目次

  1. 属人化が奪う成長機会
  2. ルール整備と仕事の明文化を
  3. 管理職にマニュアルを作らせない
  4. 脱属人化で売り上げが伸びた小売業
  5. DX推進の注意点とは
  6. クリニックがDXに成功した理由

 属人化とは、社内で特定の社員にしかできない仕事がある状態を指します。社員一人ひとりの役割が明文化されず、仕事が個人にひも付いているせいで優秀な人に仕事が集まってしまうのです。これが属人化の原因です。製造業の会社で属人化が起きやすい印象があるでしょうが、人的資本に限りがある中小企業は、業界を問わず属人化しやすいと言えます。

 では、属人化の何が問題でしょうか。「その社員が辞めたら仕事が成り立たない」、「社内にノウハウがたまらず、再現性がなくなる」などと言われますが、これらは問題の本質ではありません。確かに、特定の業務を担当していた社員が離職してしまうと短期的には困るでしょう。しかし、それはあくまで短期的に見れば、です。一度に大量の社員が辞めでもしなければ、いずれその穴は誰かが埋めます。

 属人化の最大の問題は、優秀な社員に仕事が集中し、誰でもできる業務にも時間を取られて、会社全体の生産性が落ちてしまうことです。時給5千円の人に本棚の整理をさせるようなもの、と言えば分かりやすいでしょうか。厄介なことに、属人化は放っておくとどんどん進行してしまいます。社長は社長にしか、部長は部長にしかできない仕事をして、会社全体のパフォーマンスを最大化するべきです。

 もう一つ、属人化には社員の成長機会を奪うという問題もあります。成長とはできなかったことができるようになること。責任を与えられ、ストレスと向き合って努力した社員だけが成長できますが、部下にさせるべき仕事を上司が肩代わりしている属人化した組織ではそれもかないません。

 冒頭、経営者が毎日忙しく働いている会社では属人化が起きている可能性があると述べました。経営者は社内で唯一、自分の仕事量を調節できる立場にいます。上司がいないので、突然仕事が増える心配はありません。極端な話、経営に関する全ての決断を部下にさせることもできます。それなのに忙しいということは、部下に仕事を任せられないだけではないでしょうか。経営者のその姿勢こそが属人化を助長しています。

 能力の高い経営者が忙しい毎日から抜け出し、自分にしかできない仕事に集中できれば、大きく会社が発展すると思いませんか。次章からは、属人的な組織を脱却するための方法を、具体的に解説していきます。

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