目次

  1. 初めて食べた納豆に衝撃
  2. 「納豆菌と会話できるように」
  3. 朝礼を始めて情報共有
  4. 従業員の意識統一で最優秀賞に
  5. 「待つ」営業で大口契約が増加
  6. 親族外承継も見据えた人材育成
  7. 売り上げは右肩上がりに
  8. 後継ぎ不在のメーカーをM&A

 菅谷食品は1947年、関本さんの妻の祖父が千葉県東圧町で創業し、その後、東京都内に移って規模を拡大。1986年、現在の青梅市の工場に移転しました。納豆は自社ブランドとOEM(相手先ブランドによる製造)を合わせて約80種にのぼり、首都圏や東北、九州のスーパーなどに年間約700万食の納豆を出荷しています。従業員は40人で、年商は3億5千万円です。

 商品の多くは2パック180円~190円台です。一般的な納豆より値が張るのには理由があります。関本さんは「最大の特徴は『大江戸せいろ蒸し』という大豆の蒸し方です。下から蒸気を入れて大豆を包み込むことで、納豆菌が必要とする栄養素が残るため、菌が喜んで繁殖しておいしくなるんです」。

菅谷食品の納豆づくり(菅谷食品提供)

 原料の大豆の大半は北海道産で、一部は有機栽培を使用。からしやたれも無添加です。さらに稲わらや経木に入れた納豆は「石室炭火造り」という昔ながらの製法で発酵させています。外側は大谷石が詰まれ、内側は総ヒノキ造りの石室に入れ、炭火を用いて遠赤外線で大豆を中から温めることで、納豆菌の働きを助けています。

 兵庫県出身の関本さんは、大学入学まで納豆が食べられませんでした。ところが、当時交際中だった妻の実家で初めて菅谷食品の納豆を味わい、衝撃を受けます。「なぜ今まで食べなかったのかと思うほどおいしくて、納豆が食べられるようになりました」

栄養価の高さを売りにした納豆(菅谷食品提供)
栄養価の高さを売りにした納豆(菅谷食品提供)

 関本さんは大学卒業後、岡山県の乳業メーカーで工場勤務と品質管理の仕事に従事しました。妻と結婚し、入社から4年ほど経ったころ、2代目だった妻の叔父が若くして亡くなり、現社長の義父・髙橋武男さん(82)が3代目になりました。

 「義父の子どもは当時誰も家業に入っておらず、そこで終わる可能性があったんです。私は2代目にかわいがってもらい、就活の時も『納豆屋をやってみないか』と言われていました。当時は絶対やらないと思っていましたが、2代目の声がよみがえり、無くしたくないと思ったんです」

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