「クリエイティブカンパニー」を掲げるロフトワーク(本社・東京)は、経済産業省も推奨する「デザイン経営」を事業のテーマにしています。先進企業のイメージが強いデザイン経営を、日本の中小企業にも広めようと、官公庁と一緒にプロジェクトも進めています。

 ロフトワークは2000年、現代表の林千晶さんらが創業。大手企業や老舗企業などを対象に、ウェブサイトのリニューアルや、リブランディング、オフィス空間の改装など、デザインの力を使った幅広い事業支援を手がけています。

 また、企業のデザイン経営導入もサポートしています。社員からのヒアリングを重ねて強みを掘り起こし、ロゴの変更など目に見える部分だけでなく、企業理念の更新や、新規事業にもつながる組織変革も後押ししています。

 林さんは2018年、経済産業省・特許庁がとりまとめた「デザイン経営宣言」の起草に、民間有識者として関わりました。

 2020年3月には経済産業省関東経済産業局と日本デザイン振興会とともに、中小企業におけるデザイン経営啓蒙活動の一環として調査を実施。「中小企業のデザイン経営」という冊子を制作しました。中小企業がデザイン経営を取り入れるのに必要な五つの視点を提示しています。

・ビジョンを更新する
・経営にデザイナーを巻き込む
・組織の変革をデザインする
・共創のコミュニティをつくる
・文化を生み出す

 最近では、デザインと経営の両面から地域課題を解決する人材を育成する経済産業省・中小企業庁の「ふるさとデザインアカデミー」に参画しました。また、2019年には、大阪府八尾市とともに「YAOYA PROJECT」を立ち上げました。製造業の街のリブランディングを目指し、市内の中小企業8社とクリエーターをつないで、仮眠用アイマスクや身軽な折りたたみソファーなどのオリジナル商品開発につなげました。

 ロフトワークは、特に中堅・中小企業のデザイン経営導入支援をしています。同社は事業承継とデザイン経営との関わりについて、「支援の対象となる企業の多くは、事業承継のタイミングと重なっています。デザイン経営の実践は、これまでの常識にとらわれず、新しい価値を創出すると同時に、創業の地を守っていく姿勢を併せ持つことにつながります。多くの後継ぎの方の想いを実現するのにマッチすると考えています」と説明しています。

 デザイン経営を柱にしたイベントを数多く企画しています。9月28日には中小企業経営者や次世代の経営リーダーを対象に、「ものづくり企業のデザイン経営」(協力:ツギノジダイ)と題した無料オンラインイベントを開きました。

 ロフトワークは、新しい価値を生み出したい中小企業を、デザインの力で後押ししようとしています。