「焼きペヤングメーカー」のライソン、商品企画は値段から決める
本格的な焼き芋が作れる「超蜜やきいもトースター」、直径10センチのたこ焼きができる「ギガたこ焼き器」、1台で熱かん、焼き鳥などが楽しめる「せんべろメーカー」――。ユニーク家電を世に送り出し、2020年度の売上高は前年度比約4割増になった。(森直由)
本格的な焼き芋が作れる「超蜜やきいもトースター」、直径10センチのたこ焼きができる「ギガたこ焼き器」、1台で熱かん、焼き鳥などが楽しめる「せんべろメーカー」――。ユニーク家電を世に送り出し、2020年度の売上高は前年度比約4割増になった。(森直由)
ヒット商品のカップ焼きそば専用ホットプレート「焼きペヤングメーカー」ができたのは、居酒屋での会話がきっかけだ。2017年12月、山俊介(やましゅんすけ)社長(39)は東京へ出張。同僚4人で居酒屋へ行き、何げなく口にした。「カップ焼きそばと言われるけれど、本当は麺を焼いていないよな」「ほんまや」――。
翌日、大阪に戻り、ペヤングを購入。フライパンに水を入れて沸騰させ、焼きそばの麺を入れ、水分が蒸発するまで炒めた。あまりのおいしさに、「ペヤング専用のホットプレートをつくろう」。
山社長ら3人で開発を始めた。夜まで試作を続ける日々。ひたすら焼きそばをつくり続ける3人は、同僚たちから変な目で見られ続けた。同社は自社工場を持たず、生産を中国の工場に委託している。何度も工場側に改良を指示し、2018年夏に完成した。
しかし、「こんな商品が売れるのか」。社内で疑問視する声が多かった。そこでクラウドファンディングを活用。まずは寄付してくれた人へ、商品を送る形にした。
当初の目標は50万円だったが、約1700人から約517万円が集まった。2019年2月に発売すると、SNSなどで評判が広がり、累計5万台以上を販売。この体験から、自分たちで商品をつくり、クラウドファンディングでPRしたら、ヒット商品になる「勝利の方程式」を感じ取ったという。
その後、山社長は「毎日使えるような家電も開発したい」と、1分間で食パンを焼けるトースターを考案。しかし、一足先に他社が発売してしまった。
「それなら2秒早くして、58秒に」。通常製品の2倍の約400度で一気に加熱する「秒速トースター」を開発した。クラウドファンディングで約540人から450万円ほどを集め、2020年7月に発売。これまでに3千台以上が売れた。
2021年3月下旬には、広範囲大風量の小型扇風機「汗かき専用ビッグハンディファン」を新発売した。
商品企画では、値段から先に決める。「できることが限られ、コンセプトが明確になる。機能を絞って安く提供し、差別化を図らないと、大手メーカーには勝てない」。これからは空気清浄機や加湿器など、リビングに置いてもらえるような生活家電も開発したいと考えている。(2021年5月22日朝日新聞地域面掲載)
本社は大阪府東大阪市。クレーンゲームの景品企画などの会社「ピーナッツ・クラブ」の第2営業部が、2018年にライソンとして分割された。従業員数は約25人。2021年4月期の売上高は16億4400万円。家電やアウトドア商品など約120品を販売している。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。