自動車メーカーの認証不正、部品メーカーへの影響は? 取引先は全国7万社
杉本崇
(最終更新:)
国内自動車メーカー7社の取引先は、重複を除いて全国に6万9860社に及ぶとの調査を東京商工リサーチが2024年6月、明らかにしました。売上高でみると、10億円未満の中小企業が3万6798社と半数を超え、中小企業がサプライチェーンを支える構図になっています。自動車メーカー5社で、車の量産に必要な「型式指定」を巡る認証不正が明らかになっており、東京商工リサーチは「不正の発覚で一部車種の出荷ができなくなっており、取引先への影響が懸念される」と指摘しています。
「型式指定」の不正問題とは
国交省によると、大量に生産される自動車は、一台ごとに新規検査をするのではなく、サンプル車両と書面での審査を通じて「型式指定」を実施しています。この「型式指定」を受けた車両は、自動車メーカーが完成検査を実施することにより、国の一台ごとの新規検査が省略されています。
しかし、国土交通省は2024年6月3日、トヨタ自動車、マツダ、ヤマハ発動機、本田技研工業(ホンダ)、スズキの自動車メーカー5社で型式指定申請における不正行為があったことを公表しました。基準適合性を確認するまで、不正行為のあった現車種の出荷を停止するよう指示を出しています。
自動車産業のサプライチェーンは、すそ野が広く、自動車部品メーカーだけでなく、商社や物流など全国の様々な企業が集積しています。
自動車産業の取引先は重複を除き全国約7万社
こうしたなか、東京商工リサーチの公式サイトによると、約390万社の企業データベースから、国内自動車メーカー7社の1次(直接)、2次(間接)の取引企業を抽出したところ、国内自動車メーカーと直接、間接に取引のある企業は、重複を含め13万475社に上ることがわかりました。
このうち、各自動車メーカー内の取引企業の重複を排除すると11万4201社、さらに全取引企業を合算後に重複を排除しても6万9860社ありました。
取引先の特徴を様々な切り口から紹介します。
産業別では製造業が最多
取引先を産業別でみると、自動車部品メーカーなど製造業が最多で、全体の29.9%を占めます。次いで、鋼材や機械、部品卸を含む卸売業の19.5%、清掃や機械修理などサービス業他が18.0%、自動車販売店など小売業が12.2%と続きました。
産業 |
構成比 |
製造業 |
29.91% |
卸売業 |
19.57% |
サービス業ほか |
19.03% |
小売業 |
12.24% |
運輸業 |
7.51% |
建設業 |
7.31% |
情報通信業 |
3.78% |
不動産業 |
0.91% |
金融・保険業 |
0.42% |
農林漁鉱業 |
0.32% |
売上高別、1億円未満が15%強
取引先の売上高別では、最多は1億円以上10億円未満が36.8%を占めます。次いで10億円以上100億円未満が27.8%でした。1000億円以上が2.2%と大企業との取引もある一方で、1億円未満が15.8%と小規模事業者の取引も目立ちます。
都道府県別、最多は東京都 取引先は全国へ
都道府県別でみると、東京都が最多で、2位はトヨタ自動車の本社がある愛知県、3位は大阪府、4位は神奈川県、5位に静岡県と続きます。
自動車メーカーやグループの工場や拠点がある都道府県に取引社数が多く、企業城下町を形成している様子がうかがわれるといいます。上位10都道府県は次の通り。
都道府県 |
取引先数 |
東京都 |
13693 |
愛知県 |
8473 |
大阪府 |
6845 |
神奈川県 |
3952 |
静岡県 |
3001 |
埼玉県 |
2325 |
北海道 |
2116 |
広島県 |
1898 |
兵庫県 |
1882 |
福岡県 |
1597 |
経産省、顧客・取引先への適切な対応を指示
「型式指定」の不正問題について、経産省は自動車メーカー5社に対し、情報提供など顧客・取引先への適切な対応や、問題の経緯や今後の対応についての十分な対外説明をするよう指示しています。
このほか、生産出荷停止になっている現行生産車6車種について、国土交通省が基準適合性の試験を6月中に完了させる意向という報道があったことについて、斉藤鉄夫国交相は、6月7日の閣議後会見で「今後は、事実関係の確認状況を踏まえつつ、基準適合性に関する確認試験を順次行っていくこととしており、現時点で、確認試験の終了時期などの見通しをお示しすることは難しい段階です。国土交通省としては、ユーザーの安全・安心を確保する観点から、立入検査による事実関係の確認や確認試験を速やかに行い、確認試験の結果が出た車種から順次、公表していきたいと考えています」と述べるにとどまっています。
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この記事を書いた人
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杉本崇
ツギノジダイ編集長
1980年、大阪府東大阪市生まれ。2004年朝日新聞社に記者として入社。医療や災害、科学技術・AI、環境分野、エネルギーを中心に取材。町工場の工場長を父に持ち、ライフワークとして数々の中小企業も取材を続けてきた。
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