ベンチャーのアイデア、町工場の技術で実現 大手だけに頼らず事業拡大へ
成光精密(大阪市港区)の本業は、産業用機械や精密部品の製作だ。だが3年前からは、ベンチャー企業の新製品のアイデアを、自社を含めた町工場の技術で実現する拠点「ガレージミナト」としての事業も開始。大企業からの受注だけに頼らず、町工場同士が連携しながら事業を拡大していく狙いだ。(橋本拓樹)
成光精密(大阪市港区)の本業は、産業用機械や精密部品の製作だ。だが3年前からは、ベンチャー企業の新製品のアイデアを、自社を含めた町工場の技術で実現する拠点「ガレージミナト」としての事業も開始。大企業からの受注だけに頼らず、町工場同士が連携しながら事業を拡大していく狙いだ。(橋本拓樹)
創業は2001年。機械や部品の試作から量産まで一貫して手がけ、グローバルに事業を展開する大企業からの受注もある。
「ガレージ」はもともと東京の町工場が2014年に始めた取り組みで、その工場と連携する企業と提携して、成光精密でも2018年に始めた。代表取締役の高満洋徳さん(44)は「決まった仕様に沿って部品をつくるなら、うちに1台ある機械を10~20台も持っているような中国の工場とは価格で競えない。差別化のために、何も仕様が決まっていないものをゼロからつくれないかと考えた」と話す。
小回りがきく町工場の強みを生かし、ベンチャーのアイデアについて一つ一つプロジェクトを立ち上げ、製品化を目指す。同社は1階が工場で、2階はベンチャーの担当者らと議論ができるスペース。アイデアがまとまったらすぐ試作し、課題が見つかればまた検討できる環境だ。
とはいえ、プロジェクトはゼロから立ち上げるだけに、手探りの連続だ。仕様書のない製品や部品の試作が、一度でうまくいくことはない。
例えば産業用ドローンの試作では、機体にどこまで強度を持たせながら軽くできるかの検討を重ね、開発に約1年をかけた。ほかに野球のバッティング練習に使う機器や、食用コオロギを飼うコンテナなど、ベンチャーらしい独特の製品も手がけてきた。
自社の設備だけでは不十分な場合は、地元の他の町工場と連携し、得意な技術を持ち寄って対応する。
町工場の多くは大企業からの受注に頼るため、経営が不安定になりがちだ。工場同士が協業する中で、それぞれが自社の強みに気付くことで、大手に頼らず取引先を開拓していく姿をめざす。
これまでにプロジェクトにかかわったベンチャー企業は50社以上、町工場は100社以上にのぼる。コロナ禍の影響もあって受注が減り、将来に不安を持つ町工場も多いといい、高満さんは「同じような熱意や課題意識を持つ町工場と一緒になってやっていきたい」と話す。(2021年6月5日朝日新聞地域面掲載)
大学で電気工学を学んだ高満洋徳さんが、義父の営んでいた事業を引き継ぐ形で創業した。精密部品の試作品づくりに強く、自動車や半導体、液晶関連などの企業と取引がある。従業員は約30人。大阪市認定の技術者が講師を務めるセミナーも主催する。
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