目次

  1. 食品値上げ、2025年春に再び
  2. それでも生産者・製造者のコスト反映道半ば
  3. 円滑な価格転嫁に向けた適正取引推進・消費者理解醸成対策事業の概要
    1. 合理的な価格形成に向けたコスト等に関する調査
    2. 消費者等の理解醸成のための広報
    3. コスト指標の活用等に関する実証
食品分野別の値上げ品目数
食品分野別の値上げ品目数(帝国データバンクのプレスリリースから)

 帝国データバンクによると、主要な食品メーカー195社の家庭用を中心とした2025年の飲食料品値上げは3933品目に上るといいます。

 前年同時期に公表した24年の値上げ品目見通し(1596品目)を大幅に上回ります。2025年1月には1年半ぶりとなるパン製品の一斉値上げに伴い、単月として3カ月ぶりに1千品目超の値上げが見込まれています。

値上げ要因の推移
値上げ要因の推移(帝国データバンクのプレスリリースから)

 2025年の値上げ要因では、24年に続き「原材料高」(94.6%)などモノ由来の要因が多数を占める一方で、サービス面のコスト上昇を要因とした値上げ傾向が顕著にみられました。

 なかでも、トラックドライバーの時間外労働規制などが要因となった輸送コストの上昇分を価格へ転嫁する「物流費」由来の値上げは89.9%を占めています。

 原材料価格の高騰や急速な円安の進行など、農業・食品産業の事業環境が急激に変化するなか、食品の値上げはコスト上昇分を十分に反映するには至っていない商品があり、生産者の一部からは「生産コストの高騰が継続する中で、今後2~3年で離農者(廃業・倒産)の増加も見込まれるほど苦しい状況」といった声が上がっています。

 その背景には、天候等による影響で価格変動が大きいことや、過去10年間、食料消費支出はほとんど変化しておらず、消費者の食料への支出は増えていないため、値上げが続くと、輸入品へ代替する可能性があるといった懸念があります。

 農水省はこれまでに適正な価格形成に関する協議会を立ち上げ、生産から消費までの関係者が集まり、適正な価格形成の在り方を協議してきました。

 そのなかで、⽣産者・製造業者側からは「個社のコストデータは企業秘密。収集・提供⽅法について検討が必要」「品⽬によっては、売り⼿側の取引上の⽴場が弱い」といった意見が出ました。

 一方の流通・⼩売・消費者側からは「資材費上昇等の事情は理解。コストを指標化・⾒える化することが必要」「コストの指標化・⾒える化は、危機的状況の消費者理解につながる可能性」「所得が増加しないと、消費⾏動の変容は困難」といった意見も出ました。

 食品の価格転嫁に対する消費者の理解を醸成する取り組みはこれまでも実施されおり、全国でセミナーなども開催されてきました。

 農水省は政府の2024年度補正予算にも「円滑な価格転嫁に向けた適正取引推進・消費者理解醸成対策事業」として6億円を盛り込みました。以下の3つの事業で展開する構想です。

  1. 合理的な価格形成に向けたコスト等に関する調査
  2. 消費者等の理解醸成のための広報
  3. コスト指標の活用等に関する実証

 まずはコスト調査です。

 食料の持続的な供給に要する合理的な費用を考慮した価格形成の仕組みの構築に向け、コスト指標の作成や消費者の理解醸成を促進するため、農産物や食品を対象に、食料システムの各段階のコスト構造や取引価格の調査等を実施します。

 コストの上昇分の価格転嫁の状況、価格交渉や契約における課題等について、食料システムの関係者を対象に、取引実態調査等を実施します。

 そのうえで、円滑な価格転嫁に向けて、食料の生産・製造・流通に関わる実態や、コスト構造及びその背景事情等について情報発信し、消費者や事業者の理解醸成を図ります。

 情報発信だけでなく、コスト指標の活用に関する実証コスト指標を活用した取引を定着させるため、コスト指標の作成やその活用方法等の検討・実証を支援します。

 また、食品事業者等による消費者の理解増進に関する実証コスト上昇の背景等への消費者の理解促進のために、食品事業者等が行う情報発信による購買行動の変化の検証等についても支援する予定です。