流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法、2025年5月までに改正
改正物流総合効率化法と改正貨物自動車運送事業法が2025年5月15日までに施行されます。2024年問題に対応し、商慣行の見直し、物流の効率化、荷主・消費者の行動変容について、抜本的・総合的に見直すための改正です。国土交通省が説明している3つのポイントと施行スケジュールについて整理しました。
改正物流総合効率化法と改正貨物自動車運送事業法が2025年5月15日までに施行されます。2024年問題に対応し、商慣行の見直し、物流の効率化、荷主・消費者の行動変容について、抜本的・総合的に見直すための改正です。国土交通省が説明している3つのポイントと施行スケジュールについて整理しました。
目次
物流総合効率化法は、流通業務の総合化及び効率化の促進を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とした法律です。
法改正により、法律の名称を「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から「物資の流通の効率化に関する法律」(物資流通効率化法)に変更されます。
貨物自動車運送事業法とは、輸送の安全を確保するとともに、貨物自動車運送事業の健全な発達を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする法律です。
国交省の公式サイトによると、物流業界は、物流の停滞が懸念される「2024年問題」に直面しており、輸送力が不足する可能性があるため、荷主企業、物流事業者(運送・倉庫等)、一般消費者の協力を得て、商慣行の見直し、物流の効率化、荷主・消費者の行動変容に取り組む必要があるといいます。
そのため、法改正により、施行後3年で(2019年度比)荷待ち・荷役時間を年間125時間/人削減させ、積載率向上による輸送能力を16%増加させることを目指します。
また、軽トラック運送業において、死亡・重傷事故件数は最近6年で倍増していることも見直しのきっかけとなりました。
改正法は大きく分けて、以下の3つの対策に分類できます。
それぞれについて紹介します。
流通業務総合効率化法にもとづく荷主・物流事業者に対する規制的措置は、荷主・物流事業者間の商慣⾏を⾒直し、荷待ち・荷役時間の削減や積載率の向上を図ることを目指します。
まずは、すべての事業者が対応する必要があることから紹介します。荷主(発荷主・着荷主)・物流事業者(トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫)に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課し、国がその判断基準を作ります。
取り組むべき措置としては、次のようなことを想定しています。
取り組むべき措置 | 判断基準(取組の例) |
---|---|
荷待ち時間の短縮 | 適切な貨物の受取・引渡⽇時の指⽰、 予約システムの導⼊ |
荷役時間の短縮 | パレット等の利⽤、標準化、 ⼊出庫の効率化に資する資機材の配置、 荷積み・荷卸し施設の改善 |
積載率の向上 | 余裕を持ったリードタイムの設定、 運送先の集約 |
このうち、元請トラック事業者、利⽤運送事業者には、荷主に協⼒する努⼒義務を課し、フランチャイズチェーンの本部にも荷主に準ずる義務を課します。荷主と物流事業者の取り組み状況について、国が判断基準に基づき指導・助言、調査・公表します。
つぎに、荷主と物流事業者のうち、一定規模以上のものを「特定事業者」と指定し、特定事業者が対応すべきことを紹介します。
特定事業者には、中長期計画の作成や定期報告等を義務付けます。中長期計画に基づく取組の実施状況が不十分の場合、勧告・命令を実施します。さらに、特定事業者のうち荷主には物流統括管理者の選任を義務付けます。
貨物自動車運送事業法にもとづくトラック事業者の取引に対する規制的措置は、物流業界の多重下請構造を是正し、運賃を適正化することを目的としています。
具体的には、元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成を義務付けます。
また、荷主・トラック事業者・利用運送事業者に対し、運送契約の締結等に際して、提供する役務(サービス)の内容やその対価(附帯業務料、燃料サーチャージ等を含む。)等について記載した書面による交付等を義務付けます。
そのほか、トラック事業者・利用運送事業者に対し、他の事業者の運送の利用(下請けに出す行為)の適正化について努力義務を課すとともに、一定規模以上の事業者に対し、適正化に関する管理規程の作成、責任者の選任を義務付けます。
増加傾向にある事故防止に向けて、国は軽トラック事業者に対し、必要な法令等の知識を担保するための管理者選任と講習受講、国土交通大臣への事故報告を義務付けます。
国交省による公表対象に、軽トラック事業者の事故報告・安全確保命令に関する情報等を追加します。
改正物流総合効率化法と改正貨物自動車運送事業法は、2024年5月15日に公布されました。施行日は「公布日から1年以内の政令で定める日」とされたため、2025年5月15日までに施行予定です。
具体的なスケジュールは以下の通りです。
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