最低賃金、よくある間違いの例「契約更新まで大丈夫」「労働者から同意」
2024年度の最低賃金は、全国平均で51円の引き上げとなり、10月1日~11月1日に発効予定です。最低賃金は、企業に雇われるすべての従業員に適用されるため、正社員やパートタイム、契約社員に関係なく一律の基準が求められます。過去最高の引き上げ額となるため、自社の給与が最低賃金を超えているか確認しておきましょう。労働基準監督署が例示している「よくある間違い」や連合のQ&Aをもとに事業者向けに注意点を紹介します。
2024年度の最低賃金は、全国平均で51円の引き上げとなり、10月1日~11月1日に発効予定です。最低賃金は、企業に雇われるすべての従業員に適用されるため、正社員やパートタイム、契約社員に関係なく一律の基準が求められます。過去最高の引き上げ額となるため、自社の給与が最低賃金を超えているか確認しておきましょう。労働基準監督署が例示している「よくある間違い」や連合のQ&Aをもとに事業者向けに注意点を紹介します。
目次
最低賃金とは、最低賃金法にもとづき国が賃金の最低限度を定め、使用者はその最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする基準です。
2024年は各県の地方最低賃金審議会で目安を上回る最低賃金で答申する例が相次いだ結果、27県で中央最低賃金審議会が示した目安の50円を上回り、前年度より51円引き上げ、全国平均は1055円となりました。
各地の労働基準監督署の公式サイトでは、最低賃金引き上げ時のよくある間違いを3つ紹介しています。
「月給で支払っているので、時給で示している最低賃金は関係ないと思っていた」。そんな意見に対し、労基署は「最低賃金は時間額で定められているので、月給の場合は時間額に換算して比較する必要があります」と注意を促しています。
たとえば、北海道の最低賃金は2024年10月1日から1010円となる見通しです。ある労働者の1ヵ月の平均所定労働時間が173時間の場合、最低賃金以上の月給を支払うためには、1010円(時間額)×173(1ヵ月の平均所定労働時間)=約17万47300円以上支払う必要があります。賃金規程ごとの確認式は以下の通りです。
時間給≧最低賃金額(時間額)
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、日給≧最低賃金額(日額)
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。
自社が支払う賃金が最低賃金を超えているかは、厚生労働省の特設サイト「あなたの賃金を比較チェック」を使っても確認できます。
「労働者と時間給950円で約束していたので、最低賃金は関係ないと思っていた」としても、最低賃金額より低い賃金額で約束しても法律で無効とされ、その地域の最低賃金との差額を支払う必要があるので注意が必要です。
「時間給950円、契約期間は毎年1月から12月の1年間で約束していたので、来年1月の契約更新で時間給960円に引き上げればいいと思っていた」としても、最低賃金は各地域の発効日から効力が生まれます。契約期間の途中であっても、その地域の最低賃金以上を支払う必要があります。
最低賃金をめぐっては日本労働組合総連合会(連合)もQ&A方式で注意点を紹介しています。
連合は最低賃金の対象となる賃金について「通常の労働時間に対応する賃金」だと説明しています。具体的には、実際に支払われる賃金から、以下の賃金を省いたものが最低賃金の対象となります。
残業代をはじめとする割増賃金の額は、最低賃金(時間額)に割増率を乗じた額以上である必要があります。
派遣労働者には、派遣元の事業場の所在地にかかわらず、派遣先の最低賃金が適用されます。
試用期間中でも地域別最低賃金は原則として適用されます。なお、特例として減額が認められる場合がありますが、減額が認められるのは、以下の労働者について使用者が都道府県労働局長の許可を得た場合のみです。
2024年10月、社会保険の適用対象が拡大されます。2024年10月以降は、企業の規模要件が常時100人超から常時50人超に変わります。
これまで社会保険の適用外となる働き方をしていたパートタイマーも、改正により新たな加入対象となり得るため、企業と従業員双方に大きな影響が予想されます。
年収の壁を意識すると、月あたりの労働できる時間が大幅に減る場合があります。社会保険の適用拡大による106万円の壁への対応には国の支援制度もありますので、スタッフにどんな働き方をしてもらうのが良いのか話し合いながら進めてください。
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