目次

  1. 高校生がアルバイトとして働ける時間と環境
    1. 【時間】18歳未満は22時まで、18歳以上は22時以降も可
    2. 【シフト】1日8時間以内、週40時間以内まで
    3. 【休日】毎週1日以上、または4週で4日以上
    4. 【業務内容】危険または有害性の高い業務の禁止
  2. 高校生をアルバイトとして雇用するときの注意点
    1. 雇用契約の締結主体・給与の支払先は本人
    2. 18歳未満の高校生雇用には親の同意と年齢確認証明書の取得が必要
    3. シフトの決定にあたっては学業との両立・校則に留意
    4. 高校生であっても労働基準法の遵守が重要
  3. 労働基準法関連に違反した際にかかる罰則と影響
    1. 社会的信用力の低下
    2. 人材確保の困難と離職率の増加
  4. 高校生のアルバイトに関するよくある質問
    1. インターンシップもアルバイトと同じ制約がある?
    2. 高校生の時給も最低賃金を下回ってはだめ?
    3. 高校生でも社会保険の加入義務は発生する?
    4. 高校生のアルバイトを会社都合で解雇にすることはできる?
  5. 高校生をアルバイトとして雇うメリット
    1. 職場の活気を引き立てる存在となり得る
    2. 自社のコアなファンになってもらえる可能性がある
    3. 企業のブランドイメージ維持・向上が期待できる
  6. ルールを守った高校生のアルバイトで新たな視点を

 日本の労働基準法では、未成年者の労働に関して特別な規定が設けられています。これらの規定は、身体的にも精神的にも成長過程にある若者を保護し、健康や安全を確保するためのものです。

 なお、未成年がアルバイトをすることが可能になるのは、原則として15歳に達した最初の3月31日を迎えた後からです。そのため、中学生はアルバイトをすることができません。

 18歳未満の高校生は、22時から翌朝5時までの深夜労働が禁止されています。これは、夜間の労働が高校生の健康や学業に悪影響を与える可能性が高いためです(交代制の勤務の場合に一定の例外あり)。

 高校生であっても、18歳以上であれば22時以降の深夜労働が可能です。その場合、深夜割増手当として25%の深夜割増手当が発生します。

 労働基準法で定められている労働時間(法定労働時間)は、1日8時間、週40時間です。事前に、使用者と労働者代表との間で36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることで、法定労働時間を超えて労働者を働かせる(いわゆる「残業をさせる」)ことができます。

 ただし、18歳未満の高校生は、36協定を締結していたとしても、1日8時間、週40時間を超えて働かせることはできません。また、掛け持ちバイトをしている場合、掛け持ち先も含めた合計の労働時間が法定労働時間の範囲内になるよう調整が必要です。なお、労働時間は休憩時間を除いた実働時間で計算されます。

 労働基準法上、毎週1日の休日、ないしは4週間の間に4日以上の休日を確保することが定められています。休日労働についても、時間外労働と同様に、事前の36協定締結により命じることができますが、18歳未満の高校生に対しては、36協定を締結していたとしても、休日労働をさせることはできません。

 18歳未満の高校生が従事できる業務には、安全衛生上、福祉上の配慮から制限が設けられており、危険性が高い業務や健康に有害な業務は禁じられています。

 例えば、次のような業務です(労働基準法第62条、第63条、年少者労働基準規則)。

18歳未満の高校生がやってはいけない業務
・運転中の機械・動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査、修繕
・運転中の機械・動力伝導装置のベルトやロープの取り付け・取り外し
・動力によるクレーンの運転
・毒劇薬・毒劇物等の有害な原料・材料、爆発性・発火性・引火性の原料・材料を取り扱う業務
・著しくじんあい・粉末を飛散し、または有害ガス・有害放射線を発散する場所、高温・高圧の場所における業務
・酒席に侍する業務(キャバレーなどでの接客など)
・坑内労働

 高校生のアルバイトを雇用するときの注意点をご紹介します。

高校生をアルバイトとして雇うときの注意点
・雇用契約の締結主体・給与の支払先は本人
・18歳未満の高校生雇用には親の同意と年齢確認証明書の取得が必要
・シフトの決定にあたっては学業との両立・校則に留意
・高校生であっても労働基準法の遵守が重要

 雇用契約は、必ず本人との間で締結する必要があります。親権者が本人に代わって雇用契約を締結することはできません。また、給与の支払先も本人名義の銀行口座を使用して、本人に直接支払うのが原則です。したがって、親権者が代わりに報酬を受け取ることはできません。

 前者の規定は、親権者から未成年者を保護する目的で設けられたものであり、後者の規定は、賃金の直接払いの原則によるものです。

 18歳未満の高校生を雇用する場合には、親権者の同意を得る必要があります。この同意書は、親がその雇用条件に同意していることを証明するものであり、未成年者の権利を保護するために重要です。

 また、年齢確認のために、学生証や住民票などの年齢を証明できる書類の取得が求められます。

 高校生は学業が最優先であるため、アルバイトが学業に支障をきたさないようにする配慮が必要です。また、学校の校則には、アルバイトの禁止や制限がある場合があります。これを遵守しないと、学校での処分の対象となる可能性があるため、事前に確認することが重要です。

 アルバイトのシフトはそもそも本人の意思に沿って決定が行われるものですが、高校生を雇うときは企業側も学業とアルバイトの両立を支援するために、柔軟なシフトを提供する姿勢が求められます。

 厚生労働省が公表している「高校生等のアルバイトの労働条件に関する自主点検表」も参考になります。24項目の自主点検を実施してみてください。

高校生等のアルバイトの労働条件に関する自主点検表
高校生等のアルバイトの労働条件に関する自主点検表(厚労省の公式サイトから https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/0000130163.pdf)

 高校生であってもアルバイトとして雇うのであれば、労働基準法を遵守することが大前提です。例えば、アルバイトも以下の要件を満たせば年次有給休暇の付与の対象となります。

年次有給休暇が付与される条件
(1)雇い入れの日から6カ月経過していること
(2)その期間の全労働日の8割以上出勤したこと

 高校生であるか否かに関わらず、アルバイトの年次有給休暇付与を漏らしており、労働基準法違反になっている会社も多く見られます。いま一度、自社の労働条件が労働基準法に適合しているかどうか、確認してみてください。

 例えば、全国社会保険労務士連合会が提供する「職場環境改善宣言のセルフチェック登録」では、職場環境改善宣言という形でセルフチェックができます。無料で使用できますので試してみてください。

 労働基準法に違反すると、企業やその代表者に対して厳しい法的制裁が科されることがあります。具体的な罰則は、懲役または罰金です。これらは、違反の内容に応じて罰則の重さが決まります。また、法令違反の手前で、労働基準監督署による是正勧告や是正指導が行われることもあります。

 他方、労働基準法違反による影響は、目に見えるものだけではありません。上記のような法的制裁に加えて、労働基準法に違反した企業には深刻な社会的デメリットが生じます。

 まず、社会的信用力の低下が避けられません。労働環境に問題があると公表された場合、消費者や取引先からの信頼を失う可能性が高まります。

 特に、未成年者の雇用に関する法令違反は、人権侵害と見なされることがあり、社会的影響は非常に大きいものです。SNSを通じた情報拡散によって、企業の評判が瞬時に広まり、ネガティブなイメージが強く植え付けられる可能性が高いでしょう。

 こうした問題が報じられることは、採用活動にも悪影響を及ぼします。求職者は企業の評判を重視するため、労働基準法違反のある企業を避ける傾向があります。

 優秀な人材の確保が難しくなるだけでなく、従業員の士気にも悪影響を及ぼしかねません。労働環境の改善がなされない限り、離職率の増加や企業内のモチベーションの低下が進むリスクが存在します。

 高校生のアルバイトに関しては、保護者や企業から多くの質問が寄せられます。以下では、特に多く寄せられる質問について回答します。

 インターンシップという呼称が使われていても、実際に高校生が使用者の指揮命令下で業務に従事している場合、そのインターンシップは労働基準法の適用を受けます。これは、業務の指示を受けて働くことで、その活動が「労働」として認識されるためです。

 したがって、賃金の支払いが必要となり、最低賃金法も適用されます。もちろん、アルバイトと同様に時間外労働の上限や割増賃金の対象ともなります。

 「教育目的のインターンシップであれば無報酬でも良い」という誤解が存在しますが、これは大きなリスクを伴います。労働基準法は労働者の権利を守るために設けられたものであり、インターンシップであっても労働に該当する活動に対しては法的な保護が適用されます。

 そのため、インターンシップと称して実際に業務に従事させる場合は、アルバイトと同様に労働基準法の制約を受けるものとして整理しておくことが重要です。

 高校生のアルバイトにも、最低賃金法の適用があります。高校生の時給も最低賃金を下回ってはいけません。都道府県別に定められた地域別最低賃金を確認しましょう。なお、最低賃金は毎年10月に見直しがなされるため、常に最新の情報を確認することが必要です。

 特に近年は、賃上げの要請から最低賃金の改定幅が大きいため、気づけば最低賃金を下回っていた…ということのないよう十分注意してください。

 高校生であっても、社会保険の適用条件を満たす場合には社会保険の加入義務があります。

社会保険の適用条件(高校生)
所定労働時間(雇用契約上の労働時間)が週30時間以上であること(より正確には、同事業所で働くフルタイム社員の3/4以上であること)

 日中授業を受けている高校生であれば、社会保険の適用対象となるほどシフトに入るケースは少ないかもしれませんが、社会保険の適用範囲は年々拡大傾向にあり、今後の動向に注意が必要です。

 その他、年末調整などについても、当てはまる場合には対応が必要です。雇用保険については、高校生は対象外であり、加入義務を考慮する必要はありません。

 なお、アルバイト・パートの社会保険適用範囲は2024年10月に拡大されますが、学生アルバイトは対象外です。

 解雇規制についても、高校生とそれ以外とで差分はありません。解雇には客観的で合理的な理由と、適切な手続きが求められます。解雇を行う場合には、30日間の予告期間を設けて通知する必要があります。

 高校生をアルバイトとして起用するメリットは、繁忙時間帯に効率的に人手を補充できる、ということだけではありません。ここでは、高校生をアルバイトとして雇うことで得られる企業にとってのメリットを紹介します。

 高校生はフレッシュな視点や新しいアイデアを提供し、職場の活気を引き立てる存在となることがあります。

 特に、デジタルネイティブである彼らは、SNSやオンラインマーケティングの分野で企業に新しい発想をもたらす可能性があります。

 地元の高校生を雇用することは、地域社会とのつながりを深め、自社のコアなファンになってもらえる可能性もあります。例えば、店舗やサービスの利用促進につながることもあり、結果的に地元コミュニティへの貢献度が増すでしょう。

 将来的には、アルバイト経験を通じて企業に対する理解が深まり、就職を希望する学生が増えることも期待できます。これは、企業にとって長期的な人材確保の戦略にもなり得ます。

 高校生をアルバイトとして雇用する際には、特有の法的制約が存在します。労働基準法などの法律は未成年者を保護するための規定を設けており、企業にはこれを遵守する責任があります。

 高校生であるか否かにかかわらず、適切な労働環境を提供し、法律を守ることは企業の信頼性を高めるうえで重要です。これにより、労働トラブルを未然に防ぐとともに、企業のブランドイメージを維持・向上させることができます。

 多くの企業が人手不足に悩んでいます。そのような状況下で、高校生のアルバイトは新鮮な風をもたらし、職場に活気を与える貴重な労働力となり得ます。若いエネルギーと新しい視点を取り入れることで、企業も新たな成長の機会を得られる可能性があるでしょう。

 一方で、成長途中にある高校生にとって、健康と安全が最優先です。労働時間や深夜労働に関する規定、適切な労働契約の締結、学業との両立支援など、守るべきルールが定められています。企業はこれらのルールを守り、彼らが安心して働ける環境を提供することが大切です。

 高校生のアルバイトは、彼らの成長を支援し、将来の可能性を広げる素晴らしい経験です。彼らが安心して働けるように、企業側も適切なサポートを提供していくことで、企業も社会も一緒に成長できるはずです。