改善活動の進め方を4ステップで解説 事例や導入時のポイントも紹介
「改善活動」の重要性は認識しているものの、実際に行っていない、または行っているものの成果を挙げられていない会社は少なくありません。従業員に実施を強制し、従業員のモチベーションを下げてしまうケースも多く見られます。本記事では、改善活動の具体的なやり方や事例などをご紹介します。
「改善活動」の重要性は認識しているものの、実際に行っていない、または行っているものの成果を挙げられていない会社は少なくありません。従業員に実施を強制し、従業員のモチベーションを下げてしまうケースも多く見られます。本記事では、改善活動の具体的なやり方や事例などをご紹介します。
目次
改善活動とは、会社の日々の業務や作業を改善し、生産性や品質の向上などを目指す一連の活動のことです。
もともとは自動車などの製造業の現場を中心に広く行われ、今日までに「カイゼン(Kaizen)」の名称で、欧米諸国を中心に世界中で広く行われるようになっています。
一般的に、企業が行う業務の多くの領域において、改善活動が実施できると言えるでしょう。
では、実際に改善活動をどう進めるべきでしょうか。筆者は、以下のプロセスを経ることをお勧めしています。
改善活動の最初のステップは、問題の洗い出しと共有です。
一般的に企業は様々な問題を抱えています。そうした問題を洗い出し、会社全体で共有することから改善活動はスタートします。
では、どうすれば問題を洗い出すことができるでしょうか。
たとえば、私が知る自動車部品メーカーのD社は、創業当時より社内にQCサークル(Quality Control Circle、品質改善を目指す社内サークル)を組織しています。
同サークルには多くの社員が参加し、就業時間終了後に定期的にミーティングを行っています。ミーティングでは社員が自由に意見し、問題点や改善のアイデアなどが数多く共有されています。
もうひとつ、循環器内科を主としたOクリニックの例をあげましょう。
同クリニックでは、事務ミス、作業ミスなどの各種のケアレスミスを防止することを目的に、問題点を「問題掲示板」を活用して共有しています。
問題を発見した、または作業ミスをしてしまった場合など、その事例をポストイットに記入して「問題掲示板」に貼り付けています。
問題を洗い出し、共有する方法は会社ごとにそれぞれです。
社内に目安箱を設置する、社内メーリングリストを活用する、社内情報共有システムを利用する、各種のSNSを利用する等があります。会社の現状に合わせて最適な方法を選んで下さい。
問題が共有されたら、次のステップは現状把握と分析です。
本当に問題は存在するのか、存在する場合はどの程度の問題か、できるだけ正確かつ客観的に分析します。具体的には、関係者へのヒアリングやアンケート、データ調査などを行い、現状を把握します。
このステップも、できれば関与する社員全員がグループになって行うのが望ましいでしょう。
次のステップは実際の改善計画の策定と実行です。
明らかにされた問題に対し、具体的にいつまでに誰がどう改善するのか、詳細を決定します。
改善計画には改善策に加え、改善を実施する担当者、全体を監督する責任者、改善目標なども明記するといいでしょう。
改善計画が策定され、関係者の了承を得たら、後は実行するのみです。
改善計画を実施し、終了したら評価します。
目標と結果を比較し、実際に改善できたことやできなかったことを検証します。特に、できなかったことは改めて、ステップ1の「問題の洗い出しと共有」へ返送し、最初からやり直しします。
この一連のプロセスは、PDCA(Plan(プラン), Do(実施), Check(チェック), Adapt/Action(変更・アクション))サイクルと呼ばれるものですが、改善活動ではこのPDCAを根気よく続けることが結果をだすための必要条件です。
では、改善活動を成功させるポイントは何でしょうか。以下にいくつか挙げてみます。
第一のポイントは、改善活動は可能な限り関係者全員で行うことです。
関係者全員でチームを組み、情報や問題意識を共有し、共通の目標達成を目指します。上司が指定したスタッフだけで行ったり、仲間はずれが出たりしないよう注意して下さい。
第二のポイントは、改善活動はトップダウンではなく、ボトムアップで行うことです。
トップダウンで改善活動を強制しても、社員のモチベーションを高めることは困難です。社員が自らの問題として改善活動を展開し、目標を達成することで高いモチベーションが維持できます。
第三のポイントは、可能な限り社員全員で情報を共有することです。
上述した「問題の洗い出しと共有」に加え、各チームが策定した改善計画の概要と詳細、各改善計画の結果など、チームや部署を超えて共有することが重要です。
特に成功事例を共有することで、他の部署で応用できる可能性が生じます。
第四のポイントは目標設定です。
改善活動を支える基盤となるのが改善計画ですが、その中でも特に目標設定が重要です。
筆者は目標を設定する際にはSMARTな目標設定をするようアドバイスしています。SMARTとは、Specific「具体的な」、Measurable「測定可能な」、Assignable「割り当て可能な」、Realistic「現実的な」、Time-related「時間とひもづいた」という意味です。
例えば、「Aチームの担当のもと、製品Xの不良率を来月末までに5%改善する」といったイメージです。
最後に、改善活動の好事例として、株式会社Mのお話をします。
株式会社Mは、東京都内でイタリアンレストラン3店舗を運営している飲食業者です。
同社の各店舗では、毎週月曜日午後三時から一時間、全スタッフによる「業務改善ミーティング」を行い、日々のオペレーションの改善を図っています。
各店の改善活動も「問題の洗い出しと共有」からスタートします。各店はスタッフ間のコミュニケーションをスマートフォンのSNSアプリで行い、スタッフ同士が情報を投稿できるグループ機能も利用しています。
スタッフが何らかの「問題」を発見すると、スマートフォンから情報を投稿し、SNSグループ経由でスタッフ全員で共有されます。
問題が洗い出されると、月曜日のミーティングでディスカッションが行われます。ディスカッションでは自由に意見が出され、解決のためのアイデアなどもどんどん出されます。
出されたアイデアを店長が整理し、改善計画に落とし込みます。
「アクションプラン」と題された改善計画には具体的な目標の内容、目標達成の方法、目標達成の責任者、目標達成の期限などが記され、スタッフ全員で共有されます。
「アクションプラン」は直ちに実行され、一週間後の「業務改善ミーティング」で結果が検証されます。
各店では接客サービスなどのオペレーションの「問題」に加え、キッチンでの仕入れや食材ロスなどの「問題」、広告や集客などのマネジメントレベルの「問題」など、各所の問題が幅広く共有され、改善活動の対象となっています。
スマートフォンとSNSというツールを上手に活用して改善活動を行っている好事例です。
以上、改善活動の基本、プロセス、実施のポイントなどにつき、事例と共に解説いたしました。
会社によって改善活動の内容はそれぞれですが、一致しているのは、改善活動とは一時的なものではなく、永続的に行うものであるという点です。
アメリカのビジネス情報サイト「MindTools」では、Kaizen(改善)とは、Continuous Improvement(永続的な改良)であると説明しています。
Kaizen
MindTools
Gaining the Full Benefits of Continuous Improvement
改善活動とは、年に一度実施して終わりになるというものではなく、日々の業務の中で日常的に行われる永続的なプロセスなのです。
その意味においては、改善活動とは会社全体のプロセスであり、習慣であり、文化であると言ってもいいかもしれません。
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