2020年夏、コロナ禍で教育現場でも、児童・生徒の学習机に飛沫(ひまつ)感染防止用のパーティションが必要とされ、商品開発を進めた。現場の教員の声を聞いてきた社員の「しまえて、もっとコンパクトにできるのがいいんちゃう」との声から、販売したのが学習机用パーティション「くるくるシールド」だ。

 長さ60cmの土台になる箱に透明フィルムをくるくる巻き付けた支柱がおさめられており、広げて使う。1、2分で組み立てられる。相手先ブランドでの販売も含めて5万個以上が売れた。

「HOWAY die cut system EVA初号機」と名付けられた1.5m×2.5mの段ボールを型抜きできる大型機械は「西日本最大級」という

 野々宮英一郎社長(53)の祖父が、1953年に創業した段ボール箱製造業が始まり。1975年に段ボール製の「帳票保存箱」を作り、通信販売を手がけた。

 2000年に闘病中だった2代目社長の父から野々宮さんが仕事を継いだ。当時はパッケージ類しか扱っていなかったが、「やりたいようにやれ。思ったらすぐ動け」と父に言われた。そこで、百貨店などの売り場の販売促進用ディスプレー事業に進出した。

 知識も経験もなく、ディスプレーを手がける企業に頭を下げ、紙のイロハから学んだ。注文を受けていた大型家電のディスプレーを試行錯誤して仕上げた。納品先からの「よかったよ」という言葉で自信がついたという。

 災害時の避難所で使う備蓄用の防災簡易組み立てベッドは、強度を落とさず1人でも1分で組み立てられるようにした。「色んなメーカーが出しているので同じものではダメ」と野々宮社長。

 2016年入社の総合企画部・木村昌孝さん(43)は、社内に5人いる設計士の1人。2020年末に販売したネコのトイレのカバーにもでき、ネコが遊べる「ネコ神社ハウス」(税込み5742円)は、クラウドファンディングで約370万円集めて商品化に成功。売り上げの一部は保護ネコ事業に寄付する。「保護ネコを2匹飼っていて、通販事業でネコが喜ぶ商品を何か作れへんか考えてました」と木村さん。

 2021年6月期の売り上げは、ディスプレー部門がコロナ禍の影響を受け、前期比約2割減の8億5千万円。新たな収益として、ディスプレー設計の技術を応用した映像やアニメーション制作にも力を入れる。社是は「感動創造」。野々宮社長は「社会にヒトに感動を与えられる『感動クリエーター』を目指します」。(2021年12月11日朝日新聞地域面掲載)

豊栄産業

 創業は1953年で、本社と工場は大阪府枚方市春日西町2丁目。東京支社のほか、フィリピンのマニラにマルチメディアクリエーターがそろう子会社「HOWAY PHILIPPINES」がある。国内の従業員は約40人。