外部人材を効果的に活用するには 経営者が注意すべきポイントを解説
人手不足の深刻化と働き方の多様化が相まって、外部人材の力を借りながら組織を運営していこうとする中小企業経営者が増えてきました。ただ、外部人材を自社の成長につなげるには、業務を円滑に進め、成果物の質を担保するためのルールづくりなどの注意点があります。それを知らないでいると後々トラブルに発展しかねません。識学の上席コンサルタント・渡邉健太さんが、経営者が気を付けるべきポイントを解説します。
人手不足の深刻化と働き方の多様化が相まって、外部人材の力を借りながら組織を運営していこうとする中小企業経営者が増えてきました。ただ、外部人材を自社の成長につなげるには、業務を円滑に進め、成果物の質を担保するためのルールづくりなどの注意点があります。それを知らないでいると後々トラブルに発展しかねません。識学の上席コンサルタント・渡邉健太さんが、経営者が気を付けるべきポイントを解説します。
最初に、外部人材を活用する上での注意点について考えてみます。
一般に、社員であれば会社の経営理念に共感して入社するので、「会社のために頑張る」という共通意識を持ち、上司の指示には従う意識が働く傾向にあります。しかし、外部人材は社員と比べれば、その会社との関係性が希薄になりがちです。最悪の場合、本業が別にあるため、依頼した仕事を適当に済ませようとしたり、期限を守らなかったりするというリスクも否定できません。
「忙しい」という理由で依頼自体を断ってくることや、連絡が取れなくなる恐れ、機密情報を漏らすリスクもあります。不真面目な相手には次の仕事を頼まなければよいだけですが、最初の依頼が取り返しの付かない事態を引き起こす可能性もゼロではないでしょう。
それでも、業務委託先が何か問題を起こしたら、その責任は依頼した会社側が負わねばなりません。顧客に対し「当社の業務委託先のせいでお客さまの個人情報が漏洩してしまいました。我々には一切の落ち度はありません」などとは言えませんよね。
上記のリスクを念頭に置いた上で、外部人材の力を借りる際には契約書や業務におけるルールやマニュアルを忘れずに用意しておきましょう。
例えば、外部人材との間で、次のようないさかいを経験した経営者はいないでしょうか。
↓ここから続き
発注側:「ご提出いただいた成果物のクオリティーは当社の求めるレベルに達していないため、このままでは受け取れません」
委託先:「修正するのであれば、追加で料金を頂きます」
これは、修正対応の回数をあらかじめ決めておくだけで、気をもまずに済みます。また、トラブルを防ぐだけではなく、成果物の質が担保されるルールの設定も有効です。
一例を挙げると、チェックリストを作成し、全ての項目を確認してから提出してもらうだけでも成果物に明確な差が出てくるはずです。
同時に、発注者側も求める成果物の内容や質を言語化し、あらかじめ業務委託先に伝えておかねばなりません。いったん仕上げてもらったものに対して、発注者側が何度も修正指示をすることがないようにしましょう。双方にとって負担が増えてしまいます。
もし、「お金を払って発注しているのだから何をしてもいい」と考えているのであれば、その考えは今すぐ捨ててください。理不尽な要求をしていると、業務委託先から相手にされなくなりますし、下請法違反に問われる恐れもあります。
それから、業務委託先は複数開拓しておくことも重要です。仕事が10あるのなら、3、3、4と分けるイメージです。
例えば、一つの業務委託先でトラブルが起きたとしても、その分の仕事を残る二人に任せられるからです。短期間で業務委託先を見つけ出すのは至難の業なので、あらかじめパイプを複数持っておいて損はないでしょう。
では、外部人材にはどのような業務を任せればよいでしょうか。言い換えれば、業務委託するか内製化するかのラインを、どう判断すべきでしょうか。この問いに正解はありませんが、ここでは考え方の軸をお伝えします。
以下の三つが外部人材に任せる業務の候補になります。
1.は経理や労務が該当します。特に、経理の中でも給与計算はどんな会社であっても大抵は同じなので、アウトソーシングしやすい業務の筆頭と言えるでしょう。
社員がやるべきでないというつもりはありませんが、リソースが限られている中小企業であれば、外部に任せられる仕事は任せ、社員によりクリエーティブな仕事に時間を投じてもらった方が生産的ではないでしょうか。
2.は自社で社員を抱えるより、結果的に費用が安くなる業務です。例えば、土木建築業界では、現場が常に一定のペースで発生するわけではないため、会社は職人を雇用せず、個人事業主として働いている職人に仕事を依頼する場合が多いです。
3.は、自社が主として手がける領域とはあまり関係がない仕事になります。新規事業部を立ち上げて内製化するよりは、業務委託人材の力を借りた方が早く、安価に成果を出せるものです。もちろん、その仕事が継続的に発生する状態になってきたら内製化の検討をするとよいでしょう。
ただし、3.は売り手市場のケースが大半であり、外注費用も高い傾向にあります。業務委託を続けるか時間をかけてでも内製化すべきか、慎重な判断が必要です。
経営者は、社員に対しては評価制度を整えることで、中長期的に成長していく姿と給与が増えていくイメージを抱かせ、会社への帰属意識を醸成できます。できなかったことができるようになり、給与が増える経験を積むことで社員はモチベーションを維持できるのです。
一方、業務委託人材については、会社側が成長させる責任や、モチベーションをコントロールする義務はありません。無理にモチベーションを引き上げようとする努力が無駄に終わることも珍しくないでしょう。
それが分かるエピソードをご紹介します。
エステサロンを経営している私の知人は、エステティシャンたちと業務委託契約を結び、サロンで働いてもらっていました。ある日、女性のエステティシャンから「悩みがあり、辞めようと思っています」と打ち明けられたため、引き留めて頑張ってもらいたいという思いから、5万円もするコース料理をごちそうしたそうです。
食事をしながら日ごろの頑張りをねぎらったところ、そのエステティシャンは、「ありがとうございます」と何度もその経営者にお礼を言いながら涙を流したそうです。しかし、翌日から仕事に来ませんでした。
これは極端な例かもしれませんが、こんなふうにスパッと関係性が切れてしまうこともあるのです。
とはいえ、業務委託人材のスキルが向上し、レベルの高い仕事に挑戦してくれるようになったら会社にとっては心強いはずです。
従ってリスクを承知の上で、外部人材に段階を踏むように難しい仕事を任せていくという方針を採用するのも手です。最終的には正社員になってほしいというアプローチも視野に入ってきます。
外部人材を探すには、求人媒体やクラウドソーシングサイトの活用、リファラルといった方法が考えられるでしょう。
人材不足が叫ばれているなか、自分たちにないリソースを活用することで効率的な組織運営が可能になります。自社の社員と外部人材のシナジーを最大限引き出すために、本記事が参考になれば幸いです。
識学上席コンサルタント
大学を卒業後、金融機関でバックヤード領域を担当。その後、メディアソリューション事業会社に転職し広告営業としてのキャリアを積み、識学に入社。以来、約120社500人のトレーニングに携わる。
(※構成・平沢元嗣)
(続きは会員登録で読めます)
ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。