目次

  1. 父が倒れて突然の承継
  2. どん底からのスタートで奮い立つ
  3. 「あと10年チャンスがある」
  4. バー開業へ集めた説得材料
  5. ふらりと立ち寄れるスタンドへ
  6. 相乗効果を広げて未来へ

 国道25号に面する箱林運営のガソリンスタンド「伊賀一之宮サービスステーション」は、夜になると装いが一変します。スタンド内の缶詰ダイニング「HAKOBA」に明かりがともり、河豚のアヒージョや牛タンシチューなどの珍しい缶詰を、ビールやオリジナルカクテルと楽しむ客で埋まります。

 ガラス張りの店内は開放的で、夜は照明が映えてガソリンスタンドとは思えない雰囲気です。箱林さんがDIYで仕上げたテーブルやいすの脚にはホイールやドラム缶を使い、遊び心のある空間が広がっています。

ガソリンスタンドの待合室を利用した缶詰ダイニング「HAKOBA」 
ガソリンスタンドの待合室を利用した缶詰ダイニング「HAKOBA」 

 スタンドの歴史をたどると、昭和40年代、箱林さんの祖父が「箱林商店」として開業し、父が1978年に株式会社化しました。現在の事業はENEOSの販売店(ガソリンスタンド)と「HAKOBA」です。従業員4人とアルバイト数人で運営し、年間売り上げは約2億円です。

 箱林さんは3人きょうだいの真ん中で、「兄は東京の大学に進み、妹は海外留学で家を出て、何も考えてなかった僕だけが残りました。次男だからと完全に油断していました」と笑います。

 料理の道へ進みたかったといいますが、両親の許しが出ず、大阪の大学に片道2時間かけて電車で通いました。学生時代から家業でアルバイトし、卒業後はそのまま正社員に。「継ぐつもりはありませんでしたが、就職活動がうまくいかず、そのまま就職しました。何も考えてなかったんですよ。接客は好きで楽しかったです」

ガソリンスタンドは交通量の多い国道沿いにあります
ガソリンスタンドは交通量の多い国道沿いにあります

 27歳で妻の比佐さんと結婚。その後も「経営には関わらず、何も知ろうとせず」に他の社員と同じように働いていたといいます。しかし、事業承継は突然でした。

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