目次

  1. toC開拓へ、布ぞうりを開発
  2. 30万円の投資が次の一歩に
  3. ブランディングを煮詰める
  4. 父から社長を解任される
  5. 「MERI」を新会社で成長
  6. コロナ禍で生産を国内に回帰
  7. 有名店と強固な関係を築く
  8. 社長復帰で提案型の工場へ
  9. 歴史ある工場を次代へ

 「大学卒業と同時に小高莫大小工業に入社し、9年後の2005年に社長の座を譲り受けました。財務は父任せだったのではじめて知る事実に言葉を失いました。売り上げはものの見事に下降線をたどっていたのです。入社時に2億円あった年商は半減していました」

 原因は産地移転とバブルの崩壊にありました。

 「当社はリブ(伸縮性をもたせた襟や袖に使うニット)という、技術力が求められるパーツをメイン商材としていました。そのころはまだ、中国にもっていったところで製品化に耐えうるレベルではなかった。メートル売りという小回りが利く販売スタイルも(取引先の大手メーカーには)評価されていました(従来の商習慣ではミニマムは一反からだった)。おかげで一気に仕事がなくなったわけではありませんが、結果的に真綿で首を締めるように経営を圧迫していきました」

 BtoBのテコ入れには限界があると考えた小高さんはBtoCに目を向けます。が、ブックカバー、ティッシュケース……とさまざまな試作を重ねるもさっぱり売れません。

 そんなときに一本の電話が入ります。電話の主は青森県八戸市に住む高橋勝さん。09年春のことでした。

 「高橋さんは残反(余った布)をわけてほしいとおっしゃいました。聞けば布ぞうりをつくられているのだが、地元の工場がバタバタと潰れてしまって入手できなくなったそうです。それはお困りだろうとかき集めました。後日、お礼にと送られてきた草履に足を滑り込ませて目を丸くしました。かつて味わったことがないほど心地よい履き心地だったのです」

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