マスクの一方的な発注取り消しは下請法違反 公取委が王子ネピアに勧告
下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、マスクの発注の一部を一方的に取り消した行為が下請法違反にあたるとして、公正取引委員会は2024年2月15日、紙加工大手の王子ネピア(東京都中央区)に対し、勧告したと発表しました。下請事業者が発注取り消しで被った約2622万円の損失について、王子ネピアは2023年11月に支払ったといいます。
下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、マスクの発注の一部を一方的に取り消した行為が下請法違反にあたるとして、公正取引委員会は2024年2月15日、紙加工大手の王子ネピア(東京都中央区)に対し、勧告したと発表しました。下請事業者が発注取り消しで被った約2622万円の損失について、王子ネピアは2023年11月に支払ったといいます。
王子ネピアの公式サイトによると、王子ネピアとは、王子ホールディングスに所属する企業で、1971年に王子製紙の全額出資により、 家庭紙の総販売会社として王子ティシュ販売を設立し、春日井工場(愛知県)で生産を開始したのが始まりです。
ティシュ、トイレットロール、赤ちゃん用品紙おむつなどを取り扱っています。
公取委によると、王子ネピアは、自社が販売するマスクの製造を委託していた下請事業者に対し、2020年12月ごろ、2021年度分のマスク製造を委託する発注書面を下請け業者と交わしました。
王子ネピアは、発注書面で、月ごとの納品数量については相談の上で決定するとしており、毎月、マスクの品種別の納品数量を決定し、自社が納品を希望する月の約半月前に、翌月までの納品数量を下請事業者に伝えていました。
下請事業者は王子ネピアに対し、発注書面記載の数量にほぼ相当する数量のマスクの納品が可能であることを連絡していました。
しかし、王子ネピアは、下請事業者に対し、2021年度のマスクの合計納品数量が発注書面に書かれた数量の7割程度となり、納品数量を超えて生産したとしても受領する意向はないとして、マスクの発注の一部を取り消しました。
これにより、下請事業者は、すでに手配していた資材費用(仕入代金、倉庫までの運送料、倉庫保管料、廃棄費用)と人件費で合計2622万7735円超の額を負担することになりました。
公取委によると、王子ネピアの行為は、下請代金支払遅延等防止法第4条第2項第4号(不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止)の規定に違反するといいます。
下請法では、下請事業者に責任がないのに、費用を負担せずに、発注の取消しや内容変更、やり直しをさせることにより下請事業者の利益を不当に害する行為を禁止しています。
王子ネピアは、下請事業者に対し、2023年11月22日に、手配していた資材に係る費用と人件費分に相当する額を支払いました。
そのうえで王子ネピアの公式サイトで以下の通りコメントしています。
当社はこれまでも法令遵守に努め、「取引先との誠実、健全な関係の維持」、「独禁法、下請法関連諸法令の遵守」を行動規範として取り組んでまいりましたが、本勧告を真摯に受け止めて、勧告内容について役員および従業員への周知徹底を図るとともに、下請法遵守の社内研修を実施し、コンプライアンスの一層の強化と再発防止に努めてまいります。
王子ネピア公式サイト
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