社名の「ケンミン」を「県民」と読み替えて、始めたのは「47都道府ケンミン焼ビーフンプロジェクト」だ。各都道府県の農産品などを食材として使った焼きビーフンを開発し、売り出す。2020年6月発売の千葉、2021年2月の宮崎に続き、17日発売の第3弾が創業の地、兵庫となった。

「兵庫ケンミン焼ビーフン」では、従来製品よりも大きくカットした淡路島産新タマネギを入れるため、切り方を念入りに打ち合わせたという=ケンミン食品提供

 その「兵庫ケンミン焼ビーフン」は、淡路島産の新タマネギを使った。特徴であるタマネギの甘みを逃さず米の麺に吸収させ、素材のおいしさを生かした。昨春に第1弾として発売することを目指していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた巣ごもり需要の増加で出荷が増え、加工工場が多忙に。タマネギの旬を逃し、1年延期された。同社の通販サイトや、全国の生協での共同購入で買える。

 どの食材が合うか、など開発には時間がかかる。1年に多くて3~4県分しか進まないといい、「私が会社にいる間に47都道府県をコンプリートすることは無理でしょうね」とマーケティング部の岩本太郎さん(50)は笑う。

 プロジェクトを始めた理由について、「70周年を迎え、新たな形で全国のお客様との接点づくりをしたかった」と語るのは、創業者の孫にあたる高村祐輝社長(38)だ。2019年5月に就任した。

 創業者の高村健民氏が焼きビーフンを発明し、会社の礎を作った。2代目で現会長の一成氏は「ケンケンミンミンやきビーフン」の歌でおなじみのユニークなテレビCM制作や、中華レストラン「健民ダイニング」などの外食産業への参入で社業を発展させた。3代目の役割として意識するのは、「人口減少社会にあっても必要とされる存在でありたい」。

 取り組むのはビーフンの付加価値を高める活動だ。「47都道府ケンミン焼ビーフンプロジェクト」もその一環。「一日一レシピ」として、公式HPやSNSで同社製品を使ったメニューを頻繁に発信している。

 また、小麦アレルギーを持つ人でも食べられるよう、米麺を使ったラーメンや焼きそばの開発、普及も進める。「自分たちしか出来ないことを続けて、米の麺市場をさらに磨きたい」と若き3代目は意気込んでいる。(2021年5月29日朝日新聞地域面掲載)

ケンミン食品

 1950年創業のビーフンメーカー。社名は創業者の高村健民(けんみん)氏にちなむ。ビーフンの国内市場シェアでは52.8%(2019年)を占める。フォー、ライスペーパーなど米を原料とした加工品も手がける。従業員は200人(2月現在)。