当事者意識とは?意識が低い・ない人の特徴と原因、高める方法を詳しく

当事者意識とは、ある事柄に対して自分ごととして捉える意識のことを指します。当事者意識が高い人は、仕事に主体的に取り組み、組織のパフォーマンスを向上させることができます。この記事では、その意味や重要性、当事者意識の高め方まで、組織コンサルティングが専門の中小企業診断士が説明します。
当事者意識とは、ある事柄に対して自分ごととして捉える意識のことを指します。当事者意識が高い人は、仕事に主体的に取り組み、組織のパフォーマンスを向上させることができます。この記事では、その意味や重要性、当事者意識の高め方まで、組織コンサルティングが専門の中小企業診断士が説明します。
目次
当事者意識とは、ある事柄に対して自分が関係していると認識し、「自分が解決する」「自分が行動を起こす」というように、主体的に取り組みを起こそうとする意識のことを指します。英語だと「Sense of ownership」「Commitment」と表され「その問題や仕事の所有者は自分」と訳されます。
当事者意識が強い人には、主体性や責任感があるのが特徴です。主体性とは「自分の行動や意志を自らの意識と責任に基づいて決定して行動できる状態」、責任感とは「自分自身の行動や選択に対して責任を果たすという意識」を指します。
当事者意識は「自分が関わっているという意識」を表すのに対し、主体性は「自分の意志で行動しようとする態度」を表すという違いがあります。
例えば、前者は「強い当事者意識をもってプロジェクトに取り組む」「仕事に対して当事者意識を持つ」といった場合に用いるのに対し、後者は「組織で起きている問題に対して解決策を考え、行動する主体性を持っている」「部下の主体性を大事にしたい」といった場合に用います。
当事者意識と責任感は、共に事象や業務に関連する言葉ですが、その捉え方は異なります。
具体的には、当事者意識が「『自分がある事象に対して影響を与えている』と深く自覚していること」を指すのに対し、責任感は「自分の求められていることや関わっていることに対して、それを完遂しようとする意識」を指します。
責任感は役割を担った時点で発生しやすいですが、当事者意識がないと取り組みが中途半端になったり、危機感が希薄になったりします。
つまり「責任感はあるけれども当事者意識がない」という状態が発生しかねないというわけです。
当事者意識がない・低い人は、以下のような共通した特徴があります。
当事者意識がない・低い人の特徴 |
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・常に受け身で他人任せ ・言い訳や責任回避が多い ・自分の都合を優先する ・問題や物事に対して興味関心がない |
当事者意識がない・低い人は、組織の課題や問題点を「自分ごと」として捉えていないため、あらかじめ割り振られた業務以外には触れようとしない傾向があります。
「自分がやらなくても、誰かがやってくれるだろう」という考え方で、上司に指示されたことや日々の決まったタスクなど、必要最低限のことだけこなそうとします。
当事者意識がない・低い人は、業務上で行き詰ったりトラブルが発生したりしたとき、自分の言動に原因がないかを内省せずに他責にしがちです。
例えば、仕事でミスをして注意されると「業務が難し過ぎるせい」「あの人がそうしろと言った」と自らの責任から逃れるための言い訳をすることが多くなります。
当事者意識がない・低い人には、「自己愛が強く、自分を第一に考えている」という特徴も見られます。そのような人は、自分が傷ついたり嫌な思いをしたりするのを極端に恐れ、自分の都合を最優先に考えることが多くなります。
そして、自分にとって不都合な出来事が発生すると、自分の身を守ることを最優先させる傾向があります。また、他人にも関心がないため、自分さえよければ良いと考えている人が多いのも特徴です。
当事者意識がない・低い人は、自分の置かれている状況や組織の直面している課題に対して興味関心がなく他人事と捉えているため、「誰かが解決してくれる」あるいは「誰かがやってくれるだろう」と考えることが多くなります。
さらに、「言われてやっているだけ」「自分には関係ない」といった意識で業務に取り組んでいるため、責任感も欠如している傾向があります。
なぜ、当事者意識がなかったり、低くなってしまったりするのでしょうか。考えられる原因について説明します。
当事者意識がない・低くなってしまう理由 |
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・目的や目標がわかりにくい ・評価制度が不透明・不公平 ・業務量が多い ・心理的安全性の欠如 ・変化を嫌う風潮 |
組織において、自分の役割がわかりにくく、目標が明確に定まらないと当事者意識は低下します。
具体的には「自分の業務や存在が組織にどのように貢献しているか」を理解できなければ、業務に対して「やらされている感」が生まれ、主体的な行動にはつながりません。
その結果、課題や周囲の状況に対しても関心が薄くなり、積極的な行動をしなくなります。
評価制度が不透明で不公平であることも、当事者意識を低下させる要因です。
評価基準が曖昧だと、積極的な行動に対するメリットを見いだせず、失敗した場合の責任を負うことを避ける従業員が増えていきます。
その結果、「余計なことはしない」という風潮が蔓延し、組織の停滞を招きます。
過大な業務量も、当事者意識を低下させる要因となります。
物理的・精神的な余裕がないため自分の担当業務以外に関心が持てなくなり、結果として積極的な提案や行動を避けて現状の担当業務のみをこなす「受け身」の姿勢に終始しがちになります。
また、業務改善に向けた検証や調整が負担増加につながると感じて提案に二の足を踏むなど、当事者意識が低くなってしまうこともあります。
組織において、従業員が自己評価や職場で安心して自分を安心して表現できる「心理的安全性」が低いと、当事者意識が低下していきます。
例えば、業務で何か改善点を発見したとしても「意見を言ったとしても聞き入れてもらえないだろう」「こんなことを話しても取り合ってもらえないだろう」などと考えてしまうようになります。
保守的で変化を嫌う風潮も、当事者意識を低下させる要因となります。変化をストレスと捉えて新たな挑戦をしない風土が形成された組織では、業務を改善したり、新たな取り組みを始めようとしたりする従業員が現れなくなっていきます。
場合によっては、積極的な行動をする従業員を排除しようとする誤った仲間意識が生まれる懸念もあります。
ビジネスシーンで「当事者意識が欠如している」と言われるように、当事者意識を持たないことにマイナスイメージを持つ人は少なくありません。
ここでは、ビジネスにおいて、従業員の当事者意識を高めることで組織がどのようなメリットを得られるのか解説します。
当事者意識の高い従業員は、積極的に業務に取り組み、問題解決にも意欲的に取り組むため、組織全体の生産性向上や業績向上につながります。また、業務における潜在的なリスクを早期に発見し、適切な対応策を講じることができるため、組織のリスクマネジメントの円滑な推進に役立ちます。
当事者意識が浸透した組織は、風通しが良く、活発な意見交換が行われます。そして、そのような組織では創造的なアイデアが生まれやすく、差別化による競合優位性の獲得につながります。
当事者意識を高めることは、離職率の低下にも効果的です。当事者意識を持つ従業員が増えることで、組織内でのコミュニケーションが活発化します。
また、当事者意識は従業員の主体性を育み、自己成長を促進します。その結果、従業員の仕事への満足度やモチベーションが向上し、離職率の低下につながります。
組織において、従業員の当事者意識を高めるためには、どのような方法が望ましいのでしょうか。具体的な方法を3つご紹介します。
当事者意識を高める方法 |
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・適切な目標設定 ・コミュニケーションの促進 ・明確な評価基準に基づく適切な評価 |
従業員一人ひとりの業務目標達成は、最終的に組織の業績目標達成につながります。そのためには、自分自身の目標が組織全体にどのような影響を及ぼすのか、どのように組織の業績目標達成に貢献するのかを意識できるように目標を設定することがポイントとなります。
適切な目標設定により、自分の仕事を通じて組織の発展に貢献しようという意識が高まり、組織の動向を自分ごととして捉えるようになります。
当事者意識を高めるためには、組織と従業員の良好な信頼関係の構築も重要な要素となります。コミュニケーション促進の方法は、経営層やマネジメント層、または上司や同僚との対話など様々ですが、心理的安全性の担保がポイントとなります。
気兼ねなく自分の意見を表明でき、その意見を訊いてもらえる体験を積み重ねることで、組織と従業員の一体感も向上し、当事者意識が育まれます。
明確な評価基準は、従業員が当事者意識をもって積極的に動くための指標です。評価基準を明確にすることで、達成に向けて意欲が向上し、主体的に動けることを推進するでしょう。
そして、従業員の成果や行動を適切に評価し、その努力を賞賛する文化が定着すれば、従業員のモチベーションが向上します。さらに、従業員の失敗や改善点の適切なフィードバックも含めてPDCAサイクルを回せるようになり、業績向上への貢献につながっていきます。
当事者意識が高まることで、一人ひとりが組織目標を自分ごととして捉え、積極的に行動し、課題解決のスピードや意思決定の質が向上します。また、当事者意識が高い組織では、社員が主体的に学び成長し続ける文化が醸成され、変化の多いビジネス環境に柔軟かつ迅速に適応できます。
さらに、メンバー同士が互いの責任を共有しながら協力することで、チーム全体の結束力が強まり、より大きな成果を生み出します。是非、組織の力を最大限に引き出し、当事者意識を育む風土を作り上げていきましょう。
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