ざらざら、つるつる……質感をデータ化 ティッシュ・化粧品・車にも寄与
ざらざら、つるつる、ごわごわ、しっとり、ひんやり、ふんわり――。そんな、モノの「風合い」を測り続けて50年。カトーテック(京都市南区)は、肌触りを数値化する計測機を開発してきた。測るものは、布やティッシュ、紙おむつから自動車のシート、化粧品と幅広い。次は、より指の感覚に近づけた繊細な計測機を作ろうとしている。(諏訪和仁)
ざらざら、つるつる、ごわごわ、しっとり、ひんやり、ふんわり――。そんな、モノの「風合い」を測り続けて50年。カトーテック(京都市南区)は、肌触りを数値化する計測機を開発してきた。測るものは、布やティッシュ、紙おむつから自動車のシート、化粧品と幅広い。次は、より指の感覚に近づけた繊細な計測機を作ろうとしている。(諏訪和仁)
「風合い」という主観的な評価を、どうやって客観的なデータにするのか。
布などのサンプルを引っ張ったり、曲げたりするときにかける力に注目した。かける力が小さいほど伸びやすく、柔らかいので、かける力を測って数値化する。基本は「引っ張る」「曲げる」「押す」「なでる」という四つの計測機でデータをとり、総合して性状を数字で表す。この手法は広く世界で使われている。
もとになる質感の数値化手法が生み出されたのは、60年ほど前。京都大工学部の川端季雄教授と奈良女子大家政学部の丹羽雅子教授(ともに故人)が繊維会社の技術者らと共に500種類以上の布を触って質感を定義した。繊維産業が盛んな時代で、熟練の職人が触って品質を確かめていたが、客観的に判定する方法が求められていた。
そのころのカトーテックは、東京オリンピックのメダル製造にも協力した鋳造機製作会社だった。だが、同社に「京都一」と言われる「やすり名人」がおり、川端教授に請われて測定の研究に必要な部品を作製。その縁で「質感」の計測機開発を手がけ、事業転換した。
風合いの計測機は、製紙会社がティッシュの破れにくさや手触りの良さを研究で使い、化粧品業界も、シャンプー後の髪のハリやコシの測定に使うなど繊維産業以外にも広がった。自動車メーカーもバブル経済が盛り上がり始めた頃から、車内の上質感を高めるため、シートや内装の計測に使い始めた。坂井敦子社長は「企業の製品開発には、より『心地よい』ものが求められていて、そこに計測機が役立っている」と話す。
大学と研究を重ね、触ったときの細かな振動から触り心地を判断するという人間の感覚特性に近づけた新しい計測機を開発している。坂井社長は「より指で触ったときの感覚に近づけたデータがとれるようにし、世界に広めたい」。(2021年9月25日朝日新聞地域面掲載)
本社は京都市南区で、従業員は24人。昨年度の売上高は4億2千万円。坂井社長の祖父が戦後の1949年に始めた加藤鉄工所が前身。鋳物を造る機械を手がけていたが、1970年代に風合い計測機の生産に切り替えた。扱っている計測機は32種類。
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