目次

  1. 佐藤恒治執行役員「新しいモビリティの形を提案していきたい」
  2. 佐藤恒治執行役員の経歴一覧
  3. 社長交代の理由は「変革を進めるため」
  4. 2023年4月1日付の役員人事
  5. 2023年4月7日の会見で「マルチパスウェイを軸に」と説明

 新社長となる佐藤恒治執行役員は、早稲田大学理工学部機械工学科を卒業後、1992年にトヨタ自動車に入社。エンジニアとしてカローラやプリウスの部品開発に携わり、2016年にはLexus International Co.のZLチーフエンジニアに就任しました。

 社長就任にあたり、YouTube上の会見で「豊田社長からは『自分らしくやりなさい』と声をかけてもらった。自分らしく役割を果たしたい」「私自身は車をつくることが大好き。だからこそ、車をつくり続ける社長でありたい」と抱負を述べました。

 加えてトヨタの今後については「トヨタのありかたを、車という形で示していきたい。車の本質的な価値を守り、新しいモビリティの形を提案していきたい。新チームでは、継承と進化をテーマに、創業の理念を大切にしながら、商品と地域を軸にした経営を実践し、モビリティカンパニーへのフルモデルチェンジに取り組む」と話しました。

 佐藤執行役員は、2月13日に発表された役員人事に合わせて、重点事業の3本柱を発表しました。

  1. 次世代BEVを起点とした事業改革…クルマの構造を合理化し、BEVファーストの発想で、モノづくりから販売・サービスまで、事業のあり方を大きく変えていく。変革をリードするのはレクサス
  2. ウーブンの取り組み強化…ヨタとウーブンが一体となって、Areneの開発を加速させるとともに、モビリティのテストコースの街であるウーブン・シティでの実証実験を強力に進める
  3. アジアのカーボンニュートラルの実現…タイ最大の民間企業CPグループとのパートナーシップを機軸に、産業や国を越えた連携を通じて、電動化やモビリティの実証を進める

 トヨタ自動車の資料(2021年1月作成)によると、佐藤執行役員の経歴の詳細は次の通りです。

  • 1992年4月トヨタ自動車株式会社入社
  • 2016年1月同社 Lexus International Co. ZLチーフエンジニア
  • 2017年4月同社 常務理事就任
  • 2017年4月同社 Lexus International Co. 統括
  • 2019年1月同社 Lexus International Co. Executive Vice President
  • 2020年1月同社 執行役員就任
  • 2020年1月同社 Lexus International Co. President(現在に至る)
  • 2020年9月同社 GAZOO Racing Company President(現在に至る)
  • 2021年1月同社 執行役員就任(現在に至る)
  • 2021年1月同社 Chief Branding Officer(現在に至る)

 豊田社長は2023年1月26日のYouTube上での会見で、このタイミングでの社長交代について「トリガーとなったのは内山田会長が退任すること」と説明。「トヨタの変革をさらに進めるためには、私が会長となり、新社長をサポートする形が一番よいと考え、今回の決断に至った」と述べました。

オンラインで会見した、次期社長の佐藤恒治執行役員、豊田章男社長、内山田竹志会長(左から)

 佐藤執行役員を選んだ理由については「トヨタの思想、技、所作を身につけようと、車作りの現場で必死に努力をしてきた人だからです。トヨタのトップにつく人は、その体現者であって欲しい。そしてもうひとつは、車が大好きだからです。自分の会社の商品を大好きだといえる。これは本当に大切なこと。佐藤新社長なら、商品を軸にした経営をさらに前に進めてくれると信じている」と語りました。

 加えて、53歳という「若さ」も理由と説明。「正解がわからない時代に変革を進めて行くには、トップ自らが現場に立ち続けることが必要になる。それには、体力と気力と情熱がかかせない。若いということはそれだけで大きな魅力」と話しました。

 佐藤新社長以外の役員人事は2023年2月13日に発表されました。

トヨタ自動車の新体制執行役員。(左から)新郷和晃氏、宮崎洋一氏、佐藤恒治氏、中嶋裕樹氏、Simon Humphries氏(トヨタ自動車の公式サイトから)

中嶋裕樹氏

副社長
Chief Technology Officer
Mid-size Vehicle Company(President)
CV Company(President)

宮崎洋一氏

副社長
Chief Financial Officer
Chief Competitive Officer
事業・販売(President)

小川哲男氏

北米本部(本部長)
トヨタ モーター ノース アメリカ(株)

上田達郎氏

中国本部(本部長)
トヨタ自動車(中国)投資(有)

長田准氏

Chief Communication Officer
渉外広報本部(本部長)

Simon Humphries氏

Chief Branding Officer
クルマ開発センターデザイン領域(統括部長)

新郷和晃氏

Chief Production Officer
Toyota Compact Car Company(President)

 3人の現副社長は、新体制が掲げる3つの重点事業テーマをスピーディーに実践するため、現場のリーダーとして陣頭指揮をとっていきます、と説明しています。

  • 近健太氏……ウーブン・バイ・トヨタ(2023年4月にウーブン・プラネット・ホールディングスが社名変更予定)専任のChief Financial Officerとして、Arene開発やWoven Cityなどの取り組みを加速
  • 前田昌彦氏……アジア本部長として、カーボンニュートラルやCASE技術の社会実装プロジェクトをリードし、新たなアジア地域戦略を推進
  • 桑田正規氏……Chief Project Leaderとして、レクサスの「2035年 BEV100%化」に向けた事業戦略をリード。トヨタ自動車九州の取締役副社長も務め、BEVを軸にした九州の生産体制再構築を推進

 佐藤恒治社長は2023年4月7日に会見を開き、新体制の方針について説明しました。

 車づくりについては「エネルギーの未来と、地域ごとの現実に寄り添って、マルチパスウェイを軸に、今後も、多様な選択肢を追求していきます」と発言。バッテリーEVに特化するのではなく、ハイブリッドや水素エンジンなど多様な選択肢を顧客に届ける「マルチパスウェイ」(全方位)の方針継続を改めて示しました。

 そのうえで中嶋裕樹副社長は、バッテリーEVについて、「足下のラインナップを拡充させ、2026年までに10のモデルを新たに投入し、販売台数も年間150万台に達します」との目標を発表しました。