アナテック・ヤナコは1892年創業の板ガラスやランプなどのガラス類の販売を手掛ける柳本商店から始まります。柳本製作所への社名変更を経て、環境計測部門が1985年にアナテック・ヤナコとして独立。
桺本さんは法政大学卒業後、企業向けソフトウェアなどを開発しているメーカーに入社し、エンジニアとして開発業務に携わっていました。その後、2社の起業を経て、京都大学MBAに在学中に母が経営する「アナテック・ヤナコ」に入社しました。
入社当時、タイムレコーダーは紙。受発注はFAXのやり取りで机の上は大量の紙が積みあがっていました。決裁書類も紙だったため、役職者全員が確認してハンコを押すまでに、2週間以上かかったこともありました。「これは早急に取り組まねば」と覚悟を決めました。
サービス名 |
用途 |
Microsoft 365 |
Officeアプリ |
Lark |
社内用統合ツール |
RecoRu |
勤怠管理 |
Zoom |
Web会議(社外) |
バクラク経費精算 |
経費精算 |
バクラク請求書受取 |
請求書管理 |
バクラク請求書発行 |
請求書発行 |
Notion |
採用サイト |
STUDIO |
サイト作成 |
ミツカリ |
適性検査 |
XServer |
メールサーバー |
Bカート |
Web受注システム |
Shachihata Cloud |
電子印鑑 |
QUALiTY SUITE |
Windows Defender 全体管理 |
かつて生産管理に使っていたホワイトボードは廃止。いまでは、導入ツールの一つ、Lark上のデータが様々な業務に紐づいており、誰がいつどこに何を出荷すればよいかが可視化され、データに基づいた経営判断ができるようになりました。
Larkを使った生産管理の様子(ダミーデータを使用)
このほか、カレンダー上の予定を確認すれば会議の議事録も確認できます。社外の販売会社とのやりとりもチャットで済ませます。
当初は毎月のように新しいツールを導入していたといいます。社員はついてこられたのでしょうか。その問いに返ってきた答えは「勢いです」。
社員にツール導入を相談すると、起こる確率が1%程度の懸念点で導入をためらう声も出てしまうため、あえて事前相談せずに導入を決めたといいます。ただ、業務全体を見渡しながらほかの業務に差しさわりが出ないかどうかや、最初から完璧を求めるのではなく、運用しながら100%に近づけようと考えたといいます。
とはいえ、本業に影響してしまうと困るので、最初は勤怠管理や労務管理など周辺領域から始め、徐々に慣れてもらうことを心掛けました。
逆に途中でやめたツールもあります。
メモやタスク管理、データベース作成など様々な機能を一つにまとめたNotionは「概念が新しすぎてみんなが使いこなせませんでした」。だからこそ、ツールを選ぶ時はこれまでの業務や普段の生活で使っているLINEやエクセル、Webの入力フォームなどに似たデザインのものを選ぶようにしています。
「もしかすると、裏ではいろいろ言われていたかもしれませんが」と笑いつつも、社員たちからは表立って大きな反対はなかったといいます。詳しく聞いていくと、桺本さんならでは工夫がありました。
業務フローチャートで会社全体の業務を把握
新しいツールを導入して業務に影響しないかどうかを事前に判断するには、業務に精通している必要があります。しかし、途中入社で現場経験のない桺本さんには簡単なことではありません。
だからこそ、入社当時、いろんな部門を回っては業務の流れを聞いて、すべて業務フローチャートに落としていきました。
業務フローチャート
「社内には、特定の仕事に詳しい熟練者はいても、会社の業務全体を把握できているのは私しかいませんでした。そのため、業務フローチャートをつくることで対等に話すことができるようになりました。さらに、問題が起きたときにどこを改善すればよいか、みんなと同じ共通の土台で話せるようにもなりました」
この業務フローチャートは、ツールを導入するときにも、ある部門の課題を解決できてもほかの部門にマイナスが生じないかを確認するのにも役立ちました。
困りごとが出たら「熱いうちに打て」
もう一つは社内で困りごとが出たら「熱いうちに打て」です。他部門への依頼をデジタル化したのも、試薬作成依頼や集荷依頼などで「お願いされていたのに忘れていた」といった問題が起きているときでした。
そんなとき、桺本さんは、Lark上で申請依頼できるアプリを1、2日で作り、会社全体に導入しました。フォームに依頼内容を登録すると、担当者のチャットに通知が飛ぶようにし、見落とし防止にも注意を払っています。
試薬作成や集荷の依頼ができるフォーム
「困りごとが起きているときこそ、みんなが変えたいと仕組みを思っているときなので課題が出た瞬間にすぐ準備すると理解も得やすいのです」
ただし、すぐに作れるようにするためには、日ごろからの情報収集が欠かせません。
「新しいツールが出たら、とりあえずすべての機能を触り、プロパティを見て、どんな問題ならこのツールが役立つだろう、と考えるようにしています」
スムーズに導入できたのは後継ぎだからこそ
スムーズにITツールを導入できた要因として「もし、私が情報システム部門の一社員だったら、ツール一つを導入するのにも、すべての部署に説明に行き、承認をもらう必要があったでしょう。でも後継ぎであるからこそ、動きやすいし、組織を変えやすいという強みがありました」と話す桺本さん。
最近ではこれまでの実績もあり、新しいツールを導入しようとしても「まあ、大丈夫でしょう」という信頼感を得られるようになってきたといいます。
「トップに立つ人間が必ずしもITツールに精通していなくてもよいのですが、強力なリーダーシップは必要だというのが私の意見です」
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