「車が故障したらJAF(日本自動車連盟)に電話するように、パソコンのトラブルがあれば日本PCサービスに聞けばいい。そんな存在をめざしてきました」

 2001年に起業した家喜信行社長(45)はそう話す。全国に直営14店のほか加盟店が約300あり、年中無休で電話相談を受ける。修理に行くのは最短で当日。あらゆるメーカーの商品に対応できるのが強みだ。パソコンが起動しない、ネットにつながらない、ウイルスに感染したといった年約16万件のトラブルを解決している。

本社内にあるコールセンター。パソコン修理などの依頼を受け付けている

 出張料5500円と診断料3300円に加え、作業に応じた料金がかかる。安くはないが、「頼まれた修理をするだけでなく、お客の困っていることを根本的に解決することで、リピーターも増えている」(家喜社長)。訪問するスタッフは、すべて研修を受けた正社員だ。

 ただ、創業当初は苦労が続いた。チラシを200万枚配っても、問い合わせは5件だけ。赤字続きで7人いた社員は次々辞め、残ったのは家喜社長と社員1人だけだった。

 転機は大手との提携だった。2004年にカギや水道のトラブルを解決する「生活救急車」の運営会社と提携し、パソコン関連の仕事を引き受けるようになった。自力営業では客から「出張料が高い」とよく言われたが、「生活救急車」として行くと何も言われず5000円を払ってもらえた。

 知名度の重要性を痛感し、大手パソコンメーカーや家電量販店と提携し、仕事を紹介してもらう戦略に注力した。2006年にある大手と契約すると信用度が増し、「あの会社が使っているなら」と提携先が広がった。現在約700社だ。家喜社長は「コバンザメ商法がうまいな、と言われたこともあります」と笑う。

 自社の認知度も少しずつ上がり、今は相談のうち提携先経由の客と、直接電話を受ける客が約半分ずつ。昨夏にはタブレットやスマートフォンを含む家庭のネット関連機器を月額料金で丸ごとサポートするサービスを開始。今年からネット回線契約とのセットプランも始めた。家喜社長は「これからはパソコンだけでなく、家庭のネットワークのトラブルをワンストップで解決していきたい」と話す。(2021年4月24日朝日新聞地域面掲載)

日本PCサービス

 2001年に創業し、2003年からパソコン修理を手がける。2014年に名古屋証券取引所に上場した。2020年8月期の売上高は54億円、従業員は399人。2019年の楽天インサイトの調査では、パソコンなどの有料訪問サポートの全国シェアが20%で首位となった。