マイニング投資とは

 日本銀行によると、「暗号資産(仮想通貨)」とは、ビットコインやイーサリウムなどインターネット上でやりとりできる財産的価値のことを指します。

 暗号資産は、特定の管理者がいません。そのため、取引データに間違いがないかについて、インターネット上で取引の正当性を相互にチェック・承認し「分散型台帳(ブロックチェーン)」に記録する作業が必要です。

 その作業に参加し、一定の成果を出した場合は、対価として暗号資産を受け取ることができます。こうして暗号資産を得る作業は、金の鉱脈を掘り当てる仕事になぞらえて「採掘(マイニング)」と呼ばれています。

マイニング投資はおもに3パターン

 暗号資産の売買は、いわば金やプラチナなどの商品売買などと同じように購入と売却による差額で利益を得ますが、マイニング投資で利益を出す方法としては、おもに3パターンがあります。

ソロマイニング

 自分でマイニング機器を購入もしくは作成して個人でマイニングすることです。

プールマイニング

 あるグループに所属して、グループの一員としてマイニングを行い、対価(報酬)をグループ内の貢献度によって分配を受けるものです。

クラウドマイニング

 マイニングをしている企業や組織に、資金を提供することで、その対価として利益の分配を得ることです。

 最近はマイニングの競争激化で、ソロマイニングでは報酬が得にくくなっており、プールマイニングやクラウドマイニングが主流になっています。そのため、これ以降はプールマイニングとクラウドマイニングを想定した一般的な事例をもとに説明します。

収益額は「取得した時点の時価」で評価

 プールマイニング、クラウドマイニングとも、報酬の受け取り方は案件ごとに違いますがが、1日、1週間、1か月など一定期間ごとに報酬が指定のウォレットに振り込まれることが多く見られます。収益の計算方法については以下のような形になります。

 「仮想通貨の売買であれば、通貨の【売却時点】で売却した通貨の売却代金から、購入時の通貨の取得原価を差し引いた額を損益として計上します。一方、マイニングは【受け取った時】に収益として認識します。収益額は国税庁の「仮想通貨に関する税務上の取り扱いについて」によれば【取得した時点の時価】で評価されます」

 たとえば、2020年10月1日に0.01BTC(ビットコイン)のマイニング報酬を得たとすると、その時点のビットコイン時価レートはおよそ1,150,000円なので、発生した収益は11,500円とみなされます。

税金の支払いに注意が必要な事例とは

 マイニングしている投資先が破産などといったトラブルをのぞけば、想定した報酬を得られないパターンとして以下のような場合が考えられます。

  1. 想定したように通貨の値段が上がらず、投資額を回収できなかった
  2. マイニングの効率が悪く、想定したように報酬を得ることができなかった
  3. 投資した通貨が一時的に値上がりしたが、すぐに値段が下がってしまった

 とくに注意が必要なのが、③の「投資した通貨が一時的に値上がりしたが、すぐに値段が下がってしまった」というパターンです。その理由が、先ほどの「マイニングは【受け取った時】に収益として認識します」という部分に関係するのです。

870万円の税金支払いが必要になった事例

 クロスエクスチェンジという取引所がXEXという取引所通貨を発行しました。このXEXという通貨は、2018年末からマイニングで取得できるというものでした。このXEXは当初3円ぐらいで取引されており、その後、順調に価格が上がり、2019年の最高で16円ぐらいとなりました。その後、値段が下がり2019年の年末の価格が1円を切るような推移をしました。

 この乱高下する暗号資産をマイニングで取得した人が多くいたことから税金という観点で問題になる人が出てきました。

 2019年にトータル1200万円程度のXEXのマイニングに投資を行った、ある人の2019年の収益額の動きと時価評価額の動きをご紹介します。ただし、話を簡略化するためにマイニングで得た通貨の売却や、買い増しなどは考慮していません。

青線が収益額の累計で、緑線が時価評価額の推移

 前半は時価評価額と収益額ともに上がっており、2019年6月を境に時価評価額が下がりはじめ、12月末になると収益額と時価評価額の差が大きくなっています。

 価格でいうと収益額が約1800万円、時価評価額が約90万円となっており、実際の収益額と時価評価額との差が1710万円も発生していました。

 相談者の職業や年収の詳細までを公開はできませんが、仮にマイニング投資した人が会社員で年収500万円だったとした場合、国税庁のサイトをもとに所得控除などは考慮せずに計算すると、次のように税金がかかってきます。

会社員の給与:500万円
仮想通貨の収益:1800万円
合計年収:2300万円
所得税額:640万4000円
住民税額:230万円
合計(税額):870万4000円

 870万円もの税金が発生してしまいましたが、マイニングで得たXEXをすべて売却しても90万円にしかならないため、払い切れない金額となっていました。この人は、年内に含み損を抱えているXEXを売却せず、年があけて確定申告時に収支計算をしたところ、想定以上の利益が出ていることが判明し、多くの税金を払う必要が出てきてしました。

国税庁が示している所得税の速算表(国税庁のサイトから引用)

 なお、クロスエクスチェンジの運営会社に対しては、金融庁が「日本居住者を相手方として、仮想通貨交換業を行っていた」として警告(PDF形式:28KB)を出しています。

対策は年内に売却して利益を相殺

 個人でマイニングの投資をする場合は【受け取った時】に収益が発生する、ということを念頭において投資することが必要です。XEXのように値段が下がってしまっている場合には、年内に一度マイニングで得た通貨を売却することをお勧めします。

 売却することで、以下のようにマイニングで得た収益に対応する損を出すことができます。先ほどの例をもとに説明すると、次のようになります。

マイニングで得たXEXの数量:170万XEX
マイニングで得たXEXの取得単価:10.8円
マイニングで得たXEXの総取得金額(=利益):1800万円

 総取得金額が、利益額になりますが、170万XEXを1円で売却した場合、およそ1600万円の損を出すことができます。

 このように、マイニングで得た利益を相殺することができます。注意点としては、この処理を年内に行う必要があるということです。通常は雑所得になるため、利益が出ている場合には他の所得と通算して税金を計算しますが、損失となっている場合は他の所得と通算することができず、翌年以降に繰り越すことができないためです。

 法人で投資をしている場合には、2019年4月以降に迎える決算期から、暗号資産が売却されていなくても期末時点で保有していた分についてはその時の時価で売却したものとみなし、その収益を当会計期間の収支に計上しなくてはならなくなりました。そのため、上記の対応は必ずしも必要ではありません。

 ただし、マイニングで得た通貨が値上がりしている場合には、期末時価評価で利益が出る可能性もありますので、その場合は別途必要に応じて納税資金を確保するといった対応が必要になります。

税金対策としてのマイニング投資の注意点

 「マイニング投資が税金対策になる」という宣伝文句も見かけることがありました。こちらについては個人と、法人の税金対策で、できることが変わってくるので、それぞれについて紹介します。

個人でマイニングする場合

 仮想通貨の利益については雑所得での申告のため、税金対策に使えるものがあまり多くありませんが、「10万円以下の少額のマイニングマシンを購入」して利益を圧縮するという方法があります。

 10万円以下の減価償却資産(パソコン、サーバー等)は、その稼働時点で全額を損金として計上することができるため、マイニングでの収益を計上する前に多額の損金を計上することで、その期の税額を減らすことが可能となります。但し、原則として雑所得になりますので、暗号資産取引などと合わせて赤字になると、先述の通り他の所得と通算することができず、赤字分だけ損となります。

法人でマイニングする場合

 個人と同様、10万円以下のマイニングマシンを購入し全額を損金計上し、利益を圧縮することはできます。法人の場合には、役員報酬や一定の福利厚生費、交際費等、通常発生する経費は幅広くも認められやすいためです。仮想通貨取引を目的とする法人だからといって特別に経費計上できないということはありません。そういう意味では、マイニングに限らず広く税金対策方法を検討することができると思います。

 ほかに、よく聞かれるのが、「中小企業経営強化税制」を利用し、購入したマイニングマシンを全額損金計上するという方法です。こちらは、審査に時間がかかったり、そもそも税制利用の前提として必要となる経営力向上計画が認定されなかったりといったケースも報告されていますので、検討する際には税理士などの専門家と十分相談の上進めることをおすすめします。

相談から対応までの流れ

 年をまたいでしまうと対策が取れないため、専門家に相談する場合は、できれば10月中、遅くとも11月中には訪れた方が良いでしょう。

 相談に訪れると、今年の収支と資産の状況の把握から始まります。その結果をもとに、損出し・益出しや他の対策がとれるかどうか検討し、必要に応じて対策をとる、という流れになります。

 今年の収支と資産状況の把握に要する期間として1週間はみておいた方がよいでしょう。ただし、データを収集がスムーズにいかなかったり、取引量が多かったり、数年前から仮想通貨を持っていて計算が初めての人は2,3か月かかることもあります。

 12月になってしまうと、現状の把握が間に合わず、アドバイスを受けられなかったり、売買するタイミングを逃したりすることもありますので、なるべく早めに相談する方が良いでしょう。

 また、未申告の場合についてですが、暗号資産はその特性上、全てのやりとり(トランザクション)が改竄困難な形で世界中のネットワークに散らばって保存されています。国税庁は日本国内取引所の取引状況や口座情報を得て税務調査に役立てていることも十分に考えられます。

 通常の税務調査の対象期間は原則として3年間で、悪質な場合などは最長7年間に及びます。税務調査の結果、もし税額が増加したり、未申告で納税していなかったりする場合は、本来払うべき税金に加えて、加算税や延滞税も負担することとなり、多くの税負担をする必要が出てきます。

 「最も損をしないのは、定期的に損益計算を行い、対策を取ったうえで、きちんと申告・納税を済ませておくことに他なりません」

八木橋泰仁さん

税理士法人ファシオ・コンサルティング代表

 法人・個人事業主の税務・会計顧問を中心に、経営全般の課題解決を支援する『経営支援サービス』を提供する税理士法人ファシオ・コンサルティング代表。仮想通貨の収支計算・会計システムを提供する「クリプトリンク」代表取締役。税理士・行政書士・日本FP協会CFP認定者