目次

  1. 同一労働同一賃金とは……わかりやすく説明すると
  2. 同一労働同一賃金はいつから?
  3. アンケートでは半数近くが未着手・未対応
  4. 悩みは「待遇が不合理かの判断」「人件費の増加」
  5. 同一労働同一賃金への対応は「基本給」「賞与」
  6. 自由回答欄に書かれた意見とは
  7. 待遇改善に役立つ相談先
  8. 待遇改善に役立つ助成金には5コース
  9. 待遇見直しに役立つツール
  10. 同一労働同一賃金の問い合わせ先

 同一労働同一賃金をわかりやすく説明すると、正社員でも派遣社員でもアルバイトでも同じ業務をするならば待遇の差をなくそうという考え方のことです。ここで言う「待遇」というのは、賃金のことだけではありません。通勤交通費や住宅手当などの諸手当や、休暇なども対象になります。

 裁判の判例や対応策については、事業承継コンサルティング代表取締役の村上章さんが「同一労働同一賃金ガイドラインが中小企業にも適用 ポイントを解説」で解説しています。

 パートタイム・有期雇用労働法によって策定された「同一労働同一賃金」は大企業には2020年4月1日に施行されました。中小企業は1年後の2021年4月1日から適用されます。

 適用前の2020年12月23日~2021年1月26日、エン・ジャパンは、人事向け総合情報サイト「人事のミカタ」を利用する従業員数299人以下の中小企業150社の人事担当者に対し、インターネット上でアンケートを実施しました。
 同一労働同一賃金への対応について尋ねると次のように、課題が残っている企業が半数近いことがわかりました。

  • 「既に必要な対応が完了」……28%
  • 「現在取り組んでいる最中」……20%
  • 「これから取り組む予定」……3%
  • 「対応を検討している最中」……16%
  • 「対応が必要だが、何をすべきか分からない」……7%
  • 「対応が必要か分からない」……6%
  • 「対応する必要はない」……18%
  • 「その他」……3%

 「既に必要な対応が完了」「現在取り組んでいる最中」「対応が決まり、これから取り組む予定」と回答した企業に、同一労働同一賃金に対応する上で難しいと思う点を聞きました。
 すると、記事冒頭のグラフのように、「待遇差がある場合、”不合理であるかどうかの判断”」(23%)、「同一労働同一賃金に対応した場合の”人件費の増加”」(23%)などと続きました。

 同一労働同一賃金に対応する(対応予定を含む)賃金・待遇を聞いたところ、上位は「木補給」や「賞与」でした。まずは、賃金から対応しようとする企業が多い結果となりました。

エン・ジャパンが人事向け総合情報サイト「人事のミカタ」で実施した中小企業150社に聞いたアンケート結果「同一労働同一賃金に対応する賃金・待遇」

 このほか、アンケートの自由回答欄に次のような意見がつづられていました。

「優秀な社員のモチベーションやパフォーマンスが落ちることを懸念している」(商社/従業員数30~49人)
「⾧期で働いてくれるかどうかわからない人と、⾧期で働く前提の正社員を同一として扱わなくても良いと思う」(IT・情報処理・インターネット関連/30~49人)
「ガイドラインも基準が曖昧だし、判例も曖昧で判断が難しい」(メーカー/50~99人)
「不合理である、というところの精査に手間取りそう」(不動産・建設関連/100~299人)
「同一労働と簡単に言うが、労働が同一かどうかを評価することは、非常に難しい」(メーカー/100~299人)

 従業員の待遇改善を考えている場合、各都道府県にある「働き方改革推進支援センター」(PDF形式:76KB)で電話相談対応や、事業所訪問の支援を受けられます。

 賃金規定や諸手当制度を共通化する場合などに所定の額の助成をする制度としては、「キャリアアップ助成金」があります。
 キャリアアップ助成金とは、企業内で非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するため、正社員化などの取り組みをした事業主に助成金を支給する制度です。いくつかのコースに分かれています。厚労省のサイトで制度の変更がないかチェックしてください。

8-1.正社員化コース

 有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換、または直接雇用した場合などに助成するコースです。

8-2.障害者正社員化コース

 障害のある有期雇用労働者を正規雇用労働者へ転換するなどした事業主に対して助成するコースです。

8-3.諸手当制度等共通化コース

 有期雇用労働者と正規雇用労働者の共通の諸手当制度を新たに設けて適用した場合、または有期雇用労働者を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施した場合に助成するコースです。

8-4.選択的適用拡大導入時処遇改善コース

 労使合意に基づく社会保険の適用拡大の措置の導入により、有期雇用労働者について、働き方の意向を適切に把握し、被用者保険の適用と働き方の見直しに反映させる取り組みをし、新たに被保険者とした場合に助成するコースです。

8-5.短時間労働者労働時間延長コース

 有期雇用労働者の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合に助成するコースです。

 厚労省は、非正規雇用の従業員の待遇改善に役立つツールを公表しています。

9-1.パートタイム・有期雇用労働法等対応状況チェックツール

 サイト上で質問に答えると、診断結果が示されます。ただし、ユーザ登録が必要です。

9-2.パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書

 自社の状況が改正法の内容に沿ったものか点検をすることができる。実際に入力して点検できるツール(xlsm方式:884KB)もあります。

9-3.不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル

 各種手当、福利厚生、教育訓練、賞与、基本給について、点検・検討の手順を示しています。点検できるツール(xlsm方式:4.57MB)もあります。

 パートタイム・有期雇用労働法やガイドラインの内容についての問い合わせ先として、各都道府県の労働局があります。

都道府県別の相談先一覧(厚労省のサイトから引用)