目次

  1. 中小企業向けの賃上げ促進税制とは
    1. 賃上げ促進税制で5年間の繰越控除制度
    2. 賃上げ促進税制の措置期間の延長
    3. 賃上げへの要件緩和
  2. そのほかの賃上げ支援策
    1. 「労務費」などの価格転嫁を支援
    2. 中小企業省力化投資補助金の創設
    3. 中堅・中小企業の成長投資補助金の創設
    4. パートナーシップ構築宣言の実効性向上

 中小企業庁の公式サイトによると、中小企業向け「賃上げ促進税制」は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。

 大企業・中堅企業は、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大35%を税額控除でき、中小企業は、全雇用者の給与等支給額の増加額の最大45%を税額控除できるようになります。

 2024年4月1日から2027年3月31日までの間に開始する各事業年度が対象で、首相官邸の公式サイトによると、国会で法案が成立し、2024年4月に施行されました。

 賃上げを促進するため、3つのポイントを紹介しています。

 賃上げ促進税制の対象となりうる企業として、中小企業全体の8割がカバーされるよう、中小企業向けに、当期の税額から控除できなかった分を5年間繰り越せる「繰越控除制度」を準備しています。この制度により、赤字企業でも賃上げ促進税制が活用できるようになります。

繰越控除措置のイメージ
繰越控除措置のイメージ(経済産業省の公式サイトから https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/r6_chinagesokushinzeisei_pamphlet.pdf)

 賃上げ促進税制の措置期間を従来の2年間から、3年間に拡充します。

必須要件(賃上げ要件)と上乗せ要件
必須要件(賃上げ要件)と上乗せ要件(経済産業省の公式サイトから https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/r6_chinagesokushinzeisei_pamphlet.pdf)

 賃上げ要件について、中堅企業向けには、大企業より緩やかな要件を設定します。具体的には、3%賃上げで10%税額控除、4%賃上げで25%税額控除となります。

 また、中小企業・大企業・中堅企業のいずれに対しても、教育訓練費を増加させた場合の上乗せでの税額控除について、適用要件を緩和します。

 さらに、仕事と子育てとの両立支援(くるみん認定)、女性活躍支援(えるぼし認定)に積極的に取り組む企業への新たな上乗せ制度として、税額控除率を5%上乗せする措置を創設します。

 また、これまでは、介護職員処遇改善加算等による賃上げ分は賃上げ促進税制の対象外としていましたが、今回の税制改正で、新たに創設される報酬上の措置も対象に含めるよう、見直しをしています。

 そのほかにも、補助金や労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針などにより賃上げを後押ししようとしています。

 公正取引委員会などによる「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が公表されています。

 政府は価格交渉によって、適正な労務費を反映できるようにし、賃上げにつなげたい考えです。

 指針に定めた「12の行動指針」に沿わないような行為により、公正な競争を阻害するおそれがある場合には、公正取引委員会が独占禁止法と下請代金法にもとづいて対処する方針です。

 また、この指針では、実際の価格交渉の現場で活用できる「フォーマット」も用意しており、首相官邸は「最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率等の公表データを活用してください」と呼び掛けています。

 首相官邸によると、中小企業省力化投資補助金とは、中小企業が、商品を「カタログ」から選ぶように、省力化のための汎用製品を選べば補助を受けられる、簡素で即効性のある補助制度を総額3年5000億円規模で創設し、2024年3~4月から公募開始予定です。

 採択後1年以内に一定の賃上げを実施した場合は補助上限が最大1500万円まで引き上げられます。

 中堅・中小企業大規模成長投資補助金とは、中堅・中小企業が賃上げに向けた事業成長を確保するための工場等の拠点新設・大規模設備投資を支援する補助金で、3年3000億円規模となります。

 設備投資額10億円以上の大規模投資であることに加え、設備投資完了後に、事業に関わる従業員に賃上げを実施することなどが要件となります。2024年3月6日から公募開始となりました。

 「パートナーシップ構築宣言」は、事業者が、サプライチェーン全体の付加価値向上、大企業と中小企業の共存共栄を目指し、「発注者」側の立場から、「代表権のある者の名前」で宣言するものです。

 親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行(下請中小企業振興法に基づく「振興基準」)の遵守を宣言し、ポータルサイトに掲載することで、各企業の取組の「見える化」をする狙いがあります。