無償の金型保管は下請法違反 公取委、住友重機械ハイマテックスに勧告
次回以降の発注を見通せないのに下請事業者に金型を無償保管させていたことは下請法違反にあたるとして、公正取引委員会は2024年11月21日、住友重機械工業の子会社「住友重機械ハイマテックス」(愛媛県新居浜市)に対し、再発防止などを求める勧告を出しました。住友重機械ハイマテックスは7月24日までに、無償で金型等を保管させていたことによる費用に相当する額として総額319万6723円を支払っています。
次回以降の発注を見通せないのに下請事業者に金型を無償保管させていたことは下請法違反にあたるとして、公正取引委員会は2024年11月21日、住友重機械工業の子会社「住友重機械ハイマテックス」(愛媛県新居浜市)に対し、再発防止などを求める勧告を出しました。住友重機械ハイマテックスは7月24日までに、無償で金型等を保管させていたことによる費用に相当する額として総額319万6723円を支払っています。
公取委によると、住友重機械ハイマテックスは、下請事業者5社に対し、自社が所有する金型、木型、治工具を貸与しており、遅くとも2023年4月1日~2024年7月末に、次回以降の発注の有無または次回以降の具体的な発注時期の見通しを示すことができないにもかかわらず、引き続き、合計178個の金型などを無償で保管させていました。
公取委は、この行為が下請法の禁止する「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」にあたると判断し、勧告を出しました。型の保管は費用がかかるため、生産活動に使わない型を長期間保管することや実態に合わない保管料を設定することは、受注側事業者にとって、不利益となるためです。
ただし、下請事業者が、「経済上の利益」を提供することが製造委託等を受けた物品等の販売促進につながるなど、直接の利益になるものとして、自由な意思により提供する場合には「下請事業者の利益を不当に害する」ものであるとはいえないとしています。
住友重機械ハイマテックスは公式サイトでコメントを発表しました。すべての対象事業者と補償のための協議は実施済みであり、金型等の保管等にかかる費用に相当する額として、総額319万6723円を支払い済みだと公表。
そのうえで「勧告を厳粛に受け止め、今後の取引において下請法に抵触する行為が発生することのないよう、金型等の適切な管理に留意した下請法の教育を行うなど、社内体制の整備のために必要な措置を講じ、コンプライアンスの一層の強化と再発防止に努めてまいります」とコメントしています。
無償での金型保管が下請法違反と認定された事例はほかにもあります。下請け事業者16社に対し、長期間部品の発注をしていないのに金型を無償で保管させ、さらに金型の棚卸し作業を行わせた行為が下請法違反にあたるとして、公正取引委員会は2023年11月、サンケン電気(埼玉県新座市)に対し、勧告しました。
サンデン(群馬県伊勢崎市)についても、下請け事業者61社に対し、長期間部品の発注をしていないのに金型4220型を無償で保管させた行為が下請法違反にあたるとして、公正取引委員会は2024年2月に勧告しています。
トヨタ自動車の子会社「トヨタカスタマイジング&ディベロップメント」に対しても、金型保管費用の未払いや不当な返品が下請法違反にあたるとして、公正取引委員会は2024年7月に勧告を出しました。
金型保管については、慣例として問題となっていたため、政府は2019年12月、産官学が参画する「型取引の適正化推進協議会」の報告書をとりまとめ、新しい型取引のルール(PDF)を作りました。さらに2020年1月には、下請中小企業振興法「振興基準」を改正し、報告書で取りまとめた型取引のルールを正式に法令にも位置付けています。
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