目次

  1. 観光産業の人材不足の背景
  2. 観光地・観光産業における人材不足対策とは
    1. 採用活動支援
    2. 機械化・DX推進のための設備投資支援
    3. 外国語人材の確保

 観光産業は、コロナ禍から回復しようとするなかで訪日外国人旅行者の増加や国内旅行の需要拡大のため、宿泊業を中心に、人手不足が顕著となっています。2023年の政府の観光白書は人手不足の原因としては、以下を挙げています。

  • 観光産業の賃金は2020年から減少傾向で全産業との差が拡大している
  • 全産業と比較して非正規雇用者の構成比が高く離職率が高い

 そのほか、休日が少なく、労働時間の長い労働環境の厳しいといった課題もあります。人手不足は、たとえば宿泊施設の現場では、観光サービスの質の低下を招き、新たな観光資源の開発するうえで課題となっています。

 政府が2023年に立てた「観光立国推進基本計画」では、観光産業の付加価値を示す2019年の観光GDPは、日本のGDPの約2%であり、今後さらに「稼げる」産業へと変革を進めていく必要があると指摘しています。

 そのためには、観光産業が収益力を高め、適正な対価を収受して収益を地域内で循環させ、従事者の待遇改善も図ることが、観光産業に人材を惹きつけ、観光地の持続可能な発展を実現するために必要であると提起しています。

 こうしたなか、観光庁は観光地・観光産業における人材不足対策3つを、2023年度補正予算案に盛り込みました。

  1. 採用活動支援
  2. 機械化・DX推進のための設備投資支援
  3. 外国語人材の確保

 それぞれについて補足します。

 採用活動支援については、大型の合同企業説明会などによる宿泊業の魅力発信イベントの実施を想定しています。観光庁の直轄事業として民間事業者が請け負うことになります。

 人手をかけるべき業務に人材を集中投下し、サービス水準向上・賃上げを実現するため、スマートチェックイン・アウト、配膳・清掃等ロボット、チャットボット、予約等管理システム(PMS)などの設備投資を補助する想定です。補助上限500万円は、補助率は1/2となる見込みです。

 特定技能試験の受験者を増やすためのジョブフェア等のPR活動、試験合格者の雇用のためのマッチングイベントの実施、観光地における外国語対応人材の確保を想定しています。