目次

  1. 海外進出のステップ
  2. 海外進出の事例 越境ECや展示会も
    1. 京提灯のポテンシャルに気づいた小嶋商店、海外からの依頼が半数に
    2. マッチ型のお香「hibi」、海外の販売ルートも拡大
    3. 稲庭うどんのアップサイクル、環境配慮でも世界で注目
    4. 国内市場の縮小見越し東南アジアに注目した福岡醤油店
    5. 取引先の国が2倍に増えた 業務用だし専門のフタバ
    6. ゼロから始めたサツマイモ輸出で日本一に 後継ぎが断ち切った退路
    7. 問屋任せから越境ECへ 世界に届いた根岸産業のBONSAI用じょうろ
    8. 錦城護謨のシリコーングラスに「Amazing!」海外見本市で手応え
    9. 世界30カ国へ オリジナル文具を広めたカキモリの地域戦略
  3. 輸出ビジネスの注意点

 日本貿易振興機構(ジェトロ)の公式サイトによると、海外進出、とくに輸出をする場合には次のようなステップがあるといいます。

  1. 計画段階
  2. 輸出先・取引先探し
  3. 商談
  4. 契約交渉・契約

 たとえば、計画段階で実施すべきことは以下の通りです。

  • 事業戦略明確化:海外展開する戦略商品の選定、市場調査、ターゲット地域・層の明確化、社内体制の整備
  • 貿易実務の習得:受発注、輸送手段の手配、保険付保、通関、決済、金融、クレーム対応
  • 規制・認証の事前チェック:相手国の貿易管理規制・環境規制の確認、認証の取得、検査証明、原産地証明の準備
  • 戦略立案:資金計画、知財戦略、流通経路・販売チャネル、広報手段などの計画立案、コンプライアンス対策、為替リスク対策、英語・現地語のウェブサイト作成

 これまでの取材のなかから海外展開に力を入れている中小企業の事例を紹介します。

ミラノサローネで披露した展示作品。興味深く内部をのぞき込む人が多かった(KYOTO T5提供)
人気のストリートファッションブランド、Supremeとのコラボ商品(小嶋商店提供)

 伝統的な京提灯作りを続ける小嶋商店は、新たな提灯作りを模索する中、有名企業とのコラボや、インスタレーションなどに活躍の場を拡大。海外からの注文を大きく伸ばしています。

hibiはマッチのように擦って火をつけます(同社提供)

 兵庫県太子町の神戸マッチ3代目は、培った着火技術を見つめ直し、擦って火をつけるマッチ型のお香「hibi 10MINUTES AROMA」(hibi)を、地元線香メーカーと3年半かけて開発。月産で90万個のヒット商品になりました。

 海外でも、1〜2年目は小売店への直売を中心に販売ルートを拡大し、3年目以降は信頼を置けるディストリビューターに間に入ってもらいました。海外での展示会は頻繁に行い、3年目からバイヤーが「彼らは本気だ」と気がつき始め、海外への販路開拓につながったといいます。

フランスの食品展示会「SIALパリ2022」に出展した稲庭うどん小川

 日本三大うどんの一つにもあげられる稲庭うどん。創業約40年の「稲庭うどん小川」は、製造工程で出るうどんの切れ端を“アップサイクル”した発泡酒など新たな商品を生み出しています。こうした取り組みは、環境配慮の点でも注目されており、今後の海外への販路拡大にもつながりそうです。

福岡醤油店の次代を担う3姉妹。左から三女・川向志季さん、長女・佐和さん、次女・伶実さん

 三重県伊賀市の山里にある福岡醤油店は128年に渡り、こだわりの製法でしょうゆを造り続け、9年前からシンガポールにも拠点を置き、レストランを中心に海外での需要も伸ばしています。

 長女が、シンガポール支社の責任者として海外への輸出やマーケティングに従事しています。福岡醤油店は縮小する国内市場を見越し、早くから海外進出を模索。欧米はすでに大手メーカーが進出していたため、まだ大手が少なかった東南アジアに目をつけたのです。2014年にはイスラム圏でも販売しやすいハラル認証のしょうゆも発売しています。

海外向け販売サイト「NEXTY」

 業務用だし専門の食品メーカー・フタバ(新潟県三条市)4代目は、新規事業に挑戦する中で、海外事業の販路開拓にも注力しています。会社を継いだ当時の取引先は10カ国でしたが、今はその2倍に拡大。韓国、タイ、豪州、台湾などの日系レストランや居酒屋、ホテルで、フタバのだしが使われています。

香港などへの輸出後に現地で開いた試食会(くしまアオイファーム提供)

 2013年の法人化からわずか5年でサツマイモの輸出量日本一を達成した宮崎県串間市の農業法人「くしまアオイファーム」。輸出商社と連携して販路の開拓を始め、地元のサツマイモ農家や親類の農家に呼びかけて、賛同者からイモを高めに買い取るなどして出荷量の拡大を図りました。

根岸産業の銅製じょうろ。そのデザイン性も評価されています。価格は5千円~3万円ほど(同社提供)

 ものづくりの町・東京都墨田区の工場で、園芸用の高級じょうろを作り続ける「根岸産業」。以前は国内販売が主でしたが、3代目が販売方法をがらりと変え、海外需要の掘り起こしに成功しました。越境ECの注意点も伝えています。

アンビエンテの出展した錦城護謨のメンバーや太田泰造社長(左から5番目奥)

 錦城護謨(きんじょうごむ・大阪府八尾市)の3代目社長太田泰造さん(50) は、オリジナルブランド「KINJO JAPAN」の開発のなかで、切子ガラスのようなデザインでぐにゃっと曲げられる“シリコーンロックグラス”を生み出しました。

 2023年2月、自社製品を手にドイツ・フランクフルトで開催された世界最大級の見本市「アンビエンテ」に初出展。太田さんは海外ならではの慣習の違いを目の当たりにしながらも、バイヤーからの「Amazing!」といった声に手応えを得ています。

カキモリは海外の店でも扱われています。写真はブルックリンのステーショナリーショップ(同社提供)

 東京都台東区の文具店「カキモリ」は、オーダーノートやインクスタンドなどのオリジナリティーあふれるサービスを確立し、蔵前に活気をもたらしました。運営会社ほたかは、老舗文具販売のアサヒ商会(群馬県高崎市)が2006年に買収。ほたかの祖業の法人向け販売をやめて、文具ファンをターゲットにカキモリを開店。

 雑貨づくりが盛んなその土地の強みを生かして独自商品を送り出し、世界30カ国に販路を広げています。

 海外展開を支援している日本政策金融公庫の公式サイトによると、輸出ビジネスは商慣習や手続きなど様々なリスクが伴うといいます。

 たとえば、輸出を行う場合、品目によって、日本側及び輸入国である外国側で一定の規制を受けることがあります。貿易取引では一般的に輸送距離が長くなり、また、国内販売では発生しないような費用が発生することにも注意が必要です。

 取引先を決めるときにも信用調査をしたうえで契約書を結ぶようにしましょう。