コスプレ「武器屋」の顔を持つ匠工芸 プラスチック加工の技生かす
アニメやゲームのキャラクターの衣装をまとい、写真撮影を楽しむコスプレ。世界に広まった日本の文化の一つになったが、コスプレに使う「武器」作りに苦戦する人たちは少なくない。兵庫県高砂市のプラスチック加工会社「匠工芸」は、アニメの世界から飛び出てきたようなアイテムを作る「武器屋」の顔を持つ。(遠藤美波)
アニメやゲームのキャラクターの衣装をまとい、写真撮影を楽しむコスプレ。世界に広まった日本の文化の一つになったが、コスプレに使う「武器」作りに苦戦する人たちは少なくない。兵庫県高砂市のプラスチック加工会社「匠工芸」は、アニメの世界から飛び出てきたようなアイテムを作る「武器屋」の顔を持つ。(遠藤美波)
カトラス(剣)や盾、魔法の杖。工場の一角には匠工芸のブランド「TAKUMI ARMORY」の商品が並ぶ。「コスプレイヤーだけでなく、遊びに来た子どもたちも目を輝かせてくれます」と代表取締役の折井匠さん(42)は話す。
強みは高いデザイン力と、コンピューター制御で図面通りにプラスチックを切断できるNCルーターという機械を使った加工技術だ。ざっくりしたイメージさえもらえば、図面を描き、複雑な形でも正確に再現できる。
このNCルーターとの出会いこそ、折井さんが起業したきっかけだった。高校卒業後、プラスチック加工会社に勤務しているとき、NCルーターの存在を知った。まさに夢の機械。借金して購入し、2008年に起業。凝ったデザインの看板やディスプレーケースなどを手がけた。
ほぼ同時に、リーマン・ショックに襲われた。注文が入らない。必死に営業していると「俺は借金を返済するために経営者になったのか」と自問するようになった。
わくわくするものづくりがしたい――。思い出したのは、子どもの頃夢中になったテレビゲームの世界だ。「ゲームの中でモンスターと戦っていたときに持っていた剣、今なら作れるんじゃないか」
初めて作った剣は細部までこだわり抜いた結果、製作に1週間かかり、15万円もするものに。行程が複雑になれば値段は高くなる。パーツ数を減らしたり、光沢感を出すフィルムを貼るのをやめたりして、製作にかかる日数を1~2日まで短縮。価格を3万円台まで落とすと、買ってくれる人が現れた。
1本1万円以下の短い剣も作った。大規模なコスプレイベントに出展すれば、毎回20本以上売れる人気商品になった。
大手テーマパークや演劇関係者の目にもとまり、舞台の小道具や、着ぐるみが身につけるアクセサリーの注文も受けるように。コスプレイヤーからの注文も増え、今では売り上げの約4割をこうした武器や小道具が占めるという。
新型コロナウイルスの影響で3月から注文は激減した。そこで、透明なアクリル板で飛沫(ひまつ)防止パーティションをいち早く作り始めると、全国の医療機関などから注文が殺到した。コロナ禍でも遊び心は忘れず、漫画やアニメの世界に出てくる魔法をモチーフにした「魔法陣飛沫防止パーティション」を売り出し、SNSで話題になった。
目標はハリウッド進出だ。「『あのかっこいい剣、高砂で作ってるんだぜ』って、言いたいんです」と折井さんは話す。(2020年10月17日付け朝日新聞地域面に掲載)
従業員数7人。コスプレ用武器は社内の「ファンタジー武器屋」で展示。現在は新型コロナウイルスの影響で事前予約制。商品の一部は通販サイトで購入できる。問い合わせは同社(079-445-4500)。
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