設立は1969年。科学機器メーカーの技術者だった創業者の圓井康彦会長(86)が、人類を月に送り込んだ米国のアポロ計画に刺激され、宇宙食品の製造を目指して始めた。社名の「コスモス(宇宙)」には、創業者の思いが込められている。

 最初に商品化したのは山芋のトロロ。しかし、乾燥食品の認知度が低く、消費者の反応はいま一つだった。会社を救ったのは1970年代に登場したカップ麺。その中に入れるネギなどの具材に乾燥食品が使われるようになった。コスモス食品もカップ麺メーカーから具材の製造を受注し、OEM(相手先ブランドによる製造)で業績を伸ばした。

 真空凍結乾燥は、気圧が下がると沸点が下がる原理を生かし、凍結させた食品を真空状態にすることで凍ったまま乾燥させる技術。ブランド営業部長の圓井大輔さん(35)によると、具材の組織を壊さないため、野菜などの色や香り、栄養分も残せるという。

コスモス食品本社工場の真空凍結乾燥機

 本社工場で真空凍結乾燥機を見せてもらった。専用の長靴に履き替え、エアシャワー室を通って工場の中へ。調理した食品を最大マイナス30度まで凍結させ真空状態をつくり出す、その機械は円筒型で全長30m、直径3mもある。近くでは、白いつなぎを着た従業員たちが釜で炊いたスープをトレーに注いでいた。

 「実は、従業員の一言が自社製品開発に取り組むきっかけになったんです」と、大輔さんが打ち明ける。

 OEM生産一辺倒だった三十数年前。製造過程で食品添加物を入れていた従業員が「家族には食べさせたくないな」とつぶやいた。それを聞いた大輔さんの父親で現社長の康輔さん(61)が、有機野菜を主体とした自社ブランドの立ち上げを決意した。

コスモス食品の自社ブランド商品

 15年前から、土壌がきれいなタイ北部のチェンライ県で農場を開墾。有機栽培したナスやオクラなどの野菜を現地工場で加工するようにした。有機野菜を使った自社ブランド商品は現在、売り上げ全体の2割を占める。自粛生活が始まった昨年春以降、自社商品の売り上げはコロナ以前の1.5倍に伸びている。

 大輔さんは「宇宙食の開発は途中ですが、もし宇宙人と遭遇したら『フリーズドライを極めたらここまでできるのか』と言わせたいですね」。(2021年11月13日朝日新聞地域面掲載)

コスモス食品

 本社は兵庫県三田市下内神。本社工場のほか、岐阜県可児市とタイ・チェンライ県に工場があり、東京・銀座に販売拠点を持つ。「NATURE FUTURe」や「AWATAMA」などのブランド名でスープやみそ汁などの自社商品がある。国内の従業員はパートを含め約140人。年商約33億円。