目次

  1. 天然木の木工製品を住宅に
  2. 高付加価値の製品開発へ
  3. 社員全員で「宿題」に取り組む
  4. 新ブランド「KITOTE」の誕生
  5. 社員全員参加の展示会で得たもの
  6. ブランドのブラッシュアップを図る
  7. 下請け仕事の価格交渉力も高まる
  8. 経営者の熱い思いを失わずに
  9. 経営者の奮闘と思いがあればこそ

西澤明洋さん

エイトブランディングデザイン代表

1976年、滋賀県生まれ。大手電機メーカーのインハウスデザイナーから独立。「ブランディングデザインで日本を元気にする」というコンセプトのもと、企業のブランド、商品、店舗開発など幅広いデザインを手がけている。「フォーカスRPCD®」という独自手法でリサーチからプランニング、コンセプト開発まで一貫性のあるブランディングデザインを強みとする。主な仕事にクラフトビール「COEDO」、抹茶カフェ「nana’s green tea」、スキンケア「ユースキン」、ヤマサ醤油「まる生ぽん酢」、ブランド買取「なんぼや」、手織りじゅうたん「山形緞通」など。著書に「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル)などがあり、特集雑誌「デザインノート『西澤明洋の成功するブランディングデザイン』」(誠文堂新光社)も発刊した。

 中井産業は1935年に創業し、天然木を使用した障子をはじめ建具や木工製品を手がけています。尾﨑さんは2011年、血縁関係がなかった創業家の先代社長(現会長)から経営を引き継ぎました。「雇われ社長」として経営への危機感を常に持ち、それがブランディングに取り組む後押しにもなっています。

 尾﨑さんは中井産業に入る前、大手建材メーカーで働き、担当営業先の一つが、中井産業の兄弟会社・中井アルミセンターでした。尾﨑さんの熱心な営業で売り上げが伸び、中井産業の先代社長(現会長)から「後継者として来ないか」と声をかけられたそうです。「転職を考えて迷っている時期でした。人の役に立つ仕事をしたいと考えており、中井産業で働けば単なる転職では体験できないこともあるだろうと入社を決めました」

中井産業3代目社長の尾﨑義明さん

 2004年に入社した尾﨑さんは「職人の技術力の高さに驚いた」と言います。当時、建売住宅や新築マンションなどで使われていた建具の多くは、木目柄の塩化ビニールシートを貼ったベニヤ板で作ったものだったといいます。一方、中井産業が請け負っていたのは、天然木の無垢材を使用した障子。職人が減ることを予測して先代社長が高品質の製品を効率よく大量生産できるよう、早くから機械化と女性社員の活用を進めていました。

 採寸や施工は同業の建具店が担当し、中井産業は「下請け」として製造に専念するビジネスモデルです。尾﨑さんは得意先を一つでも増やすために「関西中の建具店を営業でまわった」と言います。「建具店の多くは家族経営です。繁忙期で納期が間に合わなくなった仕事を短納期で対応したり、高齢化で廃業する会社の仕事を引き継いだりすることもありました」

障子づくりの工程

 尾﨑さんは11年、中井産業の社長に就任。翌12年からエイトブランディングデザインとブランディングに取り組み始めました。製造に特化した下請けの仕事と並行し、新たなビジネスの柱となるオリジナルブランド開発へと動き出したのです。

 西澤さんは尾﨑さんの第一印象を次のように語ります。

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