目次

  1. 103万円の壁とは 所得税と家族手当が影響 国民民主党が解消訴え
    1. 103万円を超えたら所得税がかかる 交通費は含まない
    2. 家族手当(配偶者手当)の制限 ただし廃止する企業も
  2. 103万円と106万円・130万円の壁との違い

 103万円の壁には、2つの意味合いがあります。超えた分に対して所得税がかかる「税金の壁」という側面と、扶養者の勤める企業から支給される「家族手当」のボーダーラインとなっているという側面があります。

 2024年10月に投開票のあった第50回衆議院議員総選挙(衆院選2024)で、国民民主党が争点の一つとして取り上げ、その後、自公両党との経済対策の協議の場でも「103万円の壁の解消」を重要要求項目として提示したため、注目が集まっています。

 解消に向けてどのように動き出しているのか、また現状はどうなっているのかについて詳しく紹介します。

  一つは、年収が103万円を超えると、超えた額に対して所得税がかかる「税金の壁」としての側面です。前提として、原則として、103万円のなかに交通費や通勤手当は含みません。

 また、超えた分に対する課税なので「130万円の壁」など社会保険が関係する「年収の壁」と比べると、収入に大きな影響が出るわけではありません。

 扶養される人の税金は、扶養する人の税金にも影響するのですが、配偶者控除は範囲が広がっています。それまでは、扶養者が38万円の配偶者控除を受けることができる扶養を受ける人の年収の分岐点は103万円でしたが、2018年から150万円となっています。

 しかし、厚労省の2021年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査で、就業調整をしているパートタイム・有期雇用労働者の就業調整をした理由(複数回答)を尋ねると、配偶者がいる人に限ると「130万円の壁」(50.8%)に次いで、多い理由が「自分の所得税の非課税限度額(103万円)を超えると税金を払わなければならないから」が46.3%に上り、心理的なハードルになっている様子がわかります。

 配偶者控除等申告書の書き方(2023年版)は、国税庁の公式サイトを参考にしてください。

 さらに、103万円の壁が意識されやすいのは、扶養している人が勤めている企業によっては家族手当(配偶者手当)に制限をかけるボーダーラインになっている点です。

 人事院が発表している「2022年職種別民間給与実態調査」によると、配偶者に家族手当を支給する制度がある企業は55.1%あり、このうち、配偶者の収入制限が「103万円」となっている企業は46.7%に上り最多。「130万円(34.3%)」や「150万円(7.5%)」などを上回っています。

 これに対し、厚労省は2024年春の賃金見直しに向けた労使の話し合いの中で配偶者手当の見直しも議論されるよう、以下の対応を取ることを明らかにしています。

  1. 中小企業でも配偶者手当の見直しが進むよう、見直、見直しの手順をフローチャートで示す等わかりやすい資料を作成・公表する。
  2. 配偶者手当を支給している企業が減少の傾向にあり、配偶者手当を廃止又は縮小し、基本給や子どもへの手当を増額してる企業が増ええているといったことを各地のセミナーで説明するとともに、中小企業団体等を通じて周知する。

 こうした流れもあり、最近では、配偶者手当を廃止し、その代わりに子ども手当を拡充する企業も増えてきています。

 就業調整の要因として、103万円の壁のほかにも「106万円の壁」「130万円の壁」があります。

 これらは「社会保険料の壁」です。扶養から外れて社会保険に加入する必要が出るため、結果的に手取りが減ってしまいます。厚労省はその代わりに年金・医療保険が充実すると説明していますが、十分に認知されているとは言えません。

 こうした状況に対し、政府は「壁」を超えても、給与収入の増加に応じて手取り収入が増加するよう、労働者1人あたり最大50万円の助成金などの対策を発表しています。

年収の壁・支援強化パッケージ(厚労省の公式サイトから https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html)