海底や沿岸部にある建造物は、金属をさびから守るため特殊な加工が施してある。ボルトも例外ではなく、1本でも朽ちると全体の強度にも影響を与えかねない。すぐに取り換えるのも難しいため、極めて高い品質が求められる。

 竹中製作所のボルトは、独自の表面処理が「防さび力」を発揮する。2~5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の下地に、30マイクロメートル以上の膜を重ねる。京都大学の研究者の力も借りて、5年がかりで開発に取り組み、1984年に完成したものだ。

 塗装の色もいくつか試した結果、緑にたどり着いた。理由は不明だが、ほかの色よりも性能が優れていた。社名にある竹の色ともマッチ。塩水を吹き続ける試験に1千時間耐えた(現在は6千時間)ことから、「タケコート―1000」と名付けた。

 だが、当初は期待通りには売れなかった。営業先では「実績がないものは使えない」と相手にされなかった。あきらめかけた矢先、石油メジャーの米エクソンモービルが品質を認めてくれた。

電子顕微鏡で品質をチェックしている
電子顕微鏡で品質をチェックしている

 ひとたび実績ができると、注文がどんどん入るようになった。身近なところでは、大阪メトロのトンネルや東京湾アクアライン、明石海峡大橋にも使われている。アラブ首長国連邦(UAE)の石油精製工場への採用も決まった。

 会社は35年創業。艦艇用のボルトやリベットづくりから始め、戦後は建設需要を取り込んで安定した経営を続けた。80年代後半の急激な円高で一時は危機に陥ったが、「さびないボルト」の成功に救われた。

 最近は安い海外の模倣品が出回るようになり、競争は激しくなっている。そこで主力市場のUAEにも生産拠点を設け、ボルトやナットを現地調達して価格を抑えることにした。性能は日本製と変わらないため、一度は離れた取引先も戻ってきているという。

 また、耐熱性にも優れた製品や、被膜にカーボンナノチューブを用いた摩耗や圧力に強い加工技術も開発。新たな市場開拓にも取り組む。竹中佐江子社長は「よいものをつくり続ければ、お客は必ずわかってくれる。今後はアジア進出も進めていく」と話す。(2020年11月28日付け朝日新聞地域面に掲載)

竹中製作所

売上高35億円、従業員155人。特殊ボルト・ナットで国内市場90%以上、海外でも50%以上のシェアを誇る。ほかに電子機器の開発や生産も手がける。竹中佐江子社長は5代目。住友商事を経て2009年に入社し、2016年から現職。