目次

  1. 実運送体制管理簿の作成義務とは
  2. 実運送体制管理簿の作成義務者と対象となる輸送
  3. 実運送体制管理簿に記載すべき事項 
  4. 下請事業者にも情報通知の義務
  5. 実運送体制管理簿の保存方法と閲覧
  6. 改正貨物自動車運送事業法のほかの制度

 実運送体制管理簿の作成義務とは、元請事業者が、真荷主(自らの事業に関してトラック事業者との間で運送契約を締結して貨物の運送を委託する者であって、トラック事業者以外のもの)から引き受けた貨物の運送を利用したときに、貨物の運送ごとに実運送体制管理簿の作成を義務付けられる制度です。

実運送体制管理簿の作成義務化
実運送体制管理簿の作成義務化

 ただし、元請事業者が真荷主から貨物の運送を引き受ける際に、元請事業者から実運送事業者に至るまでの一連の委託関係が明らかとなっている場合、実運送体制管理簿は一度作ればよく、運送ごとの作成は不要です。

 実運送体制管理簿の作成義務の背景には、物流業界で、多重下請構造が常態化しており、その実態が不明確であることが、運賃の不透明性や実運送事業者の低賃金、ひいてはトラックドライバーの労働環境悪化の一因と指摘されていることにあります。

 元請事業者に、貨物の運送を委託した際の下請事業者の名称や請負階層などを記録した管理簿の作成を義務付けることで、多重下請構造を可視化し、その是正に向けた取り組みを促すことを目的にしています。

実運送体制管理簿のイメージ
実運送体制管理簿のイメージ

 実運送体制管理簿の作成義務を負うのは、「元請事業者」です。ここでいう元請事業者とは、真荷主(自らの事業に関してトラック事業者との間で運送契約を締結して貨物の運送を委託する者であって、トラック事業者以外のもの)から直接運送を引き受けたトラック事業者などを指します。

パターン別実運送体制管理簿の作成主体
パターン別実運送体制管理簿の作成主体

 ただし、引き受けた貨物をすべて自社で実運送する場合は、実運送体制管理簿を作成する必要はありません。作成が必要となるのは、元請事業者が真荷主から引き受けた貨物の運送について、他のトラック事業者等に利用運送を行った場合です。

 また、実運送体制管理簿の作成対象となるのは、1荷主の1運送依頼あたりの重量が1.5トン以上の貨物です。この重量は、実運送する際の重量ではなく、真荷主から運送を引き受ける際の貨物の重量で判断されます。

 作成が義務付けられる実運送体制管理簿には、以下の事項を記載する必要があります。

  • 実運送事業者の商号又は名称
  • 実運送事業者が実運送を行う貨物の内容及び区間
  • 実運送事業者の請負階層(一次請け、二次請け等)

 実運送体制管理簿は、既存の配車表を活用するなど、事業者の取り組みやすい形で作成可能。電磁的記録での作成も認められています。

 実運送体制管理簿を元請事業者が適切に作成するためには、下請事業者からの情報提供が不可欠です。そのため、今回の改正では、以下の情報通知義務が下請事業者にも課されます。

実運送体制管理簿の作成に必要な情報の通知フロー
実運送体制管理簿の作成に必要な情報の通知フロー

 下請事業者には、元請事業者の連絡先、真荷主の名称、委託先の請負次数を伝える必要があり、実運送を担っている下請事業者が元受事業者に実運送事業者の名称/商号、運送区間、貨物の内容、請負次数を通知する義務があります。

 作成した実運送体制管理簿は、運送を完了した日から1年間保存しなければなりません。

 さらに、真荷主は、元請事業者に対し、実運送体制管理簿の閲覧を請求することができます。これにより、真荷主も自らの委託した貨物がどのような下請構造で運ばれているのかを確認することができるようになります。

 改正貨物自動車運送事業法は、ほかにも運送契約締結時の書面交付義務化や、荷待時間・荷役作業等の記録義務の対象拡大、委託先への発注適正化(健全化措置)、運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任義務化などが盛り込まれています。