京都南工場(京都市南区)にずらりと並ぶ水槽。従業員が中の液体に金属部品を沈め、引き揚げる。さび防止や摩擦への耐久性を高めるため、金属部品の表面にカドミウムやクロムといった重金属の皮膜を作る「電気めっき」と呼ばれる作業だ。

 加工する部品の多くが、米ボーイング社製旅客機の機体や、米プラット・アンド・ホイットニー社製の航空機エンジンなどに使われている。フラップなど可動部分のアクチュエーター(駆動装置)やエンジンの回転部分に欠かせない部品ばかりだ。

めっき加工した航空機の部品。めっきや表面処理は、機体を腐食や摩擦から守るために欠かせない

 同社が手がける特殊な表面処理は「特殊工程」と呼ばれる。発注元により、使う薬品や漬ける時間など詳細な手順が決められている。専務の中村止(とまる)さん(70)は「『特殊工程』というのは信頼。任せても大丈夫という会社やないといかんわけです」。

 中村さんによると、もとは戦前から続いたしょうゆ屋だった。戦後、競争が厳しいしょうゆ造りからめっき加工に転じた。大きな木おけをめっき槽に流用できたからだ。当時、スプーンなどの洋食器が足りず、古いものを再利用するために、めっきをし直したことが、始まりだという。

 そのうち、腕を見込まれて島津製作所(京都市)から受注し、航空機部品のめっき加工を手がけるように。1977年、表面処理でボーイング社の基準を満たす認定工場になり、欧米の機体やエンジンの大手メーカー認定工場になった。ボーイング787の主翼を支える骨組みの一つ「桁」の表面加工も手がける。

 航空機産業はコロナ禍で打撃を受けた。だが、中村さんは、人々は再び飛行機で旅をするようになると踏む。7月には岐阜県に新工場を建設する。エンジンなどの部品加工から表面処理、塗装、組み立てまでの一貫工場だ。中村さんは「自動化を進めて、今後の需要増に応えたい。投資が先行するが、仕事には夢、ロマンがいるんだ」と笑った。(2021年6月26日朝日新聞地域面掲載)

旭金属工業

 1948年設立、従業員507人。航空機やロケットの機体・エンジンの部品の加工、めっき、塗装などの表面処理を行う航空機部品メーカー。工場は本社のある京都市内に2カ所と岐阜県安八町、マレーシア、米国にある。2020年8月期の売上高は57億円。