ずついたとしても、顔のみで違いを見分けられます。
例えば、AチームのMF(ミッドフィルダー)の選手がどのようにフィールド上を動いているのか、動線を分析します。その動きの良し悪しやほかの選手のサポートの動きを分析することで、効果的なチームの編成や戦略の組み立てが可能です。
AIカメラを自社に取り入れる際に注意しなければならないポイントがあります。ここでは、特に押さえておきたい点を七つ紹介します。
AIカメラへの電源の確保と、漏電への対策が必要です。野外に放置する場合は、ソーラーパネルなどの設置も必要になるケースがあります。乾電池や小型バッテリーだと1カ月程度持つといわれています。
AIカメラは数秒おきに撮影やデータ転送をおこないます。確実に作動させておくためにも、電源を二重に確保しておく方が賢明です。
AIカメラとしてRaspberry Piを使うと、自らの発熱で動作しなくなることがあります。せっかく機器を用意したにもかかわらず、熱で動作が妨げられたら意味がありません。
機器の発熱を防止するには、ファンが必要となるケースもあります。特に屋外などに設置する場合、日陰を作ったり、熱を逃がしたりするなど温度上昇対策を考えておきましょう。
屋外に設置する際には、盗難や破損対策を入念に講じておくことが大切です。窃盗犯は防犯カメラを壊したり、防犯カメラ自体を盗んだりすることも考えられます。また、獣害監視系のカメラが熊に壊されるケースもあります。
そのため、AIカメラはなるべく窃盗犯や猛獣から見えにくい位置に設置することが大切です。カメラの存在に気付かれにくい場所で撮影しつつも、しっかりと行動が映るように工夫してください。
採取したデータをサーバーやクラウドに送信するため、Wi-Fiに接続できる環境は必須です。山間地や地下、ビルの建て込んだ空間に設置する場合、新たなインターネット回線の設置が必要になります。その際には、あらかじめ設備投資にかかるコストを準備しなければなりません。
コストは、回線の種類によっても細かく変わります。AIカメラ導入の予算を立てるときは、専門家におおよそのコストを聞いておくとよいでしょう。
クラウド型の場合、クラウドにデータ転送しようとして失敗するケースがあります。この原因は、クラウドが利用機器を危険と判断してすぐに通信を遮断するためです。利用機器とクラウドとの相性について、あらかじめ確認しておくことが重要です。
特にAIカメラとして利用する機器のOSがLinuxなどである場合、クラウドが警戒して通信を遮断する場合があります。これは、ハッカーの利用する端末にLinuxが多いことを機械学習していることが要因として考えられます。そのため、利用するクラウドのセキュリティアカウントを登録しておくとよいでしょう。
製造業においてAIカメラを取り入れる際には、品質精度の確保に注意しなければなりません。AIには誤差率があります。通常のAIの予測や判定は、0.5%程度のプラスマイナスの誤差を持ちます。
以前、筆者は不動産業で落札価格予測をしたことがありますが、このケースも上下0.5%の誤差がありました。ほかの業界であれば、0.5%程度の誤差に収まれば満足してもらえます。しかし、製造業では100万分の1の精度を要求されることがあります。
AIの誤差率が製造業の品質精度を満たさないケースも少なくありません。製造業に導入する際は、QC活動(品質管理や業務改善のための活動)の一環として利用を開始し、その結果を全社大会などで発表して周知を図る取り組みも大切です。
AIカメラを取り入れるときは、個人情報が漏洩しないように注意しましょう。AIカメラが盗まれたり、AIで採取した画像が従業員やクラウドなどから漏洩したりすると個人情報保護の観点での問題が発生します。
画像をどの程度の期間にわたって保持するのか、あらかじめ社内でルールをしっかりと共有しなければなりません。従業員のセキュリティ教育およびデータ廃棄の取り決めが重要な課題です。
AI系のコンサルティングをしていると「AIは何をしてくれるんですか」というクライアントの質問が多くあります。筆者は「AIは万能ではない。問題意識が重要です」と回答しています。
つまり、クライアント自身が「このようなことが知りたい」あるいは「できたらいい」という問題意識を持つ必要があります。そのうえで、問題解決のためにAIの種別やAIカメラを選択することが重要だと考えています。
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