目次

  1. 2024年度の補正予算案、3つの柱で構成
  2. 日本経済・地方経済の成長(5兆5705億円)
    1. 賃上げ環境の整備~足元の賃上げに向けて~(9127億円)
    2. 新たな地方創生施策(地方創生2.0)の展開(1兆8406億円)
    3. 「投資立国」及び「資産運用立国」の実現(2兆9971億円)
  3. 物価高の克服(3兆3897億円)
    1. 足元の物価高に対するきめ細かい対応(3兆1427億円)
    2. エネルギーコスト上昇に強い経済社会の実現(2469億円)
  4. 国民の安心・安全の確保(4兆7909億円)
    1. 自然災害からの復旧・復興(6677億円)
    2. 防災·減災及び国土強化の推進(1兆9584億円)
    3. 外交·安全保障環境の変化への対応(1兆4090億円)
    4. 「誰一人取り残されない社会」の実現(7558億円)
  5. 補正予算の審議いつから?

 2024年度の補正予算案は、11月22日に閣議決定した「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」に沿って3つの柱で構成されています。

  1. 日本経済・地方経済の成長~全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす~
  2. 物価高の克服~誰一人取り残されない成長型経済への移行に道筋をつける~
  3. 国民の安心・安全の確保~成長型経済への移行の礎を築く~

 3つの柱の主要政策を紹介します。

  • 最低賃金引上げに対応する生産性向上支援(297億円)
  • 中小企業の大規模設備投資、高付加価値化のための設備投資、IT導入等の支援(3400億円)
  • 中堅·中小企業の省力化に向けた工場等の拠点新設や大規模な設備投資の支援(1400億円)
  • 医療·介護·障害福祉現場の生産性向上·職場環境改善等の支援(2304億円)
  • 足元の経営状況の急変に直面する医療機関への支援(483億円)

 中小企業関連でいうと、中小企業・小規模事業者の生産性向上を実現する政策として、ものづくり補助金、IT 導入補助金、小規模事業者持続化補助金、事業承継・M&A補助金が盛り込まれました。

 さらに、中小企業基盤整備機構が出資するファンドを通じて、売上高100億円を目指す成長志向の中小企業等に対するメザニンファイナンス(これまで金融機関が取り組んできたシニアローンと、普通株式によるエクイティファイナンスの中間的な金融手法)により、財務基盤の強化を図り、M&Aや新事業展開等を後押しする方針です。

  • 新しい地方経済·生活環境創生交付金(1000億円)
  • 農林水産業の持続可能な成長及び食料安全保障の強化(3037億円)
  • 地域における少子化対策の取組への支援(95億円)
  • 地方誘客促進によるインバウンド拡大、観光地·観光産業の再生·高付加価値化(538億円)
  • 文化·芸術分野のクリエイター支援(190億円)
  • 国立劇場の再整備(200億円)
  • 地方交付税交付金(債務償還分を除く出口ベース)の増額(7926億円)
  • 量子コンピュータ·量子暗号技術等(543億円)
  • 後発医薬品安定供給支援(90億円)
  • 創薬支援(462億円)
  • 宇宙戦略基金(3000億円)
  • Beyond 5G研究開発(357億円)
  • 大型研究施設の開発·高度化(ポスト富岳、SPring-8-Ⅱ等) (248億円)
  • 地域脱炭素推進交付金(365億円)
  • レアメタルや銅の供給源の多角化支援(922億円)
  • 「AI・半導体産業基盤強化フレーム」に基づく支援(1兆3054億円)※特別会計分及び既存基金の活用とあわせ1.6兆円規模

 企業年金について、事業主が加入者のために必要な見直しが行えるよう、企業年金の運用等の情報を集約し他社と比較できる形で情報開示を行うため、次期年金制度改正に向けて必要な調整を行うこととし、2025年度からシステム開発等を行うことも盛り込まれています。

  • 重点支援地方交付金(低所得世帯向け給付金:4908億円、推奨事業メニュー分:6000億円)
  • 冬期の電気·ガス料金負担軽減(3194億円)
  • 燃料油価格激変緩和措置(1兆324億円)
  • 「給付金·定額減税一体措置(2023年度経済対策)」に基づく給付金(6443億円)

 電気・ガス料金について、政府は1~3月分の補助を検討しています。とくに、電力消費量がピークの1、2月使用分の負担軽減を重点化し、電気は使用量に対して低圧2.5円/kWh、高圧1.3円/kWh、ガスは使用量に対して10円/㎥を乗じた額を助成する方針です。

 3月使用分について、電気は使用量に対して低圧1.3円/kWh、高圧0.7円/kWhを乗じた額、ガスは使用量に対して5円/㎥を助成する予定です。

 このほか、企業分野については、工場・事業所における省エネ設備の導入を複数年度にわたり支援するほか、中小企業向けの省エネ診断を充実させることも盛り込まれています。

  • 能登地域の復旧·復興(なりわい支援、災害廃棄物処理の加速化等)(2684億円)
  • 公共土木施設等の復旧等(4628億円)(能登地域の復旧·復興分を含む)
  • 防災体制の抜本強化(新しい地方経済·生活環境創生交付金を活用)
  • 線状降水帯·台風の予測精度の向上(気象庁の機能強化)(451億円)
  • 公立学校施設の整備(体育館の空調整備779億円を含む)(2076億円)
  • 防災·減災、国土強化対策(公共事業関係費) (1兆4063億円)(公共事業全体で2.4兆円)

 具体的には、避難所で快適なトイレ、プライバシーを守るパーティション、簡易ベッド、温かい食事を速やかに提供できるよう進め、キッチンカー、トレーラーハウス、トイレカー等の登録制度を創設するなど避難所の環境改善や、女性の視点を生かした避難所運営にも取りむ予定です。避難所となる全国の学校体育館への空調整備についても、ペースの倍増を目指す方針です。

  • グローバルサウスとの連携強化(2,650億円)
  • ウクライナ·周辺国の支援ニーズへの対応(269億円)
  • 官民のサイバーセキュリティ対策の強化(395億円)
  • 海上保安能力の強化(912億円)
  • 自衛隊等の安全保障環境の変化への的確な対応等(8268億円)
  • 防犯体制の強化(19億円)(あわせて、新しい地方経済·生活環境創生交付金を活用)
  • こども・子育て支援(保育士等の処遇改善、こどもの貧困対策等:2206億円。特別会計分とあわせ3185億円)
  • 旧優生保護法関係の補償金等の支給(878億円)

 防犯体制の強化のなかには、「闇バイト」による強盗・詐欺への対策として、犯罪実行者募集に関するサイバーパトロールや求人メディア事業者・SNS事業者に対する犯罪実行者募集情報の掲載防止及び削除の依頼等の取組を推進することも盛り込まれています。

 第216回臨時国会が11月28日に召集されました。衆議院の公式サイトなどによると、会期は12月21日までの24日間で、11月29日に石破茂首相が所信表明演説を行い、12月2~4日には各党の代表質問があります。補正予算案の審議は12月9日からの予定です。