目次

  1. イノベーション部門グランプリは耐震塗料のAster
  2. ロングターミズム部門グランプリは田島山業
  3. 落合教授「長期のリスクをとれるのも後継ぎならでは」

 既存の経営資源を活用したイノベーションを起こし社会に新たな価値を創出している企業を表彰するのが、イノベーション部門です。

Aster(東京都中央区)CEOの鈴木正臣さん(写真中央)と、審査員の生方製作所社長の生方眞之介さん(左端)

 このイノベーション部門のグランプリに選ばれたのが、耐震塗料の開発に取り組むAster(東京都中央区)CEO鈴木正臣さんです。

 Asterなどによると、レンガやコンクリートブロックなどを積み上げた組積造は地震の揺れに弱く、過去100年の地震死者のうち、組構造の建物の倒壊による死者が多くを占めています。

 こうした状況に、地震犠牲者ゼロを社会的使命に掲げ、家業の「エスジー」の技術を掛け合わせて開発したのが、柔らかいのに高強度な耐震塗料です。

 JICAの協力を得ながら、フィリピンでの普及に向けて事業を進めています。

 このほか、イノベーション部門の受賞者は次の2人です。

  • 現場の漁師に寄り添い、AIで業務を革新。水産業の未来を護り続ける「オーシャンソリューションテクノロジー」(長崎県佐世保市)代表取締役 水上陽介さん
  • ユーザー目線でコア技術を活かしたサブカル塗料を開発した「斎藤塗料」(大阪府大阪市)取締役 営業部長 菅彰浩さん

 長期的な視点に立ち世代を超えて関係者の幸せと業績の両立を実現している企業を表彰するのが、ロングターミズム部門です。

「田島山業」(大分県)の田島大輔統括本部長(中央)と審査員の静岡県立大学経営情報学部の落合康裕教授

 グランプリに選ばれたのは、「田島山業」(大分県日田市)統括本部長の田島大輔さんです。

 田島さんは、赤字経営となりがちで伐採後の植林にまで手が回りづらくなっている林業を変えつつ、地球規模の課題となっている脱炭素にも役立てようと、2024年にカーボンクレジットの販売に向けて大企業と話し合いを続けています。

 また、環境省「自然共生サイト」に田島山業の森が認定されたことを生かして、生態系の保護に取り組む企業とのマッチングにも取り組もうとしています。

 アトツギアワードのグランプリ受賞について「後継ぎのみなさんと一緒に、誰よりも結果を出して社会に貢献したい」と抱負を語りました。

 このほか、ロングターミズム部門の受賞者は次の2人です。

  • ぬくもりある会社を作りましょうを経営理念に地域社会への貢献を続ける「長坂養蜂場」(静岡県浜松市)代表取締役社長 長坂善人氏
  • 1本1万円の栗蒸し羊羹で地元農家の収入を確保し海外展開を図る「常陸風月堂」(茨城県日立市)代表取締役社長 藤田浩一氏

 審査員を務めた落合康裕・静岡県立大学教授は次のようにコメントしました。

 「日本の長寿企業2万~3万社ありますが、そのほとんどはファミリービジネスです。同じことをやるだけでは、長寿企業は続きません。むしろ、エッジの効いたイノベーションを生んでいるという特徴があります。
 なぜ変えられるのか。
 そこには、パラドクスがあるのではないでしょうか。後継ぎたちは、先代たちに新しい挑戦に反対され、突き放されつつも『なにくそ』と奮闘し、結果を出そうとします。その姿に先代も後継ぎの評価を変えていくのです。
 また、自分の世代では回収できないかもしれない長期のリスクを負えるのもファミリービジネスの特徴です。次の世代で回収できるのであれば、目の前がマイナスであっても正当化されるのではないでしょうか。このアワードはそんな事業を評価しています。この視点は、今後の地方創生でも、大きなキーワードになるのではないでしょうか」

アトツギアワードの集合時間