輸入申告項目・税関事務管理人制度、税関が見直し 2025年10月にも

越境電子商取引(EC)が拡大し、国際的な貨物輸送が増えるなか、不正薬物や知的財産侵害物品などの密輸、FS利用貨物を利用した脱税といった問題が起きています。そこで、税関は2023年10月からと、2025年10月から輸入申告項目および税関事務管理人制度について見直します。制度見直しの具体的な内容、その背景、そして輸入者や事業者にとってどのような影響があるのかを、わかりやすく解説します。
越境電子商取引(EC)が拡大し、国際的な貨物輸送が増えるなか、不正薬物や知的財産侵害物品などの密輸、FS利用貨物を利用した脱税といった問題が起きています。そこで、税関は2023年10月からと、2025年10月から輸入申告項目および税関事務管理人制度について見直します。制度見直しの具体的な内容、その背景、そして輸入者や事業者にとってどのような影響があるのかを、わかりやすく解説します。
目次
税関の公式サイトによると、FS(フルフィルメントサービス)とは、ECプラットフォーム運営事業者等が提供するフルフィルメントサービス(購入者の注文受付から配送完了までの一連の業務全般(受注、在庫管理、梱包、発送、受渡し、代金回収等)を請け負うサービスのことを指します。
FSを利用して国内で販売することを予定して輸入しようとする貨物も近年増えています。
FS利用貨物については、日本国内に住所等を有しない者が輸入実績のある国内居住者の名義を勝手に使用する、いわゆるなりすましにより輸入を行う事案も起きているといいます。
また、FS利用貨物は、輸入の時点では売買が成立しておらず取引価格が存在していないなかで、インボイスに記載した不当に低い価格で輸入申告することにより関税等をほ脱する事案も顕在化しています。
通販貨物やFS利用貨物について、本来であれば、リスクに応じたメリハリのある審査・検査を実施する必要があります。
そのためには、輸入申告時に通販貨物や、FS利用貨物であることの把握に役立つ情報を得る必要があるのですが、これまでの輸入申告項目では、十分な情報が得られていませんでした。
そこで、税関は2023年10月から、関税法改正などをもとに次の見直しをしました。
このうち、輸入申告者の意義の明確化について詳しく解説します。
貨物を輸入しようとする輸入申告者は、輸入貨物に係る情報を把握して、責任をもって適正な輸入申告を行う必要があるため、輸入申告者の意義を明確化しました。
簡単にいうと、2023年10月から、輸入代行者は輸入申告者にはなれません。輸入貨物に関する情報を把握して、責任をもって適正な輸入申告を行う必要があるからです。
たとえば、⾮居住者である販売者が販売する貨物を、ECプラットフォーム事業者が提供するFSを利⽤して国内で販売することを予定して輸⼊する場合、国内引取り後にECプラットフォームでの販売の主体となることが予定されており、輸⼊の⽬的に従い貨物の販売を⾏おうとする販売者(⾮居住者)が、輸⼊申告者となり、税関事務管理⼈を定めて輸⼊申告をする必要があります。
より詳しい事例については、税関の輸⼊申告者の意義の明確化に関する事例集(PDF)を参照してください。
日本に居住しない者が税関手続を行う場合の手続(税関事務管理人制度)についても税関の公式サイトで確認してください。
さらに、2025年10月12日からは、すべての輸入貨物を対象に、以下の3つの項目が輸入申告項目として追加されることになりました。
これらは、通販貨物やFS利用貨物に係る輸入申告のみを対象としたものではないことに注意が必要です。
輸入申告項目に追加される「運送先の所在地・名称」は、輸入許可後の貨物がどこへ運ばれるのかを明確にするために追加されました。通販貨物に限らず、すべての輸入貨物について、運送先の所在地と名称を申告する必要があります。
具体的な申告方法は以下の通りです。
通販貨物に該当するか否かについては、輸入される貨物が通販貨物であるかどうかを区別するために追加されました。
申告の際には、以下のいずれかを選択する必要があります。
通販貨物とは、インターネット等を通じて通信販売により購入された後、販売者等により外国から日本国内に宛てて発送された貨物のことをいいます。購入者は個人に限らず、法人が購入する場合も「通販貨物」になります。
通販貨物に該当する場合、プラットフォームの名称等の記載が必要となります。この項目は、通販貨物がどのプラットフォームを通じて購入されたのかを明確にするために追加されました。
プラットフォームには、大きく分けて以下の2種類があります。
出品・出店型PFであることが明らかな場合はそのPFの名称等を申告してください。自社販売サイトであることが明らかな場合、またはどちらであるか不明な場合:「PFの名称等」に加え、「PFの運営事業者の氏名又は名称」、「貨物の販売者の氏名又は名称」を申告してください。
問い合わせ先やQ&A・申告書類は、税関の公式サイトを参照してください。
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