能登半島地震の被災企業も再起をかけて出展 “よい仕事おこし”フェア
全国の信用金庫のネットワークで、優れた地域産品を一堂に集めた大型展示会「“よい仕事おこし”フェア」が2024年12月3、4日、東京ビッグサイトで開かれ、530の企業・団体が出展しました。能登半島地震の被災企業が伝統産品などを並べたほか、ヒット商品を送り出している中小企業の後継ぎの姿も目立ちました。
全国の信用金庫のネットワークで、優れた地域産品を一堂に集めた大型展示会「“よい仕事おこし”フェア」が2024年12月3、4日、東京ビッグサイトで開かれ、530の企業・団体が出展しました。能登半島地震の被災企業が伝統産品などを並べたほか、ヒット商品を送り出している中小企業の後継ぎの姿も目立ちました。
「“よい仕事おこし”フェア」は2012年から始まり、ほぼ毎年開かれています。地域に密着する各地の信用金庫が後押しする、中小企業の商材が並ぶのが特徴です。前回の2023年は3万3700人が来場し、商談件数は5207件にのぼりました。
今回は「北陸応援エリア」を設け、2024年1月の能登半島地震で被害を受けた企業が出展しました。
嘉永年間に創業した新城(あらき、石川県七尾市)は、輪島塗、九谷焼、山中塗といった伝統工芸品を販売し、広島東洋カープや伊藤園など、有名企業とのコラボ商品も展開しています。ブースではつややかな漆器やカラフルな絵皿などが、来場者の目を引いていました。
能登半島地震で、市内にある「あらき」の店舗は解体を余儀なくされました。現在は仮店舗で営業中です。陶器や漆器などの商品も震災で9割が損壊しました。女将の新城礼子さんは「言葉にならず泣くに泣けない状況でした」と振り返ります。
それでも、倉庫に残っていた商品などを検品してマルシェに出展するなど、復興への歩みを進めています。今までは地元中心の商売でしたが、今回は再起をかけて展示会に初出展しました。
新城さんは「私たちの後ろには職人さんたちがいます。伝統工芸品を外に出すのが私たちの仕事です。今回出展したことで、能登の状況を伝えることができました。今までと同じ形に戻すのではなく、石川県の工芸品を日本全国や世界に広めていきたいです」と前を向いています。
会場はものづくり系と食品系に分かれ、老舗企業がユニークな商品を所狭しと並べていました。
創立73年の印刷会社サキカワ(大阪市天王寺区)は従業員数15人の中小企業です。今回、ずらりと並べた商品はともに印刷技術を応用した、組み立て式化粧箱「PATAX」(パタックス)と、紙製のスマホスタンド「SMATRAY」(スマトレイ)になります。
パタックスは、ワンタッチで折りたたんだり組み立てたりできる化粧箱です。かさばらないため、輸送や作業の効率が上がり、コレクションもしやすくなります。
4代目社長の久保貴啓さんは「デザインに優れた紙袋は残してもらえるように、捨てられない箱を作ることで、社会に貢献したいと開発しました」と話します。
パタックスは、大手スポーツメーカー・ミズノから贈答用のグラブを入れる箱として採用されました。開封後は箱を折りたたんで、ディスプレー用のスタンドとしても活用できます。
スマホスタンドのスマトレイも、鉄道会社やスポーツチームなどのグッズとして採用されています。
サキカワが東京の展示会に本格出展したのは、今回が初めてです。久保さんは「自分たちだけができる製品を作ることで、社員のやりがいにもつながっています。どのようなお客さんなら使っていただけるのか、探したい一心で出展しています。今回は10件以上の問い合わせがありました」と話しました。
1953年創業の石田缶詰(静岡県焼津市)は主力の缶詰ではなく、カレーの具だけを入れたレトルト商品をずらりと並べていました。
缶詰のOEMが主力事業ですが、BtoCの自社商品として2012年に「ママカレーの具」を発売しました。カレールーは好みのものを使い、食材だけをレトルトにすることで、各家庭などで味の工夫をしながら調理時間を短縮するという発想から生まれた商品です。
3代目社長の石田雅則さんは「当時、様々な部署から社員を集めて開発委員会を作りました。地域色はあえて出さず、全国で売れる商品にすることを目指しました」と話します。
狙い通り「ママカレーの具」は全国のスーパーなどに並ぶように。さらにコロナ禍で発売した「キャンプカレーの具」は、キャンプ需要の高まりを追い風にアウトドアショップなどで広がっています。最近では、味を2倍濃縮にしてレトルトパウチの大きさを半減した「キャンプソロ鍋の素」も発売しました。
社員数は45人。ブースには石田さんの長男で4代目の光太郎さんの姿もありました。石田さんは「面白いアイデアが生まれる会社というのを、若い人たちにも伝えたいです」と意欲を見せました。
食品系のブースで、建設会社の名前が目を引きました。1945年に創業した金澤建設(東京都小金井市)が運営する「菓子工房ビルドルセ」です。
市内の洋菓子店が27年の歴史に幕を閉じることになり、その味を惜しんだ金澤建設3代目の金澤貴史さんが2015年に経営を引き継ぎました。
ブースでは、承継前からの看板商品「カスタードパフ」や、承継後に開発したスイーツを販売。異業種承継のストーリーもパネルで詳しく説明しています。
金澤さんは「建設業なのにお菓子屋という幅の広さが、採用にもプラスに働きました。社員の女性比率は40%を超え、異業種承継の効果が出ています」と話しました。
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