目次

  1. コンセント制度とは 
  2. コンセント制度の審査の流れ
  3. 改正商標法の概要と注意点
  4. コンセント制度はいつから?
  5. コンセント制度の照会先

 特許庁の公式サイトによると、コンセント制度とは、先行登録商標と同一または類似する商標でも、先行登録商標権者の同意(コンセント)があれば後行の商標の併存登録を認める制度のことです。

 商標法第4条第1項では「先願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものは、商標登録を受けることができない」という規定があります。

 審査官から拒絶理由通知が届いた場合、商標登録を目指すのであれば、これまで次のような対応が必要でした。

  1. 引用商標(拒絶理由に引用された先願に係る他人の登録商標)と抵触する指定商品・役務の削除(手続補正書の提出)
  2. 引用商標と出願商標とが非類似である旨の主張(意見書の提出)
  3. 引用商標権者との譲渡交渉又はアサインバック
  4. 引用商標に対する不使用取消審判等

 1. の対応が難しい場合、2.~4.の対応が必要ですが、いずれも金銭的・時間的コストが掛かります。

 中小企業・スタートアップは、知的財産を活用した新規事業でのブランド選択の幅を広げる必要性や、国際的な制度調和の観点から、より簡便・低廉な選択肢が求めていました。

 米国や台湾、シンガポールなどではすでに「コンセント制度」が導入されているなか、日本国内でも2024年4月からコンセント制度の導入が決まりました。

 コンセント制度の審査は、基本的に次の流れで進むことが想定されています。

  1. 商標登録出願をした結果、特許庁の審査官から他社の類似の商標登録が理由で拒絶理由通知が届く
  2. 出願人は先行登録商標との間で合意し、審査官へ書類を提出する
  3. 審査官が出所混同のおそれを審査し、登録査定または拒絶査定を出す

 改正商標法によれば、先行登録商標権者の承諾を得ており、かつ、先行登録商標と出願商標との間で混同を生ずるおそれがないものは、登録が認められます。仮に同じ日に二つ以上の商標登録出願があった場合にも、コンセント制度の利用が可能となります。

 併存登録された商標は混同防止のため、以下の規定があります。

 一方の権利者の使用により他の権利者の業務上の利益が害されるおそれのあるときは、当該使用について両商標間における混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求できます。

 一方の権利者が不正競争の目的で他の権利者の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる使用をしたときは、何人もその商標登録を取り消すことについて、審判(不正使用取消審判)を請求できます。

 コンセント制度に係る改正商標法の規定は、2024年4月1日から施行され、コンセント制度は、施行日以後にした出願について適用されます(施行日前にした商標登録出願については、施行日以後に審査係属中であっても、コンセント制度は適用されません)。

 なお、設定登録前の出願人と先行登録商標権者の名義を一時的に一致させる「アサインバック」で、改正法施行時点で併存登録されている商標については、施行日から混同防止表示請求及び不正使用取消審判の規定が適用されます。

 国内出願については、意見書等は、原則として「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」で照会できます。J-PlatPat上で提出書類等一部が表示されないようにすることもできますが、原則閲覧請求の対象となりますので注意しておきましょう。

 また、国際商標登録出願はJ-PlatPatで照会ができませんので、Madrid Monitorを利用してください。