目次

  1. 食料自給率とは
    1. カロリーベース食料自給率とは
    2. 生産額ベース食料自給率とは
  2. 食料自給率の推移 長期視点で低下傾向
  3. 食料自給率の政府目標、達成見通せず

 食料自給率は、食料自給率は、食料の国内消費に対する国内生産の割合を示したもので、輸入の依存度が高い国にとって関心が高い指標です。農水省の公式サイトによると、国内の食料供給に対する食料の国内生産の割合を示す指標です。

 以下の3つの点から農水省は毎年公表しています。

  1. 国民生活に特に不可欠である
  2. 輸入への依存度が高い
  3. 輸入に関する不確実性が高い

 農水省は食料自給率の計算方法として、人が生きていくために必要なエネルギー量に着目してカロリーに換算する方法「カロリーベース」と、経済的な価値に着目して金額に換算する方法「生産額ベース」の二種類の計算方法によって、食料自給率を計算しています。

 食料自給率をカロリーや金額で計算する方法は、国連食糧農業機関(FAO)の手引きで紹介しています。

 農水省によると、日本以外には、スイス、ノルウェー、韓国、台湾がカロリーベースの食料自給率を公表しており、イギリス、台湾が生産額ベースの食料自給率を公表しています。

 カロリーベースだと、国内の消費人口が小さく、カロリーベースに寄与する穀物、油糧種子等の生産量が多いカナダ、オーストラリア等の国が上位に位置づけられる一方、生産額ベースについては、野菜・果実等の輸出量が多いイタリアがドイツ、イギリスを上回るなど、価格の高い野菜・果実、畜産物の動向がより反映される傾向にあるといいます。

供給カロリーと食料消費額の国別構成(試算)
供給カロリーと食料消費額の国別構成(試算)

 それぞれの計算方法と持つ意味を紹介します。

 カロリーベース食料自給率は、カロリーベース総合食料自給率は、基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目して、国民に供給される熱量(総供給熱量)に対する国内生産の割合を示す指標です。

 カロリーベースでみると、日本の食料供給は、国産(38%)と、米国(19%)、豪州(12%)、カナダ(8%)、ブラジル(7%)からの輸入で供給熱量の大部分(84%)を占めています。

 2023年度のカロリーベース食料自給率は以下の計算式により、前年並みの38%でした。

カロリーベース総合食料自給率(2023年度)=1人1日あたり国産供給熱量(841kcal)/1人1日当たり供給熱量(2203kcal)

 小麦の生産量増加や油脂類の消費量減少がプラス要因となる一方で、てん菜の糖度低下による国産原料の製糖量の減少がマイナス要因となったためだといいます。

食料自給率の基本的考え方
食料自給率の基本的考え方

 生産額ベース食料自給率は、生産額ベース総合食料自給率は、経済的価値に着目して、国民に供給される食料の生産額(食料の国内消費仕向額)に対する国内生産の割合を示す指標です。

 生産額ベースでみると、国産(61%)と、米国(9%)、ブラジル(4%)、中国(4%)、豪州(4%)からの輸入で食料消費額の大部分(81%)を占めています。

 2023年度の生産額ベース食料自給率は61%で、以下の式により前年度の58%から3ポイント上昇しました。

 生産額ベース総合食料自給率(2023年度)=食料の国内生産額(11.1兆円)/食料の国内消費仕向額(18.2兆円)

 輸入された食料の量は前年度と同程度ですが、国際的な穀物価格や生産資材価格の水準が前年度と比較して落ち着き、輸入総額が前年度比で減少したためだといいます。

 過去10年間のカロリーベース食料自給率は、ほぼ横ばいといえますが、1960年代以降の長期トレンドで見ると、食料自給率は米の消費が減少する一方で、畜産物や油脂類の消費が増えるといった食生活の変化により、低下傾向が続いてきました。

食料自給率の長期的推移
食料自給率の長期的推移(画像はいずれも農林水産省の公式サイトから https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/240808.html)

 食料自給率の向上に向け、政府は「食料・農業・農村基本計画」で2030年度までにカロリーベース食料自給率を45%、生産額ベース食料自給率を75%まで引き上げる目標を掲げています。

 たとえば、小麦や大豆は、地域でまとまって生産する「作付けの団地化」や機械の導入、保管施設の整備などに取り組んでいます。

 また、輸入割合の大きい業務用加工野菜や冷凍野菜を国産に転換していくための安定供給に向けた生産・流通体系の構築、輸入小麦に代わる米粉製品の生産・消費の拡大に向けたパンや麺に適した米粉用米の品種開発なども進めています。

 このほかにも、スマート農業が普及し始めていたり、農地の集約化による農業法人の規模拡大など生産性を高めたりする取り組みが広がっています。

 ただし、高齢化による農業生産者の減少と、耕作放棄地の増加という状況は引き続き進行しています。昨今の円安や原材料高で輸入飼料が高騰するなどし、畜産業にも大きな影響が出ています。食料自給率を本当に高められるのかは厳しい見通しとなるでしょう。