目次

  1. 「事業承継したい」が53% 大同生命サーベイ調査
  2. 事業・業界の将来性への不安も
  3. 事業や業界の将来性への不安にどう対処すべきか

 大同生命が2023年6月1~28日、全国の企業経営者8871社の経営者に対し、直接訪問またはオンライン面談で経営者の労働実態についてアンケートを実施しました。アンケートは毎年、大同生命が無作為に抽出して調査を実施、継続回答は約2割ほどだといいます。

 アンケートの詳細は、大同生命サーベイのサイトで公表しています。

2019年から続けている事業承継の意向調査(2023年6月大同生命サーベイから引用)

 事業承継の意向について尋ねたところ、候補者の有無にかかわらず、また、M&Aや事業譲渡も含めて「事業承継したい」と回答した割合が53%にとどまりました。「事業譲渡したい」という回答割合は2019年の調査開始以来、年々減少傾向にあります。

 帝国データバンクが毎年実施している調査では、2022年の全国・全業種約27万社の後継者不在率は57.2%で、調査開始の2011年以来、初めて60%を下回りました。親族内承継の割合が低下する一方で、M&A・従業員承継が進みつつある傾向も見えてきました。

後継者不在率推移(全国・全業種)帝国データバンクのプレスリリースから

 その一方で、コロナ禍の影響か、前年まで後継者がいたにも関わらず、2022年になって「(事業承継の)計画中止・取りやめ」が約1600社(0.6%)と拡大している傾向も見えてきたといいます。

 大同生命サーベイで「事業承継したい」の回答割合が下がっているのはこうした事情も影響している可能性があります。

 大同生命サーベイで、事業承継の課題について尋ねると、「事業承継したい」と回答した企業経営者と比べて「廃業したい」「未検討(検討時期ではない・考えるべき時期だが未検討)」と回答した企業経営者は、「後継者の選定・確保」や「事業や業界の将来性」を挙げる割合が高くなっていました。

事業承継の課題についての回答割合(2023年6月大同生命サーベイから引用)

 調査のなかで回答した企業経営者から次のような声が寄せられました。

  • 「事業承継したいが、子どもが成長するまで事業を継続できるか不安」(建設業・北関東)
  • 「事業承継を考えていたが、コロナ禍により業界構造や経営環境が変化し、外注先の廃業も進んでいる。取引先が減少している状況なので今後が心配」(卸売業・南関東)
  • 後継者はいるが、コロナ禍の影響で事業の見通しが立たないため継ぐかどうかは本人の判断に任せたい(生活関連サービス業、娯楽業・中国)
  • 「自分の代で廃業するという選択肢もあるが、業界のことを考えるとM&Aなどで店舗を残した方がよいと考えている。ただし、M&Aに応じてくれる企業があるか不安」(小売業・九州沖縄)
  • 「事業を継がせるつもりで後継者として息子を入社させた。しかしながら、コロナ禍や物価高で事業が厳しくなり、今は将来の不安しかなく躊躇している」(卸売業・近畿)

 光熱費や原材料の高騰に加え、最低賃金の改定、時間外労働規制などの制度・法改正に対応しながら事業を継続できるのか、不安を抱く事業者は少なくありません。

 まずは、取引先とコスト高に見合う価格交渉に臨むことが必要です。中小企業庁は、下請中小企業の価格交渉・価格転嫁を後押しするため、全国のよろず支援拠点に相談窓口を設置しました。

 あわせて販路を拡大できないか新規取引先の開拓も欠かせません。展示会を活用するほか、既存商品でもパッケージやカテゴリーを変えることでこれまでとは別ジャンルでの販路を作れないか検討してみてください。

 さらに、法律や制度改正に対応するための支援制度などがないか、商工会議所などの相談窓口を活用するのもよいでしょう。