目次

  1. 手形・小切手の電子交換所とは
  2. 全面的な電子化に向けた政府と産業界の動き
  3. 2024年度までの手形削減の進捗状況
  4. 定額小為替証書・株式配当金領収証にも影響

 全銀協の公式サイトによると、電子交換所は、全銀協が設置、運営している手形交換所です。かつて手形は人手を介して搬送していましたが、2022年から稼働している「電子交換所」は手形·小切手の交換業務をイメージデータの送受信で完結できるようになりました。

 ただし、手形の支払人と受取人の取引金融機関の間での手形交換が電子化されただけで、手形を介した取引であることには変わりありません。

手形交換所と電子交換所の違い(全国銀行協会の資料をもとに編集部作成)

 経済産業省は、企業間の取引の決済に使われる約束手形について、2026年をめどにやめるよう産業界や金融界に働きかけています。経産省の「約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会」で次のように提言をまとめたためです。

 「支払サイト(支払期日までの期間)を短くしていくためには約束手形よりも支払サイトの短い決済手段(銀行振込)への切り替えが進められるべきである。発注企業の資金繰り負担などから直ちに切り替えができない場合であっても、少なくとも紙による決済をやめる観点から、電子的決済手段(電子記録債権等)への切り替えを進めるべきである」

 政府の方針を受け、金融界でつくる「手形・小切手機能の『全面的な電子化』に関する検討会」は自主行動計画を作り、最終目標を「2026年度末までに電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにする」と定めました。

 直近では、手形について、下請法上の代金の支払手段として認めないとする法改正の動きも出ており、社会全体として手形・小切手の利用廃止に向けた流れが加速しています。

 自主行動計画では、最終目標の達成に向けて毎年のフォローアップと中間的な評価を行うことが定められており、2024年度は中間的な評価を実施する年でした。

 報告書によると、手形・小切手の交換枚数は2020~2024年に2068万枚を削減しました。しかし、2024年中の電子交換所における手形・小切手の交換枚数は依然として1967万枚残っています。

手形・小切手の交換枚数の削減状況
手形・小切手の交換枚数の削減状況

 これは、目標値822万枚の61%に過ぎず、削減ペースは鈍化しています。このままでは、2026年度末時点でも月間約78万枚の手形・小切手が残る試算となっており、「手形・小切手機能の『全面的な電子化』に関する検討会」は「一定の成果は見られるが、これまでの取組みだけでは目標の達成は困難」と結論付けました。

 そのため、目標達成に向けて、これまでの取り組みに加えて抜本的な取り組みを行う必要があるとしています。

2027年4月から電子交換所での交換を廃止 システム更改も停止

 そこで、全銀協は、2027年4月から電子交換所における手形・小切手の交換を廃止することを決めました。

 電子交換所で手形・小切手の交換を廃止すると、今後も手形・小切手の取り扱いを継続する金融機関や企業は、電子交換所を介さない郵送等による相対決済(個別取立等)をするほかなくなります。

 これは、電子記録債権(でんさい)などへの移行を図る目的があります。

2026年の手形の利用廃止リーフレット
2026年の手形の利用廃止リーフレット

 全銀協は、電子交換所システムの更改は行わないことも決定しています。手形・小切手以外の証券についても電子化・削減を進めることも目的としています。

 電子交換所システムの保守期限は2029年6月であり、保守延長も2031年6月まで可能とされていますが、延長の要否は今後の代替手段への移行状況を調査し判断する予定です。

 2027年4月から電子交換所における手形・小切手の交換が廃止された後、電子交換所では手形・小切手以外の証券(その他証券)のみが交換されることになります。2024年度の電子交換所におけるその他証券の交換枚数は約656万枚であり、その多くは定額小為替証書および株式配当金領収証が占めています。

 これまでも、定額小為替証書については関係者(ゆうちょ銀行)との意見交換などを通じて削減に向けた取り組みが進められてきました。また、株式配当金領収証については、2023年度から関係団体で協議し、削減に関する施策を実施してきました。

 しかし、電子交換所システムの更改が行われないことが決定されたため、将来的にはその他証券についても電子交換所での交換ができなくなる可能性があります。そのため、全銀協は今後、その他証券の交換枚数の削減についても一層取り組む必要があります。