目次

  1. 風説の流布とは
  2. 風説の流布に対する勧告の流れ
  3. 課徴金納付命令の初勧告となった風説の流布

 証券取引等監視委員会の公式サイトによると、風説の流布とは、有価証券の募集、売買等のため、もしくは相場の変動を図る目的をもって、うわさ、合理的な根拠のない風評等を不特定または多数の者に伝達することで、金融商品取引法第158条で禁止されています。

【金融商品取引法第158条 風説の流布、偽計、暴行又は脅迫の禁止】
何人も、有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくはデリバティブ取引等のため、又は有価証券等・・・の相場の変動を図る目的をもって、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならない。

 過去に刑事告発に至った事例は、証券取引等監視委員会の公式サイトで公表されています。

 金融庁の公式サイトによると、風説の流布など不公正取引規制違反があった場合、金融庁は2005年4月から、行政上の措置として違反者に対して金銭的負担を課す課徴金制度を導入しました。

 課徴金納付命令を出すまでの流れは以下の通りです。

 まず、証券取引等監視委員会が調査を行い、課徴金の対象となる法令違反行為があると認める場合には、内閣総理大臣及び金融庁長官に対し勧告を行います。

 勧告を受け、金融庁長官は審判手続開始決定を行い、審判官が審判手続を経たうえで課徴金納付命令決定案を作成し、金融庁長官に提出します。

 金融庁長官は、決定案に基づき、課徴金納付命令の決定を行います。

 違反行為に対する課徴金額は、風説の流布の場合、違反行為終了時点で自己の計算において生じている売り(買い)ポジションについて、当該ポジションに係る売付け等(買付け等)の価額と当該ポジションを違反行為後1月間の最安値(最高値)で評価した価額との差額などを基準として、定めています。

 証券取引等監視委員会は2024年7月26日、課徴金納付命令の初勧告となった事案を公表しました。

 証券取引等監視委員会の公式サイトによると、課徴金納付命令対象者は、大学発ベンチャー「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ」(HMT)の株式の価格を上昇させたうえで売り抜けて利益を得ようと考えました。

 そこで、2021年7月8日9時45分ごろ、インターネット上の金融情報サイト「Yahoo!ファイナンス」内の電子掲示板に、HMTについて次のように書き込みました。

 「これ私的には今年一番の大スクープ !!!初期の認知症を見つける凄い国際特許を取得してたことが判明!!!(中略)認知症は原因となる病気によっては薬で進行を遅らせたり手術で症状を改善出来る。治療は早ければ早いほど効果が期待できるため早期発見、早めの治療が重用!認知症予備軍を早く発見して早く治療できれば凄い需要がありそうだよね !!!」などと合理的根拠のない情報を投稿し、不特定かつ多数の者が閲覧できる状態に置き、株価を上昇させるなど有価証券の価格に影響を与えたといいます。

 課徴金の額は、209万円といいます。