ふだん使いの家具で「災害から人の命を守る」 安信の耐震テーブル
災害から人の命を守りたい。神戸市に本社がある安信(あんしん)は、阪神・淡路大震災を経験した家具職人の石野信生(のぶお)社長(70)と、経営責任者の松井秀一(ひでと)さん(49)が2014年に設立した。家具を使った「小型耐震シェルター」を開発する一方、災害から組織を守るコンサルタント業務も手がけている。(藤本久格)
災害から人の命を守りたい。神戸市に本社がある安信(あんしん)は、阪神・淡路大震災を経験した家具職人の石野信生(のぶお)社長(70)と、経営責任者の松井秀一(ひでと)さん(49)が2014年に設立した。家具を使った「小型耐震シェルター」を開発する一方、災害から組織を守るコンサルタント業務も手がけている。(藤本久格)
会社設立の直接のきっかけは東日本大震災だ。当時、東京の設計事務所で耐震診断の仕事をしていた松井さんは、現行の耐震基準を満たしていないお年寄りの家ほど、耐震改修が進んでいないことに気づいた。よく聞く理由は「何年住むか分からない家にお金をかけたくない」だった。
松井さんは、昔からの知人で、阪神大震災で自宅が半壊した経験がある石野さんに相談した。「多額の負担をかけずに逃げ込めるシェルター(避難場所)をつくれないか」と考えた。
最初に作ったのは車のエアバッグをヒントにした防災グッズだ。折りたたんだエアバッグを圧縮ガスで瞬時に膨らませ、家具などから身を守る。だが、予想以上に費用がかさみ商品化を断念した。
次に考えたのが、その後の「構(かまえ)」シリーズにつながるふだん使いの防災家具だ。
大規模地震では、とっさに逃げ込んだテーブルなどが倒れてきた柱や屋根で押しつぶされる恐れがある。
強度を高めるため、天板や脚の間に鋼材を入れ、荷重を分散させる構造の5本脚を採用した耐震テーブルを開発した。「分厚い鉄板や鋼材を使ったため最初は4人掛けテーブルの重さが100キロを超えた」と松井さんは苦笑する。
試行錯誤の末、鉄板を薄くしても四隅を折り曲げれば強度を保てることを発見した。L字形の鋼材と組み合わせることで軽量化を実現させた。
実証実験では、4メートルの高さからワゴン車を落としても持ちこたえることができた。デザインにもこだわった。石野さんは「家具職人、設計事務所という2人の経歴が生きた」と話す。
「構」シリーズには耐震テーブルのほか、耐震ベッド、押し入れシェルターなど4種類がある。東京や神奈川、滋賀などの約70の自治体がこのテーブルを防災の補助対象商品に採用している。
3年前からは企業向けのリスクマネジメント事業も展開し、約200社と契約を結ぶ。石野社長は「災害の被害削減に貢献するのが我々の企業理念。これからもハード、ソフトの両面で人の命を守っていきたい」と話す。(2020年10月10日付け朝日新聞地域面に掲載)
防災グッズの企画・開発・販売会社として2014年に設立した。年商1億円、社員は10人。全国13カ所に代理店がある。耐震テーブルと耐震ベッドはいずれも27万円から。押し入れシェルターは13万円から(施工費は別)。問い合わせは同社(078・232・1116)。
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