目次

  1. 改善活動とは何か?
  2. 改善活動の進め方
    1. 問題の洗い出しと共有
    2. 現状把握と分析
    3. 改善計画の策定と実行
    4. 改善計画の評価
  3. 改善活動のポイント
    1. 関係者全員で行う
    2. ボトムアップで行う
    3. 情報を共有する
    4. 目標を設定する
  4. 改善活動の好事例
  5. まとめ:改善活動とは永続的に行うもの

 改善活動とは、会社の日々の業務や作業を改善し、生産性や品質の向上などを目指す一連の活動のことです。

 もともとは自動車などの製造業の現場を中心に広く行われ、今日までに「カイゼン(Kaizen)」の名称で、欧米諸国を中心に世界中で広く行われるようになっています。

 一般的に、企業が行う業務の多くの領域において、改善活動が実施できると言えるでしょう。

 では、実際に改善活動をどう進めるべきでしょうか。筆者は、以下のプロセスを経ることをお勧めしています。

  1. 問題の洗い出しと共有
  2. 現状把握と分析
  3. 改善計画の策定と実行
  4. 改善計画の評価

 改善活動の最初のステップは、問題の洗い出しと共有です。

 一般的に企業は様々な問題を抱えています。そうした問題を洗い出し、会社全体で共有することから改善活動はスタートします。

 では、どうすれば問題を洗い出すことができるでしょうか。

 たとえば、私が知る自動車部品メーカーのD社は、創業当時より社内にQCサークル(Quality Control Circle、品質改善を目指す社内サークル)を組織しています。

 同サークルには多くの社員が参加し、就業時間終了後に定期的にミーティングを行っています。ミーティングでは社員が自由に意見し、問題点や改善のアイデアなどが数多く共有されています。

 もうひとつ、循環器内科を主としたOクリニックの例をあげましょう。

 同クリニックでは、事務ミス、作業ミスなどの各種のケアレスミスを防止することを目的に、問題点を「問題掲示板」を活用して共有しています。

 問題を発見した、または作業ミスをしてしまった場合など、その事例をポストイットに記入して「問題掲示板」に貼り付けています。

 問題を洗い出し、共有する方法は会社ごとにそれぞれです。

 社内に目安箱を設置する、社内メーリングリストを活用する、社内情報共有システムを利用する、各種のSNSを利用する等があります。会社の現状に合わせて最適な方法を選んで下さい。

 問題が共有されたら、次のステップは現状把握と分析です。

 本当に問題は存在するのか、存在する場合はどの程度の問題か、できるだけ正確かつ客観的に分析します。具体的には、関係者へのヒアリングやアンケート、データ調査などを行い、現状を把握します。

 このステップも、できれば関与する社員全員がグループになって行うのが望ましいでしょう。

 次のステップは実際の改善計画の策定と実行です。

 明らかにされた問題に対し、具体的にいつまでに誰がどう改善するのか、詳細を決定します。

 改善計画には改善策に加え、改善を実施する担当者、全体を監督する責任者、改善目標なども明記するといいでしょう。

 改善計画が策定され、関係者の了承を得たら、後は実行するのみです。

 改善計画を実施し、終了したら評価します。

 目標と結果を比較し、実際に改善できたことやできなかったことを検証します。特に、できなかったことは改めて、ステップ1の「問題の洗い出しと共有」へ返送し、最初からやり直しします。

 この一連のプロセスは、PDCA(Plan(プラン), Do(実施), Check(チェック), Adapt/Action(変更・アクション))サイクルと呼ばれるものですが、改善活動ではこのPDCAを根気よく続けることが結果をだすための必要条件です。

 では、改善活動を成功させるポイントは何でしょうか。以下にいくつか挙げてみます。

 第一のポイントは、改善活動は可能な限り関係者全員で行うことです。

 関係者全員でチームを組み、情報や問題意識を共有し、共通の目標達成を目指します。上司が指定したスタッフだけで行ったり、仲間はずれが出たりしないよう注意して下さい。

 第二のポイントは、改善活動はトップダウンではなく、ボトムアップで行うことです。

 トップダウンで改善活動を強制しても、社員のモチベーションを高めることは困難です。社員が自らの問題として改善活動を展開し、目標を達成することで高いモチベーションが維持できます。

 第三のポイントは、可能な限り社員全員で情報を共有することです。

 上述した「問題の洗い出しと共有」に加え、各チームが策定した改善計画の概要と詳細、各改善計画の結果など、チームや部署を超えて共有することが重要です。

 特に成功事例を共有することで、他の部署で応用できる可能性が生じます。

 第四のポイントは目標設定です。

 改善活動を支える基盤となるのが改善計画ですが、その中でも特に目標設定が重要です。

 筆者は目標を設定する際にはSMARTな目標設定をするようアドバイスしています。SMARTとは、Specific「具体的な」、Measurable「測定可能な」、Assignable「割り当て可能な」、Realistic「現実的な」、Time-related「時間とひもづいた」という意味です。

 例えば、「Aチームの担当のもと、製品Xの不良率を来月末までに5%改善する」といったイメージです。

 最後に、改善活動の好事例として、株式会社Mのお話をします。

 株式会社Mは、東京都内でイタリアンレストラン3店舗を運営している飲食業者です。

 同社の各店舗では、毎週月曜日午後三時から一時間、全スタッフによる「業務改善ミーティング」を行い、日々のオペレーションの改善を図っています。

 各店の改善活動も「問題の洗い出しと共有」からスタートします。各店はスタッフ間のコミュニケーションをスマートフォンのSNSアプリで行い、スタッフ同士が情報を投稿できるグループ機能も利用しています。

 スタッフが何らかの「問題」を発見すると、スマートフォンから情報を投稿し、SNSグループ経由でスタッフ全員で共有されます。

 問題が洗い出されると、月曜日のミーティングでディスカッションが行われます。ディスカッションでは自由に意見が出され、解決のためのアイデアなどもどんどん出されます。

 出されたアイデアを店長が整理し、改善計画に落とし込みます。

 「アクションプラン」と題された改善計画には具体的な目標の内容、目標達成の方法、目標達成の責任者、目標達成の期限などが記され、スタッフ全員で共有されます。

 「アクションプラン」は直ちに実行され、一週間後の「業務改善ミーティング」で結果が検証されます。

 各店では接客サービスなどのオペレーションの「問題」に加え、キッチンでの仕入れや食材ロスなどの「問題」、広告や集客などのマネジメントレベルの「問題」など、各所の問題が幅広く共有され、改善活動の対象となっています。

 スマートフォンとSNSというツールを上手に活用して改善活動を行っている好事例です。

 以上、改善活動の基本、プロセス、実施のポイントなどにつき、事例と共に解説いたしました。

 会社によって改善活動の内容はそれぞれですが、一致しているのは、改善活動とは一時的なものではなく、永続的に行うものであるという点です。

 アメリカのビジネス情報サイト「MindTools」では、Kaizen(改善)とは、Continuous Improvement(永続的な改良)であると説明しています。

Kaizen
Gaining the Full Benefits of Continuous Improvement

MindTools

 改善活動とは、年に一度実施して終わりになるというものではなく、日々の業務の中で日常的に行われる永続的なプロセスなのです。

 その意味においては、改善活動とは会社全体のプロセスであり、習慣であり、文化であると言ってもいいかもしれません。